清水エスパルス新スタジアム問題とは (シミズエスパルスシンスタジアムモンダイとは) [単語記事]

清水エスパルス新スタジアム問題とは、Jリーグに所属するサッカークラブ「清水エスパルス」のホームスタジアムである「IAIスタジアム日本平」の老朽化、特にアクセスの悪さを解消するための、新スタジアム建設を巡る一連の課題や議論の総称である。

サポーターからは「アイスタ」の愛称で親しまれ、その景観や臨場感が高く評価されている一方で、抜本的な課題解決のためにJR 清水駅東口エリアへの移転新設が長年議論されてきた。2025年 2月に候補地の地権者であるENEOSとの基本合意に至ったものの、巨額の事業費や事業方式など、実現に向けたハードルは依然として高い。

概要

清水エスパルスのホーム「IAIスタジアム日本平」は1991年に完成した日本初のサッカー専用スタジアムの一つであり、ピッチとの近さや富士山を望む景観などからサポーターの愛着は非常に強い。しかし、建設から30年以上が経過し施設の老朽化が進んでいるほか、最寄りのJR 清水駅からシャトルバスで20分以上かかるというアクセスの悪さが長年の深刻な課題となっている。

この問題を解決すべく、JR 清水駅東口の「ENEOS 清水製油所跡地」への新スタジアム建設構想が浮上。駅直結という最高の立地から大きな期待が寄せられたが、地権者であるENEOSとの交渉は難航。しかし、2025年 2月に土地利用に関する基本合意が結ばれ、計画は大きく前進した。

とはいえ、この計画は300億円を超えると見られる巨額の建設費が最大の壁となっている。静岡市は民間主導での建設（民設民営）を基本方針としており、より安価（約148億円）に済む既存のIAIスタジアムを大規模改修する案との比較検討も継続している。今後は、製油所跡地特有の土壌汚染調査や、事業を担う民間事業者の確保など、多くの課題をクリアする必要がある。

経緯まとめ

時期	主な動き・やり取り	関係性の変化・ポイント
～2022年	【新設案の本格化】 IAIスタジアム日本平のアクセスの悪さを解消すべく、JR 清水駅東口のENEOS 清水製油所跡地への新スタジアム建設が最有力候補として本格的に検討される。	関係者が「駅前スタジアム」という同じ方向を向き、計画が具体的に動き出す。
2023年	【巨額費用の表面化と交渉難航】新スタジアムの概算事業費が307億円と判明。同時に、地権者であるENEOSとの土地利用に関する交渉が難航していることが明らかになる。	財源確保のハードルと、計画の前提となる土地利用の不透明さから、実現性への懸念が大きく浮上する。
2024年	【改修案との比較検討】静岡市は、新設案（307億円）と、既存のIAIスタジアムを大規模改修する案（約148億円）の比較検討を継続。市長も財政負担の大きさから新設には慎重な姿勢を示す。	「新設ありき」だった流れが変わり、より安価な「改修」も現実的な選択肢として残る。ENEOSとの交渉は水面下で続く。
2025年 2月	【ENEOSとの基本合意】難航していた静岡市とENEOSとの間で、土地利用に関する基本合意が成立したことが判明。新設計画が大きく前進する。	計画の最大の障壁の一つがクリアされたが、市長は「すぐに発表できる状況ではない」と発言。土壌汚染調査など、新たな課題が残る。
現在	【民間事業者確保の段階へ】土地利用の目処が立ったことで、市の基本方針である「民設民営」を実現するための民間事業者を確保できるかが最大の焦点となっている。市は改修案との比較検討も継続中。	理想（新設）と現実（財政）の間で、解決の糸口を探る状況が続いている。

補足

ENEOSとの交渉難航と基本合意
駅東口案の最大の障壁は、候補地（約11.5ヘクタール）がENEOSの私有地であることだった。土地の取得や利用条件を巡る交渉は長年難航したが、2025年 2月に土地利用に関する基本合意が成立し、計画は大きく前進した。しかし、製油所跡地特有の土壌汚染調査（ENEOSの責任で実施予定）や浄化費用など、クリアすべき課題はまだ多い。
検討委員会と市民の意向
2023年に静岡市の「サッカースタジアム整備の方向性検討委員会」（学識経験者、経済団体、サポーターなどで構成）は、両案を比較した結果、「JR 清水駅東口への新設が望ましい」との結論をまとめた。また、市民916人を対象としたアンケートでは、約8割が既存スタジアムのアクセスの悪さを問題点として挙げ、約7割が駅東口への新設を支持するなど、新スタジアムへの期待が高いことが示された。
市民の財政負担への懸念
新設にせよ改修にせよ、多額の公費投入が見込まれるため、市民からは「そもそもプロスポーツチームの施設に税金を使うべきなのか」「子育て支援やインフラ整備など、他に優先すべきことがあるのではないか」といった、税金の使途に対する厳しい意見が根強く存在する。
既存スタジアム改修への批判
静岡市が既存のIAIスタジアムの大型ビジョン改修費（約1.3億円）を予算計上した際には、「ビジョンを改修するということは、当面新スタジアム計画は動かないということだ」といった批判的な声が一部のサポーターや市民から上がった。