ワルシャワラジオ塔とは (ワルシャワラジオトウとは) [単語記事]

ワルシャワラジオ塔（ポーランド語：Maszt radiowy w Kon stantynowie）とは、かつて世界一高かった建造物である。

概要

2018年 2月現在、世界一高い建築物はアラブ首長国連邦・ドバイにあるブルジュ・ハリファ（全高828.0m）である。また、東京スカイツリー（634m）は世界一高い自立型鉄塔として知られている。

しかし当然ながら、これらの建築物が完成する以前にもまた「世界一高い建造物」として知られた建築物が存在した。それがポーランドにあったワルシャワラジオ塔である。その高さは東京スカイツリーを12mあまり上回る646.38m。この記録は、前述のブルジュ・ハリファが2008年 5月に649.7mに達しこれを塗り替えるまでは、記録の残る限りでは地球上に存在した建築物として一番の高さであった。

しかし、ブルジュ・ハリファが記録を更新したこのとき、ワルシャワラジオ塔は既にこの世に存在しなかった。これより遡ること17年前の1991年 8月10日に、世界一の高さを誇ったこの建築物は、あろうことか改修作業中のミスによって崩壊。二度と再建されることはなかったのである。

在りし日の姿

ワルシャワラジオ塔は、ポーランドの首都ワルシャワの郊外、ヴィスワ川を西に数十kmほど下ったあたりのゴンビンという小さな町にあるコンスタンティヌフという集落の、標高115.2mの地点に存在した。

設計者はポーランドの建設大手モストスタル社のジャン・ポラック。1970年 7月に工事開始、1974年 5月18日に完成した。

高さ646.38m、幅4.8m。格子状に組み合わせた鋼管製の鉄塔を支線によって支える支線式と呼ばれる鉄塔で、マスト部の重量は諸説あるが、一説には420t（なお自立式の東京スカイツリーはタワー鉄骨総重量約36,000t）。地面と鉄骨の間に120 kVの電位差が存在したため、高さ2mの絶縁体の土台が作られ、この重量は80tであった。また、地面から先端までエレベーターで30分の時間を要した。

完成同年の7月22日にワルシャワラジオ・テレビの長波無線放送用として稼働開始。周波数は1988年 2月1日以前は227kHz、これ以降は225kHz。受信可能地域は欧州及び北アフリカの全域に及び、更には北南米、アジア、南アフリカ、豪州、果ては北極・南極まで、すなわち実質地球上のあらゆる場所に電波を届かせることができたという。

鉄塔の完成から約10年後、風による振動によって鉄塔、絶縁体、支線に構造的なダメージが存在することが調査によって明らかになった。修理が困難と考えられたため、同じ高さでより強度のある鉄塔を建てることが検討されたが、ポーランドの経済状況が良くなかったために実現には至らなかった。1988年に再塗装が行われたが、十分な塗料が用意できなかったがために当初の計画通りには実行されなかった。

崩壊

2年前にポーランド人民共和国が崩壊し、ソビエト連邦崩壊の足音が聞こえ始めていた1991年 8月8日、ワルシャワラジオ塔では老朽化した鉄塔の改修工事が行われていた。ラジオ塔に張られた5段階の高さの支線のうち、一番高い位置にあるロープを交換する際になんらかの作業ミスが発生、これによって鉄塔から3方向に張られた支線のバランスが崩壊。鉄塔はその中ほどから曲がり、最終的には折れてしまった。なお、送信機の建物には損傷はなく、また作業していた労働者は崩壊の兆候をみて避難していたのか、負傷者も出なかった。

調査委員会は鉄塔の建設・管理を行っていたモストスタル・ザブジェ社にその責任があると判断。建築責任者に懲役刑がくだされた。

ワルシャワテレビ塔の崩壊により、世界一高い建築物の座はアメリカ合衆国ノースダコタ州にあるKVLY-TV 塔（高さ628.8m）に譲り渡された。なおKVLY-TV 塔はその後ブルジュ・ハリファと東京スカイツリー、上海中心に抜かされ、現在では世界第4位の高さとなっている。また、ポーランドで最も高い建築物はオルスティン・ピエチェーヴォFM・テレビ塔（高さ365m）になった。