りんご台風

りんご台風（リンゴ台風）とは、1991年9月に日本列島を襲った台風19号の俗称である。

概要

この台風は、1991年9月27日16時過ぎに、非常に強い勢力で長崎県佐世保市の南に上陸した。上陸時の中心気圧は940hPaで、過去の日本上陸台風の中では5番目の低さである。長崎県に上陸した台風はその後、勢力を維持したまま猛スピードで日本海を北東に進み（韋駄天台風）、北海道渡島半島に再上陸した後、9月28日に千島近海で温帯低気圧に変わった。

この台風は、勢力が強く暴風域も極めて広い「巨大台風」であったため、沖縄から北海道にかけてほぼ全国に記録的な暴風をもたらした。瀬戸内海などでは高潮が発生したほか、青森県では収穫前のリンゴの落果などが発生した（「りんご台風」の名はこれに由来する）。全国で死者・行方不明者62人、負傷者1,499人、家屋損壊170,447棟の甚大な被害が発生した。

【気象庁ホームページにおける解説】

台風第19号は、9月16日にマーシャル諸島の西海上で発生して発達しながら北上し、26日に宮古島の東海上で北東に向きを変え、27日16時過ぎ非常に強い勢力で長崎県佐世保市の南に上陸した。 その後、加速しながら日本海を北東に進み、強い勢力で北海道渡島半島に再上陸し、28日千島近海で温帯低気圧に変わった。
台風が非常に強い勢力で上陸し、勢力をほぼ維持したまま速い速度で北上したため、沖縄から北海道まで全国で猛烈な風となった。 最大風速は、那覇で29.1m/s（最大瞬間風速50.1m/s）、野母崎(長崎県野母崎町)で45m/s、長崎で25.6m/s（同54.3m/s）、広島で36.0m/s（同58.9m/s）、輪島（石川県輪島市）で31.3m/s（同57.3m/s）、青森で29.0m/s（同53.9m/s）などを観測した。 26日には、沖縄県喜屋武岬で9.54ｍの有義波高を観測した。
このため全国で、暴風により多数の死者、家屋の倒壊等があった。また青森県などで収穫前のリンゴの落果、西日本を中心に塩風による果樹等の枯死、全国で森林の倒木被害など農林水産業に甚大な被害があった。 瀬戸内海などで顕著な高潮が発生し、高波とあいまって浸水や護岸の決壊などの被害があった。また、暴風により送電施設に被害が発生し広範囲にわたり停電があったほか、塩風害により長期にわたる停電被害もあった。 九州地方、中国地方、四国地方、近畿地方では、最大潮位偏差が100cm以上、最高潮位がTP上200cm以上に達し、瀬戸内海などで顕著な高潮が発生し、高波とあいまって浸水や護岸の決壊などの被害があった。

洞爺丸台風との類似性

1991年の台風19号は、1954年の「洞爺丸台風」によく似ていたといわれている。両者の主な共通点は以下の通りである。

• 典型的な「風台風」であり、風害ばかりで雨による被害は比較的小さかったこと。
• 進路がよく似ていたこと。どちらも九州に一旦上陸した後、日本海に抜けて「韋駄天台風」となって猛スピードで北東進し、勢力を維持したまま北日本（北海道や東北）を襲った。普通、台風は上陸して陸上を進めば勢力が衰えるが、りんご台風や洞爺丸台風は日本海を通過したため、勢力を維持したまま北上した。

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