麻呂眉(まろまゆ。麿眉とも表記する)、あるいは公家眉(くげまゆ)とは、小さかったり、位置が高かったり、円形だったりする特徴的な眉毛を表する俗称。
そういった眉毛が「公家っぽい」という印象からこのように呼ばれる。「麻呂」「麿」とは公家の一人称。
その印象の元になった、公家由来の実在した風習は「眉を剃りあげた上で、改めて墨で眉を描いたもの」である。そちらについては別途「背景」の節で詳述する。
だが、この「麻呂眉」・「麿眉」・「公家眉」はその風習をイメージしただけの単なる俗称であるため、本来の形式にとらわれず、「それらしく」見えるものならば広い範囲の対象に使用される。
例えば実在の人間の眉を評して「麻呂眉」と呼ぶ場合には、「(アイブロウペンシルで理想的な眉のラインを描くために)眉頭以外の眉毛を抜くか剃るかしてしまった人のすっぴんの顔(化粧をしていない顔)。眉頭にのみ眉毛が残った状態」などを揶揄して言う場合が多いようだ。
創作作品のキャラクターなどでも「麻呂眉」と呼ばれる例は多数あるが、実在の風習に沿った設定のキャラクターを除けば、「剃りあげられた後に描かれた眉である」と設定してある作品は少ない。
また眉毛が「小さい」あるいは「位置が高い」あるいは「丸い」とときにこう呼ばれやすいという傾向はある。だが、これらについて「どの程度そうであれば麻呂眉と呼ぶか」という明確な定義はない。そのため、キャラクターの眉について「麻呂眉だ」と感じる境界線はおそらく人によって異なる。
下記「背景」で述べるような実在した風習においては大きく丸く描かれることもあったようで、「小さい」という要素は必須のものではない。また「位置が高い」だけでは「麻呂眉」っぽさは少ない(ドナルド・マクドナルドの眉は高い位置にあるが、これを「麻呂眉」という人はあまり居ない)。
日本では、奈良・平安時代からの貴人の習慣・身だしなみとして「元々あった眉を剃って、墨などによってより美しい眉を描く」といったことが行われていた。このように眉を描くことは「線を引く」という言葉のように「眉を引く」、「引き眉」等と言い表される。類似のことは現在でも身嗜み・メーキャップの一種として広く行われている。
だがこの「描かれる眉」というものが公家の間では形式化していったようで、生来の眉毛の生えている位置よりも上方に描かれるようになり、また生来の眉毛と比べて、より円形に近い形に描かれた。こういった特徴的な眉は当初は天皇の元に昇殿することが許された者、すなわち殿上人の装いであったようで、「殿上眉」「天上眉」とも呼ばれる。ただし徐々に殿上人すなわち貴族・公家の間から、別の社会階級の人々の間へも広まっていったようだ。高い位置の眉は高眉や置眉とも呼ばれる。
このような眉の姿は、古くから残る人物画や、能面や人形などの造形物などから推し量ることができる。例えば戦国時代の女性、「お市の方」の肖像画においても眉が高い位置に描かれている。
そういった記録を見るに「額の高い位置に丸い殿上眉を描き、そして生来の眉毛の位置にも線状に眉が引いてある(あるいは生来の眉が残してある)」といった、言わば二重眉の状態のケースも認められる。これは殿上眉の習慣が究極に形式化した結果、「元あった眉の代わりに描く眉」といった元来の目的・性質が消失した例と言えるかもしれない。
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最終更新:2024/11/08(金) 16:00
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