爆弾低気圧(ばくだんていきあつ)とは、台風などに匹敵する暴風雨(暴風雪)を発生させる低気圧である。
これ自体は温帯低気圧に分類され、熱帯低気圧である台風とは性質を異にする。
概要
1980年にマサチューセッツ工科大学の気象学者フレデリック・サンダースらによって提唱された、比較的新しい気象の定義である。
現在の世界気象機関(WMO)が定義するところでは、計算式“24hPa×(sinφ/sin60°)”以上の中心気圧中心気圧の低下が見られた温帯低気圧(φは緯度)を指す。…なんのこっちゃってなるかもしれないし、日常生活でこの辺まできっちり覚えておく必要はないだろう。
とにかく、きわめて短時間の間に急速に発達する、台風とは違う低気圧は爆弾低気圧になるという認識を持っていればとりあえず大丈夫である。
被害
爆弾低気圧は冷たく乾燥した大陸性気団と暖かく湿った海洋性気団が衝突する大陸辺縁部の、特に東岸で、冬季に多く見られる現象である。
とりわけ冬から春にかけての日本列島では世界的にも爆弾低気圧の発生が多い環境にあり、台風とは異なりながらもその実台風とほぼ同じくらいの荒天を引き起こしては我々の生活に大きな爪痕を残してきた。
- “昭和45年1月低気圧”
1970年1月30日から2月2日にかけ、台湾付近で発生し北東進した低気圧が24時間以内に32hPaの気圧低下を起こし、日本内陸を縦断しながら暖気の流入によりさらに急速に発達、31日夜には中心気圧が962hPaにまで至った。
2022年1月現在に至るまで東北および北海道における観測史上1位の記録を持つこの爆弾低気圧により、特に東日本や北日本を中心に多くの場所で高波や暴風雪の被害が発生。最大瞬間風速36.7m/s(岩手県宮古市)、日降水量126mm(栃木県日光市)、日降雪量63cm(北海道札幌市)もの観測記録を出し、死者14人行方不明者11人と、多くの犠牲を生む大災害となった。
現在において爆弾低気圧による気象災害に気象庁が命名をしたのは、この昭和45年1月低気圧が唯一の事例である。 - 2012年4月2日の低気圧
中国大陸で発生した低気圧が北日本方面へ東進、日本海上で急速に勢力を発達させ、24時間で42hPaの気圧低下を起こした。
気象庁では早くからこの低気圧が台風並の勢力に発達する事を予想し、暴風や高波への警戒、外出の自粛を広く呼びかけた。この低気圧は日本列島全体に対して大きな影響を及ぼし、首都圏でも鉄道の運休などが発生。ただ、先の東日本大震災の教訓から多くの尽力により混乱が最小限に抑えられた。
死者5人、負傷者350人。
台風と比べ、同じタイミングで広い範囲に影響を及ぼすことと、大雪を伴い場所によっては大量の積雪をもたらすことが爆弾低気圧の恐ろしいところである。冬の嵐から春一番にかけての時期、気候の急変が予報される際には爆弾低気圧の発生についても視野に入れ、災害対策に取り組むことが重要である。
名称
英語では“bomb cyclone”。誰が言い出したかは不明瞭だが、手抜き直訳ながら爆弾がパワーワードであるために爆弾低気圧という名称が一頃を機に急速に広まった。
気象庁に曰く使用を控える用語ということで一般的な気象予報などではこの名称は用いず、急速に発達する(した)低気圧(気象庁)や、猛烈に発達する(した)低気圧(NHK)などと表現されることがある。
また一部のメディアでは猛烈低気圧と表記するなどし、読売新聞ではこれに言い換えて記載すると明言する記事を掲載したことがある。
ある意味ではゲリラ豪雨と似たような扱いの用語と言える[1]。ともに流行語になるほど現代すっかり普及しきった言葉であるが、歓迎されない背景がある事を考えるとこういった言い換えくらいはセットで覚えておいてもいいかもしれない。
関連動画
関連項目
脚注
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