クメール文字

クメール文字とは、カンボジアの公用語であるクメール語を記述するための表音文字。カンボジア文字とも言う。

概要

ブラーフミー系文字に属する。子音の種類に応じて母音の発音が変化するという特徴を持っている。算用数字はタイ文字と同様の物を使用するが、声調符号は使用しない。

書体の種類としては、主に通常の文章で使用される「チュリエン体」の他に、丸みを帯びた形で見出しや看板等で使用される「ムール体」も存在する。

文字の一覧

音価の表記はWikipediaに基づいている。

基本文字

母音文字
	/ʔɑ/		/ʔe/		/ʔo/		/ʔrɨ/		/ʔlɨ/
	/ʔaː/		/ʔəj/		/ʔu/		/ʔrɨː/		/ʔlɨː/
	/ʔeː/		/ʔaːo/
	/ʔaj/		/ʔaw/

子音文字は第1群 (母音 ɑ を伴って読む物) と第2群 (母音 ɔ を伴って読む物) の2種類に分かれ、これは母音記号を伴った時の母音の発音に影響する (後述)。

子音文字
	/kɑ/		/kʰɑ/		/kɔ/		/kʰɔ/		/ŋɔ/
	/cɑ/		/cʰɑ/		/cɔ/		/cʰɔ/		/ɲɔ/
	/ɗɑ/		/tʰɑ/		/ɗɔ/		/tʰɔ/		/nɑ/
	/tɑ/		/tʰɑ/		/tɔ/		/tʰɔ/		/nɔ/
	/ɓɑ/		/pʰɑ/		/pɔ/		/pʰɔ/		/mɔ/
	/jɔ/		/rɔ/		/lɔ/		/vɔ/
	/sɑ/		/hɑ/		/lɑ/		/ʔɑ/

子音脚文字と母音半体記号

複数の子音が連続する場合、後続子音は「脚文字」として、先行する子音文字の下に付けて表される。中には元の子音文字と全く形が変化する脚文字も存在する。なお に対応する脚文字は存在しない。

子音脚文字
	/k/		/kʰ/		/k/		/kʰ/		/ŋ/
	/c/		/cʰ/		/c/		/cʰ/		/ɲ/
	/ɗ/		/tʰ/		/ɗ/		/tʰ/		/n/
	/t/		/tʰ/		/t/		/tʰ/		/n/
	/ɓ/		/pʰ/		/p/		/pʰ/		/m/
	/j/		/r/		/l/		/v/
	/s/		/h/				/ʔ/

以下は母音半体記号、および第1群・第2群の子音それぞれと結合した時の母音の発音である。

子音文字+母音半体記号 (第1群: kɑと結合した例)
	/kɑ/		/kaː/		/ke/		/kəj/		/kə/		/kəːɨ/		/ko/
	/koːu/		/kuːə/		/kaːə/		/kɨːə/		/kiːə/		/keːi/		/kaːe/
	/kaj/		/kaːo/		/kaw/		/kom/		/kɑm/		/kam/		/kaʰ/

子音文字+母音半体記号 (第2群: kɔと結合した例)
	/kɔ/		/kiːə/		/ki/		/kiː/		/kɨ/		/kɨː/		/ku/
	/kuː/		/kuːə/		/kəː/		/kɨːə/		/kiːə/		/keː/		/kɛː/
	/kɨj/		/koː/		/kɨw/		/kum/		/kum/		/koəm/		/keəʰ/

子音文字について、第1群を第2群に切り替えるには 、第2群を第1群に切り替えるには を付ける ( /ɓɑ/ → /ɓɔ/、 /mɛː/ → /maːe/)。

数字

1

2

3

4

5

6

7

8

9

0

参考文献

• 「世界の文字」(中西亮著、松香堂、1975)

関連動画

関連項目

• ブラーフミー系文字
• タイ文字
• 文字体系の一覧
• カンボジア王国

外部リンク

• Khmer Software Initiative - 上掲の文字画像はこのページで配布されているフォント「Khmer OS Battambang」に基づいて作成。
• 東外大言語モジュール｜カンボジア語