収得賞金(しゅうとくしょうきん)とは、競馬において競走条件(クラス)を区分するための賞金のこと。
本項目においてはJRA(日本中央競馬会)のそれについて解説していく。
レースにおいて入着した際に獲得できる本賞金(獲得賞金)とは別の概念なのでややこしいが、収得賞金と本賞金は全く無関係というわけでもなく、さらに本職の競馬関係者が収得賞金のことを「本賞金」と呼んでいたり、競馬情報サイトが獲得賞金のことを「収得賞金」と表記したり、『ダービースタリオン』シリーズが収得賞金を「本賞金」と表記したりといった用語の混乱が横行しているので非常にややこしい。ニコ百の競馬記事でも混同してることが結構ある。
さらに地方競馬ではクラス分けのシステムが異なり、中央競馬における「本賞金(獲得賞金)」をそのまま「番組賞金」としてクラス分けに用いているため、地方競馬では「獲得賞金」のことを「収得賞金」と呼称することもある。ややこしすぎるわ!
というわけで以下、本記事では中央競馬における「本賞金(獲得賞金)」と「収得賞金」の違いから順に説明していく。
競走馬はレースに出走し、5着以内に入着すると、着順に応じた賞金を獲得できる。これが「本賞」である。「本賞金」と呼ばれることが多いため、以降は「本賞金」とする。
この賞金額は基本的にレースのグレードが高いほど高額で(一部例外あり)、1着の賞金を基準として、2着40%、3着25%、4着15%、5着10%となる。
たとえばGⅠの日本ダービーであれば、1着賞金が3億円(2023年から)なので、2着で1億2000万円、3着で7500万円、4着で4500万円、5着でも3000万円がもらえる。こうして積み上げた金額に、「付加賞」(後述)を合わせた合計がその馬の「獲得賞金(総賞金)」となる。
レースに勝てなくても5着以内に入れば本賞金は貰えるため、グレードの高いレースでコツコツと掲示板入りを積み重ねた結果、あまり勝てなくてもそこらのGⅠ馬以上の獲得賞金を稼ぐ馬もいる。
GⅠは1勝だけだが10億円以上を稼いだステイゴールドやシュヴァルグラン、GⅠ未勝利で6億円を稼いだナイスネイチャやバランスオブゲーム、重賞未勝利で4億円以上を稼いだサウンズオブアースやカレンブーケドール、通算1勝で2億円を稼いだエタリオウなどが代表的な例で、こういった馬は「馬主孝行」と言われることも。
ちなみに賞金は馬主が総取りするわけではなく、おおよそ馬主80%、調教師10%、騎手5%、厩務員5%の割合で配分される(障害レースの騎手は7%)。
獲得賞金のJRA歴代1位はウシュバテソーロの25億6362万5300円(地方・海外レース含む)。国内レースのみではキタサンブラックの18億7684万3000円が最多。地方所属馬ではフリオーソの8億4544万6000円が最多記録。(※いずれも2025年3月時点)
特別競走(特別登録が必要なレース。端的に言えば「○○賞」「○○ステークス」「○○特別」などのレース名がついているレース)では、集められた特別登録料の総額が、1着馬・2着馬・3着馬に7:2:1の割合で賞金として配分される。これを「付加賞」といい、この金額も獲得賞金に加算される。
レースごとのその馬の獲得賞金が書かれている競馬情報サイトで、賞金額の端数の部分にあたるのがこれ。たとえば2022年の日本ダービーでは勝ったドウデュースの賞金は2億2697万8000円となっているが、2022年日本ダービーの1着本賞金は2億円なので、2697万8000円が付加賞ということになる。
ここから計算すると、2022年の日本ダービーの特別登録料の総額は3854万円であったとわかる。もちろんこれは実際に出走した18頭だけでなく、実際には出走しなかった・できなかった馬も含めた特別登録料の総額である。
なお、たびたび「5着までに入らずとも8着までは確実に、9着と10着にも賞金が出る時がある」と言われるが、6着~8着、オープン特別以上の競走では10着までに入線した馬に出るのは「出走奨励金」であり、1着賞金を基準に計算されているものではあるが本賞金とは別。2022年からは条件戦以下のレースでも9着まで出走奨励金が出るようになった。
他にも各種出走手当など、レースに出ると賞金以外にもいろいろ貰えるお金があるが、獲得賞金として計算されるのは「本賞金」と「付加賞」のみである。
一方、競走馬をその実力に応じたレースに出走させるための区分として設定されているのが競走条件(クラス)であり、それを区分するために設定されているのが「収得賞金」という概念である。語感からするとなんか「獲得賞金」の専門用語っぽい呼び方にも聞こえるが、この賞金は実際に支払われるわけではない。
要するに、「賞金」という名前がついていて単位が「万円」なだけの、競走馬に対する評価点と考えればよい。
「収得賞金」は「本賞金」とは獲得条件も異なり、それぞれ別に計算される。そして競走馬は、年齢・時季とそれまでに獲得した収得賞金の額に応じて以下のようにクラス分けされる。
2歳夏季
収得賞金額 | クラス |
---|---|
0円 | 新馬・未勝利 |
1万円以上 | オープン |
収得賞金額 | クラス |
---|---|
0円 | 新馬・未勝利 |
500万円以下 | 1勝クラス |
501万円以上 | オープン |
3歳夏季
収得賞金額 | クラス |
---|---|
0円 | 未勝利 |
500万円以下 | 1勝クラス |
501万円~1000万円以下 | 2勝クラス |
1001万円~1600万円以下 | 3勝クラス |
1601万円以上 | オープン |
3歳秋季以降
収得賞金額 | クラス |
---|---|
500万円以下 | 1勝クラス |
501万円~1000万円以下 | 2勝クラス |
1001万円~1600万円以下 | 3勝クラス |
1601万円以上 | オープン |
レースに勝利し、収得賞金を加算していくことでクラスが上がっていき、クラスが上がるとそれ以下のクラスのレースには出走できなくなる。たとえば2勝クラスの馬は、未勝利戦や1勝クラスの条件戦には出走できない。
なお、上記の表で時季によってオープンの基準が変わるのは、単純に2歳夏季には条件戦自体が、2歳秋季~3歳春季には2勝クラス・3勝クラスの条件戦が存在しないからである。
1勝クラス~3勝クラスに属する馬を俗に「条件馬」と呼び、その属するクラスの条件戦のことを「自己条件」という。属するクラスより上のクラスのレースに挑戦することは「格上挑戦」と呼ばれる。
この収得賞金の獲得条件と獲得額は、以下のように定められている。ちなみに10万円以下の端数は切り捨て。
レース区分 | 収得賞金に加算する額 |
---|---|
新馬戦・未勝利戦 | 1着 400万円 |
1勝クラス | 1着 500万円 |
2勝クラス | 1着 600万円 |
3勝クラス | 1着 900万円 |
2歳リステッド競走 | 1着 800万円 |
2歳九州産馬限定戦 | 1着 500万円 |
2歳その他オープン | 1着 600万円 |
3歳リステッド競走 | 1着 1200万円 |
3歳その他オープン | 1着 1000万円 |
3・4歳以上リステッド競走 | 1着 1400万円 |
3・4歳以上その他オープン | 1着 1200万円 |
2歳GⅢ・格付けなし重賞 | 1着 1600万円、2着 600万円 |
2歳GⅠ・GⅡ | 1着・2着とも本賞金の半額 |
3歳以上重賞 | 1着・2着とも本賞金の半額 |
と、見ての通り、重賞以外では1着、重賞でも2着以上にならないと収得賞金を得られない。なので、たとえば未勝利戦で2着になると200万円の本賞金がもらえるが、収得賞金は0円なので1勝クラスに上がることはできない。また「重賞2着以上」はもちろんGⅠまで含まれるので、GⅠで3着であっても収得賞金は得られない。少なくとも収得賞金のルール上においては、GⅢでの2着の方がGⅠでの3着より価値が上である。
そしてレースにおいて、フルゲート(最大出走可能数)以上の馬が出走登録した場合、優先出走権を獲得した馬を除いて、この収得賞金での足切りが行われる。収得賞金の多い順に上から並べて、足りない馬は容赦なく除外される。当落線上で収得賞金が同額で並んだ場合は抽選となる。
そのため、特に3歳のクラシック競走では、調子を上げてきた注目馬や仕上がりの遅かった後の名馬が賞金不足で出走できなかったり、ギリギリで抽選を通って出走できた馬がそのまま勝利したりと、この収得賞金による除外・抽選を巡って悲喜こもごものドラマが繰り広げられる。有名なところでは、1988年菊花賞でのスーパークリークの出走を巡るアレコレとか。
ニコ百の競走馬の記事でも、「賞金を加算できた」とか「賞金加算に失敗した」とか「賞金不足で出走できず」とか書いてあれば、この収得賞金のことを指している。
オープン馬となればその後は収得賞金をいくら積み上げても出られるレースは変わらないが、もちろんフルゲートになれば収得賞金によって(正確には後述の「出走馬決定賞金」によって)抽選・除外が発生するので、目標のレースに確実に出走するためには収得賞金を積んでおくに越したことはない。ただし、あまり収得賞金が多くなると、負担重量が賞金別定のレースには出走し辛くなる(これも詳しくは後述)。
なお、同着が発生した場合、本賞金は同着の着順の賞金とその1つ下の着順の賞金とを合計して両者で折半する形になるが、収得賞金は同着でも本来のその着順で得られる金額がそのまま加算される。
たとえば2010年のオークスではアパパネとサンテミリオンが1着同着となり、本賞金は1着9700万円+2着3900万円=1億3600万円を2頭で分け合い両者6800万円となったが、収得賞金は1着本賞金9700万円の半額である4850万円が両者に加算された。
2着同着でも同様で、2022年のエリザベス女王杯ではライラックとウインマリリンが2着同着となり、本賞金は2着5200万+3着3300万を2頭で分け合い両者4250万円となったが、収得賞金は2着本賞金5200万円の半額である2600万円が両者に加算されている。
ちなみに未勝利馬(収得賞金が0円の馬)は基本的に重賞には出走できないが、2歳夏季や、3歳春G1のトライアル競走には未出走馬・未勝利馬でも出走可能な重賞があり、未勝利で出走して2着になると通算0勝のままで収得賞金を加算することができる。
収得賞金を得れば通算0勝でも定義上では「未勝利馬」ではなくなるため、重賞にも出走可能になり、トライアルであればGⅠの優先出走権も獲得することができる。なので、たとえば未勝利でGⅡ青葉賞に出走して2着になれば収得賞金と日本ダービーの優先出走権が獲得できるので、ルール上は初勝利が日本ダービーということも可能である。ハリボテエレジーが未勝利でGⅠに出られるのもあり得ない話ではなかった。
未勝利馬が重賞を勝った例は、1998年の北海道3歳優駿(統一GⅢ)を未勝利で勝ったキングオブサンデーが存在した一方で、未勝利馬が重賞で2着となって通算0勝で未勝利を脱した例はグレード制以降長らくなかったが、2024年の小倉2歳Sで未勝利のクラスペディアが2着となって初めて通算0勝で未勝利を脱した。
古馬(4歳以上)の出走できる重賞およびリステッド競走では、単純なそれまでの収得賞金の総額だけでなく、そこに「過去1年間の収得賞金」と「過去2年間のGⅠレースの収得賞金」が上乗せされた上で計算される。これを「出走馬決定賞金」という。
なお、2022年までは平地のオープン特別競走もこのルールだったが、2023年からは条件戦に類似した、直近8週3着以内→出走間隔順という方式に変更になっている。
たとえば収得賞金は2億円だが過去2年間2着以内がない馬Aと、収得賞金は1億円だが過去1年間に1着本賞金3億円のGⅠで2着(本賞金1億2000万円÷2=収得賞金6000万円)が1回ある馬Bであれば、馬Bには「過去1年間の収得賞金」と「過去2年間のGⅠレースの収得賞金」としてそれぞれ6000万円が加算され、馬Bの出走馬決定賞金は1億円+6000万円×2=2億2000万円となり、馬Aを上回ることになる。
なお、古馬オープンでは上位クラスの馬に優先して出走権が与えられる。たとえば過去1年間に未勝利戦・1勝クラス・2勝クラスを勝利している収得賞金1500万円の3勝クラスの馬Cと、過去1年間収得賞金を獲得していない収得賞金1650万円のオープン馬である馬Dであれば、馬Cは出走馬決定賞金の計算上では3000万円となり馬Dを上回るが、出走馬決定賞金順に並べた際にはオープン馬である馬Dの方が上位に置かれる。
GⅠレースではこの出走馬決定賞金に優先して、出馬登録した中でレーティング上位5頭と外国馬に優先出走権がある。グランプリである宝塚記念と有馬記念の2競走については、第1回特別登録を行った馬の中でのファン投票上位10頭に優先出走権が与えられる。
また、地方の交流重賞のうち、古馬のJpnⅡ・JpnⅢ競走にJRA所属馬が出走する場合、出走枠のうち上位3頭は通常の出走馬決定賞金を用いるが、4位以下はそこから通常の収得賞金を除いた「過去1年間の収得賞金」+「過去2年間のGⅠレースの収得賞金」のみで決定される。これにより、過去に収得賞金を重ねた高齢馬より、近走で収得賞金を積んでいる馬が出走しやすくなるようにしている。
2021年の優駿牝馬(オークス)を制したユーバーレーベンを例にとって本賞金と収得賞金を計算してみよう。ユーバーレーベンは収得賞金不足で桜花賞を断念したのだが、桜花賞までの戦績は以下の通り。
レース | 格付 | 着順 | 本賞金 | 収得賞金 |
---|---|---|---|---|
2歳新馬 | -- | 1着 | 700万円 | 400万円 |
札幌2歳ステークス | GⅢ | 2着 | 1200万円 | 600万円 |
アルテミスステークス | GⅢ | 9着 | 0円 | 0円 |
阪神ジュベナイルフィリーズ | GⅠ | 3着 | 1600万円 | 0円 |
フラワーカップ | GⅢ | 3着 | 880万円 | 0円 |
合計 | 4380万円 | 1000万円 |
見ての通り、この時点でユーバーレーベンは5戦中4戦で入着を果たしており、新馬戦1着700万円+札幌2歳S2着1200万円+阪神JF3着1600万円+フラワーC3着880万円で、既に本賞金4380万円を稼いでいる計算になる(出走奨励金等は除く)。
これは桜花賞で3着だったファインルージュ(新馬戦2着+未勝利戦1着+フェアリーS1着で4290万円)や5着だったアールドヴィーヴル(新馬戦1着+クイーンC2着で2100万円)より多い。
ところが2着以上になったのが新馬戦と札幌2歳Sだけのため、ユーバーレーベンの収得賞金はGⅠで3着を取っていても新馬戦1着400万円+2歳GⅢ2着600万円=合計1000万円だけであった。
一方、ファインルージュは未勝利戦1着400万円+フェアリーS1着1750万円(本賞金3500万円の半額)で収得賞金2150万円。アールドヴィーヴルも新馬戦1着400万円+クイーンC2着700万円(本賞金1400万円の半額)で収得賞金1100万円となり、いずれも収得賞金ではユーバーレーベンを上回るのである。前述した通り、GⅠで3着を取っても加算されない収得賞金というシステムの厳しさが伺える。
この年の桜花賞は収得賞金1000万円が抽選ラインだったため、ユーバーレーベンも抽選を通れば出走可能だったが、抽選の枠は2枠しかなかったため、オークスに照準を切り替えて桜花賞を回避。
続くフローラS(GⅡ)も3着でまたも賞金加算に失敗したが、オークスは抽選ラインが900万円となったため、どうにか除外を回避して出走を果たし、2勝目をGⅠオークスで挙げることとなった。
もちろんオークス1着は本賞金1億1000万円なので、ユーバーレーベンは収得賞金5500万円を獲得し、無事にオープン馬となっている。
同様に、大レースで活躍しながら、なかなか収得賞金を積めずにいた最近の事例として、2022年のダノンベルーガがいる。
レース | 格付 | 着順 | 本賞金 | 収得賞金 |
---|---|---|---|---|
2歳新馬 | -- | 1着 | 700万円 | 400万円 |
共同通信杯 | GⅢ | 1着 | 4000万円 | 2000万円 |
皐月賞 | GⅠ | 4着 | 2300万円 | 0万円 |
東京優駿 | GⅠ | 4着 | 3000万円 | 0万円 |
天皇賞(秋) | GⅠ | 3着 | 5000万円 | 0万円 |
合計 | 1億5000万円 | 2400万円 |
上記のようにGⅠで好走しながらも2着以上を獲れずにいた結果、天皇賞(秋)終了時点での収得賞金は2400万円、出走馬決定賞金はジャパンカップ登録時点で4400万円。JRA馬登録17頭中、下から2番目の16番手になってしまっていた。この年のジャパンカップは外国馬6頭が登録、最終的に4頭が出走したため、賞金順では抽選の余地すらない除外対象だったのである。
幸いにして天皇賞(秋)の好走でプレレーティング120を獲得し、前述した「出馬登録した中でレーティング上位5頭」で優先出走権を確保してジャパンカップに出走できることになった。そのジャパンカップも5着(本賞金4000万円)と収得賞金の加算に失敗してしまい、翌2023年2月には「過去1年間の収得賞金」として加算される共同通信杯の2000万円も消えて、出走馬決定賞金2400万円ではGⅠへの出走は心もとないことになってしまった[1]。
その後、3月にドバイターフ(G1)に遠征し、2着となったことで100万ドル(後述する「地方・海外レースに出た場合」を参照)の賞金を得たことで、6590万円の収得賞金を得ることに成功し、この窮地を脱している。
レースにおける出走馬の背負う負担重量の決め方にはいくつか種類があるが、その中には収得賞金によって負担重量を決定するレース(収得賞金による別定戦。通称「賞金別定」)が存在する。負担重量の記事も参照。
賞金別定のレースは基本的にGⅢ以下のレースで、収得賞金額が高くなるほど負担重量が大きくなる。重い負担重量を背負わせて走らせることは馬に大きな負担をかけるため避けるのが普通であり、これにより、GⅠを勝って多額の収得賞金を積み上げているような実績馬が、実力に見合わないグレードの低いレースに出てくることを抑制している。
例として、引退時のアーモンドアイが当時のGⅢ京都牝馬ステークスに出走しようとした場合を考えてみよう。アーモンドアイの引退時(2020年12月時点)の収得賞金は9億680万円。当時の京都牝馬Sの負担重量は「5歳以上53kg、収得賞金1600万円毎に1kg増」なので、9億680万÷1600万=56.675、すなわち+56kgとなり、アーモンドアイの負担重量は53+56=109kgとなっていた。当然、こんな重量を背負わせたら走る以前の問題であり、こういった実績馬はこれらのレースには事実上出られないわけである。
ただし、負担重量改革に伴い3(4)歳以上の重賞に関しては2023年から、このような賞金別定戦は全て勝ち鞍別定に変更。3歳限定の重賞に関しても2024年から、重賞は全て馬齢重量に変更になったため、この決め方が残るのはオープン特別・リステッド競走のみになった[2]。
なお、賞金別定重賞があった時代も3歳限定重賞は基本的に最大+1kgであった。また2歳重賞は収得賞金で差がほとんどつかないため当時から全て馬齢重量であった。
JRAに所属する競走馬が地方および海外のレースに出走した場合の収得賞金については、以下のように定められている。
本賞金 | 収得賞金に加算する額 |
---|---|
1着:1200万円以上 | 本賞金の半額 |
2着:480万円以上 | 本賞金の半額 |
1着:400万円以上1200万円未満 | 一律400万円 |
2着:160万円以上480万円未満 | 一律160万円 |
1着:10万円以上400万円未満 | そのままの額 |
2着:160万円未満 | そのままの額 |
1着:10万円未満 | 一律10万円 |
もちろんJRAのレースと同じく、2着で収得賞金が加算されるのは重賞のみである。ただし、地方から中央に転厩してきた馬の場合のみ、地方登録時代に(JRAのレースおよびダートグレード競走以外で)2着の本賞金が100万円以上のレースに関しては2着でも上記の基準で加算される。
たとえば大井からJRAに転厩したトーセンスーリヤの場合、地方時代の成績はデビュー戦の出囃子賞(大井)2着→2歳200万(大井)1着→川崎ジュニアオープン(川崎)4着だが、出囃子賞2着の本賞金100万円と、2歳200万の本賞金190万円が上記の表の基準に基づいて収得賞金に加算され、収得賞金290万円で1勝クラスからのスタートとなった。
また、地方の重賞以外の指定交流競走にJRA所属馬が出走した場合、上記の表の規定にかかわらず、JRAにおける区分に応じて1着に未勝利400万円、1勝クラス500万円、2勝クラス600万円、3勝クラス900万円、オープン1000万円が加算される。もっとも重賞以外の指定交流競走は、JRAの区分では2勝クラス相当までしか存在しないが。
たとえば岩手競馬の東京カップけやき賞は1着の本賞金は250万円だが、JRAの区分では3歳以上2勝クラスに相当するため、中央所属馬が勝利すると収得賞金に600万円が加算される。
こうしたレースで勝った馬の場合、収得賞金が獲得賞金を上回るという珍事が発生することもある。2023年の嘉月特別(笠松)で初勝利を挙げたヴァンドゥランの場合、獲得賞金62万円で収得賞金400万円となった。
海外競馬の賞金については、いつの時点の為替レートで計算するかという問題があるが、これは年ごとにその年の1月1日時点の為替レートを用いて、ユーロを基準にした換算レートが定められている。例えば、2023年の場合、
となるため、1ドル=(0.93756÷0.71100)×100円と計算する、ということである。なお、当然だが、1ユーロは1ユーロであるため、凱旋門賞など賞金がユーロ建ての場合は、普通に1を100円あたりのユーロで割って、100を掛け算すればよい。
メディアではレース開催時点の為替レートで賞金が記述されがちなので、実際に算入される賞金とは差異が生じる。2023年のオーストラリアのザ・ゴールデンイーグルを勝利したオオバンブルマイの場合、1着賞金525万オーストラリアドルがメディアでは約5億1000万円と報道されたが、換算レートは1月1日時点の1豪ドル=0.63723ユーロだったため、実際にオオバンブルマイの本賞金に加算されたのは約4億7000万円であった。収得賞金の計算ももちろん、実際に加算された本賞金の額に応じて上記の表に準ずる。
また、海外競馬でも同着の場合の収得賞金は国内と同様、本来のその着順で獲得できる本賞金を元に計算される。しかし何しろ極めてレアな事例だけに、2022年3月のドバイターフでパンサラッサが1着同着となった際にはJRA側も混乱したようで、パンサラッサの収得賞金は本来の1着賞金290万ドルではなく、2着100万ドルと折半した同着賞金195万ドルの半額が加算されることに。その後、半年後にJRA側が取り扱いミスを認め、パンサラッサのドバイターフの収得賞金は本来の1着賞金290万ドルの半額に訂正された。
また、中央競馬では算入する収得賞金に上限がないため、海外の高額レースで1着をとると非常に多額の収得賞金が加算されることになる。例えばパンサラッサは上記翌年の2023年2月にサウジカップ(1着1000万ドル)を制しているが、換算結果13億1864万9700円の半額(10万円未満の端数切捨て)の6億5930万円が加算されている。
障害競走の場合はクラスが「未勝利」と「オープン」の2種類しかない(1999年以降)ため、1勝でもすればオープン扱いとなる。障害競走の収得賞金は以下の通り。
レース区分 | 収得賞金に加算する額 |
---|---|
未勝利 | 1着 400万円 |
オープン一般 | 1着 600万円 |
オープン特別 | 1着 750万円 |
重賞 | 1着・2着とも本賞金の半額 |
ただし、平地競走と障害競走の収得賞金は合算されない。そのため、平地でたとえ重賞を勝っていても、障害に転向すると収得賞金は0円扱いで未勝利からのスタートである(例:タガノエスプレッソ、ニシノデイジー等)。
同様に、障害でどれだけ稼いでいても平地の収得賞金には加算されない。たとえば障害でJ-GⅠを9勝、重賞を合計15勝したオジュウチョウサンは、障害での収得賞金は4億3000万円に達したが、平地では500万下(現:1勝クラス)と1000万下(現:2勝クラス)の2勝しかしていないため、収得賞金は1100万円で3勝クラスの条件馬であった。
ちなみにオジュウチョウサンがこの2勝を挙げたのは障害転向前ではなく、2018年に有馬記念に出るために一時的に平地に戻ってきたときのことである。オジュウチョウサンは障害転向前は平地で2戦0勝だったため収得賞金は0円であり、ファン投票でどれだけ票を集めてもそのままでは有馬記念に出られなかったことによる。
未勝利とオープンしかクラスがない障害の収得賞金は出走可否の決定以外に何に使うのかというと、重賞以外のオープン競走における負担重量の決定に用いられている。障害競走における収得賞金による別定戦は「別定SA」と「別定SB」の2種類があり、「別定SA」は「収得賞金700万円ごとに1kg増」、「別定SB」は「収得賞金400万円超過馬は超過額300万円ごとに1kg増」と定められている。
なお、1999年以前は「平地の収得賞金は障害のそれには影響しないが、障害での収得賞金は平地での収得賞金に加算する」というルールだった。障害競走の負担重量ルールはこの制度だった最終年の中山グランドジャンプと中山大障害が定量である以外は賞金別定で、障害で勝てば勝つほど酷量を背負わされることになる一方、障害で稼いでいるため平地の能力如何に関わらず抽選にも勝ちやすくなっていることなどもあり、天皇賞(春)を筆頭に平地の長距離レースに障害馬が出走するということもあった(例:1998年の日経賞に出走したアワパラゴンとテンジンショウグン)。
2018年まで、JRAの平地競走には4歳の夏競馬の開始時にそれまでの収得賞金を一律半減する降級制度が存在した(障害競走には元々存在しない)。
これは上位クラスに上がったもののそこで頭打ちになってしまた馬への救済措置。たとえば新馬戦と2歳重賞を勝って収得賞金が2000万円となりオープン馬となったものの、その後伸び悩んでそれ以降は収得賞金を上積みできていないような馬に対し、収得賞金を半減(→1000万円)して1000万下(現在の2勝クラス)の条件戦に出られるようにしてあげるもの。
経済動物である競走馬は自分の食い扶持も稼げなくなってしまえば引退せざるを得ないわけで、降級制度によって下位のクラスでもう一度賞金を稼ぐチャンスを与え、競走馬に現役を長く続けてもらおうという制度であった。
2019年、下位クラスのレースを減らして上位クラスのレースを増やすなどの目的で、降級制度は廃止となった。これに伴い、それまで「500万下」「1000万下」「1600万下」という収得賞金額で区分されていた条件戦もそれぞれ「1勝クラス」「2勝クラス」「3勝クラス」という現在の表記に変更された。
ちなみに1987年までは4歳(当時の表記は5歳)時だけでなく5歳(当時の表記は6歳)時にも2回目の降級があり、当時の降級制度は「その馬の収得賞金を減らす」ではなく「クラスの昇級に必要な収得賞金額を増やす」という形であった。そのため、たとえば現在の2勝クラスにあたる900万下ではレース条件に「4歳900万下、5歳1800万下、6歳上2700万下」とか書かれたりしていた。
この制度下において、1987年から88年にかけて、ビギンザビギンという馬が同一クラス(900万下)を5勝するという珍記録(?)を達成し[※1]、さすがにこれはおかしいということになったのか、1988年に2回目の降級は廃止された。
なお、「クラスの昇級に必要な収得賞金額を増やす」から「その馬の収得賞金を減らす」に仕様が変更されたのは2006年の夏季競馬からである。例えば、2006年の湘南ステークスが「4歳1600万下、5歳以上3200万下」であるのに対し、同年の横津岳特別が「3歳以上500万下」となっている。
変更時はこの切り替えを5歳以上の馬にも適用するため、2002年以前に生まれた馬については、2006年6月16日(この年の夏季競馬は翌17日から)以前に獲得した収得賞金を一律半減する措置が取られた。
この降級制度があった時代、賞金の安い2歳(旧3歳)GⅠ馬がそれ以降収得賞金を積めなかった結果、GⅠ馬なのに条件馬に降級するという事例が稀にあった。代表例は2000年の朝日杯3歳S(GⅠ)勝ち馬メジロベイリーで、未勝利戦(収得賞金400万円)と朝日杯の勝利(本賞金5300万円→収得賞金2650万円)のみで長期休養した結果、4歳夏以降はオープン入りに収得賞金3201万円以上が必要なのに対し、メジロベイリーは上記の通り収得賞金3050万円だったため1600万下の条件馬となった。
ただし、中央GⅠ馬が実際に平地の条件戦に出走した事例はない。交流GⅠ級では全日本2歳優駿(JpnⅠ)勝ち馬のうち、ビッグロマンス、サマリーズ、ディアドムスの3頭が1600万下条件戦に出走したことがある。
[※1]…ビギンザビギンの現役当時の収得賞金は新馬・未勝利戦が300万円、400万下(1勝クラス)が400万円、900万下(2勝クラス)が500万円であった。ビギンザビギンは旧4歳(85年)に未勝利戦と400万下を勝利し収得賞金700万円で900万下となったが、その後は勝ちきれず旧5歳(86年)夏に400万下(5歳800万下)に降級。旧6歳(87年)1月に900万下を格上挑戦で勝利し収得賞金1200万円となって900万下(6歳1800万下)に復帰。しかし旧6歳夏になると2度目の降級で900万下の在籍条件は「6歳上2700万下」になってしまい(それを回避しようとしてか直前の6月に1400万下に格上挑戦しているが3着に敗れている)、その後彼は900万下を3連勝(500万×3)したが収得賞金は2700万円ジャストで同一条件を4勝しても900万下のままだった。結局旧7歳(88年)の6月に900万下での通算5勝目を挙げて1400万下に昇級している。
降級制度があった時代の収得賞金の計算例として、重賞未勝利馬の獲得賞金最多記録を持つサウンズオブアースの収得賞金の履歴を見ていくと、このようになる。
レース名 | 着順 | 加算額(万円) | 収得賞金(万円) |
---|---|---|---|
3歳未勝利 | 1着 | 400 | 400 |
はなみずき賞(3歳500万下) | 1着 | 500 | 900 |
京都新聞杯 | 2着 | 1050 | 1950 |
神戸新聞杯 | 2着 | 1050 | 3000 |
菊花賞 | 2着 | 2250 | 5250 |
4歳6月半減処理 | -2625 | 2625 | |
京都大賞典 | 2着 | 1300 | 3925 |
有馬記念 | 2着 | 5000 | 8925 |
日経賞 | 2着 | 1350 | 10275 |
ジャパンカップ | 2着 | 6000 | 16275 |
2019年以降のシステムでは京都新聞杯2着の時点で収得賞金が1600万円を超えているので恒久的にオープン入りとなるが、当時(3歳時は2014年、4歳時は2015年)は降級制度があったため、この時点での1950万円のままであれば4歳夏季競馬の開始時に半減され975万円となり、1000万下(現:2勝クラス)に降級することになる。
続く神戸新聞杯2着の時点でもまだ収得賞金3000万円であるため、このままでは半減で1500万円となり1600万下(現:3勝クラス)への降級となる。
菊花賞2着で5250万円となった時点で、半減されても1600万円を超えるため、ようやく完全にオープン入りしたことになるわけである。
前述した通り、現在のルールでは自分の所属するクラスより下の条件戦のレースに「格下挑戦」することはできない。ただし、この「格下挑戦」が可能だった時代があった。
1988年までは同一開催であれば、特別競走に限り既に勝ち抜けたクラスの条件戦にもう一度出ることが可能だったのである。開催1週目に400万条件(現:1勝クラス)を勝った馬が、開催4週目の400万条件の○○特別に中2週で出る、なんてことができた。ただしもちろんノーリスクではなく、斤量が1kgか2kg増えることになるが。この制度は俗に「勝ち得戦」と呼ばれた。
このルールを使った有名な馬としてはタマモクロスがいる。1987年10月18日の第4回京都開催4日目の4歳以上400万下条件を勝ったあと、中1週で同じ第4回京都開催8日目の藤森特別(400万下)に向かい連勝。この後、GⅠ3勝を含む怒濤の重賞6連勝が始まることになる。
また1984年のエリザベス女王杯を勝ったキョウワサンダーは、その年の6月の400万条件を勝ったあと、9月の第4回阪神開催2日目のGⅢサファイヤSで2着となり収得賞金を加算したのち、中2週で開催7日目の布引特別(900万下)に出走している(3着)。
競走馬の獲得賞金は各種競馬情報サイトにて手軽に確認できる一方で、収得賞金を確認できるサイトは実はほとんどない。
収得賞金を確認できるサイトとしては、JRA公式サイトの競走馬情報ページと、スポーツナビ
がある。また、netkeiba.com
などの競馬情報サイトでは、クラシックの時期が近付くと3歳馬の収得賞金順位の記事を出してくれたりもする。
特に収得賞金で運命が大きく変わるクラシックレースの前など、気になる馬の収得賞金が足りているかどうか確認したい人は調べてみよう。
まあ、古馬重賞だと出走馬決定賞金を使うのだが、GIならJRAが出走馬決定順を出してくれてるのだが、GII以下だとどうしても手作業で計算しないといけなくなって面倒なことになるのは変わらないが。
掲示板
33 ななしのよっしん
2024/04/25(木) 16:47:26 ID: vCB0NnIKwX
降級がまだあったらダノンスコーピオンとタッチダウンみたいな馬はもうちょい活躍できたかも
34 ななしのよっしん
2024/09/01(日) 15:40:54 ID: L/M317jsdU
クラスペディアおめでとう!陣営はきついだろうけど日本ダービーで初勝利飾ってくれてもいいのよ
35 ななしのよっしん
2024/10/17(木) 03:47:55 ID: BbNFOOhAaF
並の重賞馬より収得賞金稼いでるボンドガール
新馬戦 400万円
サウジアラビアRC 600万円
NZT 1100円
クイーンS 750万円
秋華賞 2200万円
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最終更新:2025/03/29(土) 21:00
最終更新:2025/03/29(土) 21:00
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