負担重量 単語

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フタンジュウリョウ

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負担重量とは、競馬において、競走馬が背負う重量のことである。斤量(きんりょう)とも呼ばれるが、これは昔は重量の単位が尺貫法の斤(1斤=0.6kg)であったことが由来である。なお、以下の記述はJRAが前提であり、地方競馬海外競馬については異なる場合があり、特にアメリカイギリスではポンド(約450g)をその単位としている。この両国競馬の中心地であることから、競走馬レーティングの単位は全世界的にポンドが使われている。

概要

簡単にいえば、騎手及びなどの具を合計した重量のことである。その決め方には大きく分けて4種類存在する。一説には「負担重量1kgで1身差」と言われるほど、競走馬発揮、ひいてはJRAの掲げる「競馬」にを及ぼすため、後述の通り、騎手には負担重量の厳密な遵守がめられている(後述)。

馬齢重量

2・3歳の同一年齢競走馬のみで行う競走にのみ用いられる。障害競走では、そのような競走は存在しないので、必然的に地競走のみである。その重量は、以下の通りである。

なお、末と初をまたぐ連日開催の場合、初の側のほうも末の負担重量を用いる。例えば2017年の場合、4回中山8日・9日(4回阪神も同様)は9月30日10月1日と連続しているが、いずれも9月の負担重量を用いる。あくまでも連続した日付の間だけ適用なので、連続開催ではない場合は回の間でも負担重量は変わる(例えば2020年は4回中山・4回中9月12日から10月4日までの開催であるが、10月3日・4日に関してはきちんと10月の負担重量を用いている)。なお、この初の負担重量変更は後述する別定・定量でも同様である。

2歳(9月まで) 2歳(10月から12月まで) 3歳(9月まで) 3歳(10月から12月まで)
せん馬 54kg 55kg 56kg 57kg
54kg 54kg 54kg 55kg

なお、2歳に関しては2023年から、3歳に関しては2024年から、見直しが行われ、以下の通りとなる予定。

2歳(9月まで) 2歳(10月から12月まで) 3歳
せん馬 55kg 56kg 57kg
55kg

別定

レースごとに決定する基準があるもの。大半の重賞競走がこの方式である。

基本の重量は、原則2・3歳の同年齢のみの競走馬で行う競走については齢重量を、それ以外については5歳以上のせん馬地57kg・障害60kgで、はそこから2kg減、3・4歳は年齢に応じて以下の表の通り減らす(2歳はそのような競走には出ないため考慮しなくてよい)。なお、カッコ内はオープン以外の競走に用いる。

地競走の場合
年齢 3歳 4歳
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4-12
1000m以上1600m以下 8(7) 7(6) 6(5) 5(4) 4(3) 3 2 1 0
1600m2200m未満 9(8) 8(7) 7(6) 6(5) 5(4) 4(3) 3 2 1 0
2200m以上 10(9) 9(8) 8(7) 7(6) 6(5) 5(4) 4(3) 3 2 1 0
障害競走の場合
年齢 3歳 4歳
1月から5月 6月から
2 1 0

その上で、レースごとに決められた基準により増減させる。こちらに関しても地競走に関しては2023年から以下の通り変更予定。

  • 基本の重量 58kg
  • 齢による減量
    地競走の場合
    年齢 3歳 4歳
    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4-12
    1400m未満 7(6) 6(5) 5(4) 4(3) 3 2 1 0
    1400m以上1600m以下 8(7) 7(6) 6(5) 5(4) 4(3) 3 2 1 0
    1600m2200m未満 9(8) 8(7) 7(6) 6(5) 5(4) 4(3) 3 2 1 0
    2200m以上 10(9) 9(8) 8(7) 7(6) 6(5) 5(4) 4(3) 3 2 1 0

例として函館スプリントステークス(6月開催、3歳以上芝1200m、GIII)の場合は、以下のルールになっている(外については今回は考慮しないこととする)。

基本の重量は原則より1kg少なく、3歳の重量は原則通りそこから4kg少ない。2kg減も原則通りである。収得賞金が多くなると負担重量も増えるので、大活躍しているはこのレースに出るととんでもない負担重量になってしまう。GⅢレース以下はこの方式の別定戦が多く、事実上の勝ち抜け戦となっており、GⅢレースを2~3回勝つか、2着を数回積み上げると、自ずとGⅡ以上のレースもしくは成績が落ちてくるとそのときの実に応じたハンデ戦を中心に選ばざるを得なくなる仕組みになっている。

別定におけるとんでもない負担重量の一例として、オジュウチョウサンローカル場で行われる「別定SA」「別定SB」が負担重量基準となっている障害競走に出走する場合、

となる(ちなみに、SASBの間で2019年名前が入れ替えられている。昔はさらにSCというのがあったが、これは「重賞の勝ちにより最大5kgと増える量はマイルド」なものであり、現在SCという呼び名は止になっているが、現在も同等の負担重量の増やし方は存在する)。当然の事ながら、力士を乗せるような酷量を背負えば走る前に故障してしまうので、このような条件の競走にオジュウチョウサンが出走することはまずい。
先にも書いた通りこの別定SASB条件での競走は大半がローカル場でのみ行われるのだが、そういったローカル障害難易度は大半が置障害ということもあり低めとされている。このように障害が賞を稼ぐと出られるレースは、SASBのように収得賞金例し斤量が増えるのではなく、重賞の勝ちにより最大5kgと増える量はマイルドだが、固定の障害コースが設けられ難易度が高いといわれる中央4場でのみ行われる障害オープン特別や重賞に限られていく、ということになるのである。
地でもこれは同様で、函館SSのような収得賞金の別定条件の他、重賞勝ちにより負担重量を増やしていく方式も採用されている。地での勝ちによる別定の例として、キーンランドカップ(2021年8月開催、3歳以上芝1200m、GIII)の場合は、以下のルールになっている。

こちらの決め方の場合、大活躍していても同一年齢・性別間で最大2~3kgまでのハンデキャップに収まり、多少のペナルティを背負えば走れるため、まだ活躍でも出られる。「スーパーGⅡ」として知られる毎日王冠阪神大賞典中山記念などはこちらの方式が取られており、これらのレースは前述のキーンランドカップよりもハンデが1kg軽い。即ち最大でも直近1年以内に混合GI勝利したが+2kg背負わされる程度までに留まるため、こういったレースGⅠの前のひと叩きとして有が参戦しやすい環境となっている。

これら2つの例と全く違う決め方をしている例として、ひまわり賞(2歳九州産馬限定競走)がある。決め方は2番の例に近いが、

となっている。収得賞金500万円以上ということは、2勝以上しているか、GIIIで1着か2着になっているということである(開催されるのが8月末近辺なので、その前に実施される重賞函館2歳ステークスのみ)。2歳なので、で負担重量の差はなく、齢重量より1kg重い基準になっている。多くのが53kgないし55kgで出走してくる。57kgという事例もないことはないが、2012年から2021年の10年間で1例(ヨカヨカ)しかない。それで勝ってしまうのだから恐ろしいものである(距離1200mなので、一般に1kgの増は半身ほどのと言われているが、2位(55kg)に3と2分の1身の差をつけて勝っているので、いかに圧勝だったかがわかるだろう。なお、57kgというのは齢重量に従うと、3歳に背負う負担重量である)。

同じように、一部に対して減がかかるレースとしては、障害競走牛若丸ジャンプステークスなどがある。

具体例を出すと、

ということである(ちなみにこれがかつての別定SCに相当する決め方)。

定量

年齢・性別だけで決まるもの。2歳GⅠ阪神JF朝日杯FSホープフルS)と秋華賞菊花賞齢重量である以外はGⅠレースは全て定量で、この他GⅡ札幌記念阪神カップも定量戦である。

生まれつきによって生じる差のみを斤量差の対とし、どんなに実績があっても年齢と性別が同じであれば負担重量を同一にして、だけで競い合わせるという的を持つ。一例として有馬記念では「3歳55kg、4歳以上57kg、2kg減」である。なお、アメリカオセアニアGⅠレースにはメルボルンカップなど、ハンデキャップレースも多く存在する。

ハンデキャップ

ハンデキャップ作成委員がごとに負担重量を決めるもの。目黒記念及びその開催を引き継いだアルゼンチン共和国杯日経新春杯札幌記念を除くサマー2000シリーズ競走やラジオNIKKEI賞などが該当。かつては較的流な負担重量の決定方法であり、GⅠ昇格前の安田記念スプリンターズステークスフェブラリーステークスハンデキャップ競走だった。なお、かつては障害競走でも行われていたが、2006年を最後に施行されていない。

基本的にどのも勝てる可性が出るようハンデキャップが決定される。このため強いほど重い負担重量を課せられる。負担重量を決めるための材料が不足するため、過去1年以内に出走履歴がない競走馬は出ることができない。

昔のレースではテンポイント1978年日経新春杯で66.5kgを背負わされたように過酷なハンデキャップも多く存在していたが、日経新春杯テンポイントが悲劇的な事故を起こして以来サラ系競走では60kg以上の斤量設定は減った。しかしアングロアラブ競走ではアキヒロホマレ1989年アラブ王冠において70kgを背負わされ、勝ちはしたもののその後は軽い斤量で出走できるサラ系競走に転じていくなど過酷なハンデキャップが残っていた。現在ではレーティングを基準としているので、較的マイルドハンデキャップとなっている。

騎手による減量

ハンデキャップ戦でも、特別競走(固有の名前のあるレース)でもない競走に関しては、以下のような減量措置がなされる。以下の表において、勝利度数とは、出投票締切前日(通常出投票は当該週の木曜日15時に締切なので、水曜日時点)の、中央競馬での1着回数と、地方交流・海外重賞JRA登録に騎乗して1着になった回数の合計である。

勝利度数 男性 女性
30回以下 -3kg() -4kg()
31-50回 -2kg()
51-100 -1kg(☆) -3kg()
101回以上、もしくは免許取得から5年経過 減量なし -2kg(◇)

例えば2022年4月23日、小牧加矢太騎手が第5レース(障害4歳以上オープン、別定SA)においてアサクサゲンキ(2021年小倉サマージャンプ勝ち、なお地を走っていた頃には小倉2歳ステークスも勝っている)に騎乗している。

  • アサクサゲンキは7歳なので、基本負担重量は60kg
  • アサクサゲンキの障害収得賞金3050万円なので、これに4kgを足した64kgが通常の騎手が乗った場合の負担重量になる(他の競走馬べてかなり負担重量が増えてしまう)
  • 小牧加矢太騎手2022年デビュー、かつこの時点での勝利度数0なので、減量は3kg、このため61kgでの騎乗となった

あくまでも、ハンデキャップ戦でも特別競走でもないレースに限って適用するので、重賞ではこの恩恵はないことに注意せよ。例えば、2021年キーンランドカップ(GIII)の亀田温心に関してだが、

ということである。

これに関しても、2023年以降見直しが行われ、地競走と障害競走で区別して計算するようになる。対応は以下の通り

また、これらの減量特典は内での通年免許を持つ騎手に限られ、短期免許で来日した外国人ジョッキーは適用外となる。

例として、2022年に来日したイギリスホリー・ドイル騎手を挙げる。
ホリ騎手女性騎手であり、一見すると-2kg(◇)の減量特典を受けられるように見えるが、短期免許での騎乗であるため、この特典を受ける事ができなかった。

南半球産馬に関する減量

南半球の場合、生産時期が約半年ずれる関係上、以下のような減量が行われる(ハンデキャップを除く)。

距離 2歳 3歳 4歳
7-12月 1-6月 7-9月 10-12月 1-6月 7月 8月 9月以降
1000m以上1600m以下 3 2 2 1 1 0 0 0
1600m2200m未満 3 2 2 2 1 1 0 0
2200m以上 4 3 2 2 1 1 1 0

分かりやすいのはキンシャサノキセキが出走した2006年NHKマイルカップである(結果はこちらexit)。

2023年以降、地競走の南半球産の減量に関しても以下の通り見直しが行われる予定。

距離 2歳 3歳 4歳
7-12月 1-6月 7-9月 10-12月 1-5月 6月 7月 8月 9月以降
1400m未満 3 2 1 1 1 0 0 0 0
1400m以上1600m以下 3 2 2 1 1 1 0 0 0
1600m2200m未満 3 2 2 2 1 1 1 0 0
2200m以上 4 3 2 2 1 1 1 1 0

負担重量の下限

負担重量には、下限が存在し、それを下回ることはない。JRAの場合、それは、以下の通りである。

例えば2022年6月20日、小牧加矢太騎手が第1レース(障害3歳以上未勝利、定量)においてルレーヴドゥリリ(5歳)に騎乗するが、

  • ルレーヴドゥリリ5歳なので、基本負担重量は60kgから2kg減の58kg
  • 小牧加矢太騎手2022年デビュー、かつこの時点での勝利度数3なので、減量は3kg。だが、4歳以上の下限は57kgなので、この下限57kgが適用され、負担重量は57kgとなる

当たり前であるが、騎手人間なので、いくら何でも体重を減らすのも限度がある(競馬学校入学試験に際しては体重制限があり、15歳(=中学3年生、騎手過程における現役年齢)で45kg、18・19歳(=高卒者)で48kg)。また、障害競走では、あまりにも軽すぎるとスピードが出すぎて危険なこともあり重めに設定されている。

なお、2018年以前は地競走に関しては負担重量の下限はなかった。このため、2017年9月30日中山6レースexit、3歳以上500万下(芝2200m)では、カスタディーヴァに関して以下のことが起きた。

  • このレースは定量で、特に負担重量の定めはないため、3歳54kg/4歳以上57kg、2kg減
  • カスタディーヴァは3歳ののため、基本となる負担重量は52kg
  • カスタディーヴァは南半球であり、9月の負担重量の減算は2kg。さらに騎手藤田菜七子で、当時の負担重量の減算は3kg(当時は女性による減量はなく、勝利度数30以下の適用)。このため、負担重量が47kgとなった

現在であれば、負担重量は49kgになるはずである(52-2-4=46kgが、条件戦の負担重量49kgを下回るため)。

競走の延期の場合

災害や悪などが理由で、予定した通りに開催ができない場合が稀にある。この場合は、以下のルールに基づく。

負担重量の遵守と騎手の減量

先にも書いたとおり、負担重量が違うと競走馬が発揮できるに違いが出るため、負担重量の大半を占める騎手事前に定められた負担重量の通りに体重を調整する必要がある。

一例として、負担重量50kgのに乗る場合は、具も合わせて50kgになるよう50kgから少し減らして週末を迎える。そして、現体重より重い重量が課せられたに乗る場合は、プロクターを入れたり[1]、あるいは重さそのものが違うを使い分けたりすることで対応する。
その上で、競走前には「前検量」という、騎手だけでなく具も含めた重量の測定を行い、当然この中にはも含まれることから、「装所」でを装着する際は必ずこの検量をパスした係員が見届ける中で装着しなくてはならない。そして、競走で7着までに入着した騎手[2]は「後検量」を受け、そこで前検量との差がマイナス1kgをえた場合は失格となる。オーバー現在失格にはならないが、「注意義務を怠った」として告を受け、制裁点が累積したり、あまりにも回数を重ねると騎乗停止となる。また、返し馬で捨ててレースが終わったら拾うなどの行為を抑止するため、パドックで騎乗命が出たあとは、レースが終わり検量裁決室に戻ってくるまでは、体に故障を発生したなどの理由がない限り故意にを降りてはならない[3]

このため、騎手は日頃から食事制限を行い、水曜日にもなると勢なご馳走はもう食べられないともいう。中には武邦彦のように「アルコールカロリーを摂取し、固形物を口にしない」というレベルまで行う者もいる。また、調整ルームにはサウナが設けられていて、そこに入って体を絞る(「取り」)者も多い。

これらの通り、騎手ボクサー並みの体重制限の存在から小柄な方が有利に働きやすく、競馬学校入学時にも系で身長が高い者が弾かれるという話もある。また、加齢により減量が効かなくなり引退する者も多く、そうはならずとも健康を来す場合もある。武幸四郎は177cm騎手としては大柄で、過酷な減量により密度が老人並と診断されたことがある。アイルランドジョセフオブライエンイギリスダービーを始めとするいくつものG1レースに勝った一流の騎手であったが、180cmを越える長身からくる減量苦により22歳の若さ引退を余儀なくされた。

なお、海外競馬では負担重量に関しては事前に増える場合もあるし、後検量による失格の基準も異なる。これは催者により異なるので、気になる人は調べてみるとよい。いくつかの情報JRAが公開しているexit

関連動画

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関連項目

脚注

  1. *現在は重さごとに…との位毎に番色で色分けされたゴムパッドが使われているが、かつてはが使われていたため、プロクターは「ベスト」ともいわれる。
  2. *ただし、7着以内で際どい入線があった場合は、7着以内に入る可性のある騎手全員が対になる。
  3. *このルールがある関係で、覧・台覧競馬(競馬として行われた2005年天皇賞(秋)皇太子徳仁王台覧で行われた2007年2014年東京優駿)においては、勝ち騎手(それぞれヘヴンリーロマンス松永幹夫ウオッカ四位洋文ワンアンドオンリー横山典弘)は上から賓席に座る皇族に脱帽・最敬礼した。同じく覧で行われた2012年天皇賞(秋)においては、エイシンフラッシュに騎乗していたミルコ・デムーロが下してひざまずいて最敬礼した。この時は問題になったものの、悪意がないと判断され不問になっている。
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