もうお前も! 過去に囚われたまま戦うのはやめろ!
そんなことをしても、何も戻りはしない!
なのに未来まで殺す気か!お前は!
お前が欲しかったのは、本当にそんな力か!
この、馬鹿野郎!!!!!
「この馬鹿野郎!」とは古今東西の物語で頻出する罵倒・説教・苦悶の叫びだが、本稿ではアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する、アスラン・ザラ(担当声優:石田彰)のネット上でガノタのおもちゃと化したセリフについて解説する。
ちなみに上記引用セリフは2004年のテレビ本放送版のもの。現在ソフト化・配信されているHDリマスター版や、本放送版を再編集したスペシャルエディション版では細部の言い回しが異なっている(後述)。
恐らく、ガンダムSEEDシリーズを通したアスランの発言としては最も親しまれ(?)、ネットミーム化しているセリフ。主にふたば☆ちゃんねるで擦られ続けた結果ネットミーム化したとする説が強い。
「シン!!!何をやっているんだ!!!!聞いているのか!!シン!!!この!!馬鹿野郎!!!!!」のように、アスランの弟分のシン・アスカがやたらと「!」が多い迫真の文章で怒鳴られている(怒りの原因がシンの失態とは限らず、むしろシン関係ない話題でも怒鳴られていることが多い)構文の元ネタである。アスランは『SEED』『SEED DESTINY』を通して数回「馬鹿野郎」と言っているが、特に言及がない場合、ミームの元ネタは『DESTINY』最終盤で発せられたものになる。
アスラン・ザラというキャラクターは、基本的には冷静沈着で口数が少ないために誤解されやすく、しかし親しい人々の危機に際しては熱い心を見せる「やるときはやる」タイプのキャラであり、このような「常に威勢の良い熱血漢」ではない。こんなアスランが流行ってしまったのは、2010年末に稼働開始した対戦アクションゲーム『機動戦士ガンダムエクストリームバーサス(EXVS)』の演出が強く影響している。
同作におけるアスラン=インフィニットジャスティスガンダム(隠者)は、端的に言うと「器用貧乏が極まった、発展性に欠ける弱キャラ」であり、プレイヤー間の戦術考察は早々に煮詰まってしまった。やりきれない隠者ファンは、同作のアスランの声の演技が原作と比べて妙に叫びの圧が強く、熱血気味になっていることに着目し、隠者の扱いづらさを笑い飛ばすように「EXVSのアスランのセリフ」をネタにして楽しみ始めたのだった。
その後アップデートを受けて強キャラに変貌すると、一般プレイヤーにもアスランのやかましいセリフが認知され、「トゥ!ヘァー!」を中心にネタ化する流れが定着。2014年稼働のEXVSMBではボス仕様の隠者を発端とする「アスランはおもちゃじゃないんだぞ!」というネタも誕生し、本シリーズを発端に「アスランはネタキャラ」という風潮がより強まっていった。
なお、2017年稼働のEXVS2でセリフ配置が変わったのでかつてのやかましさは若干薄まっているが、2023年稼働のEXVS2OBになっても勝利時のセリフは無印の「この、馬鹿野郎!」から変わっていない。
また、『SEED DESTINY』が色々ととっ散らかった作品だったことを忘れたい、笑い飛ばしたい……という、当時リアルタイムで番組を追った視聴者のネガティブな心境も少なからず絡んでいると思われる。『DESTINY』のアスランは口下手で説明不足の割にシンをよく叱ったり(ミームでシンがよく怒られている遠因)、行動を自己完結して状況を悪化させる描写が多く、少し錯乱しているような迷走ぶりが目立っていた。加えて、最終回がどう見ても未完成な投げっぱなしエンドだったことで、当時のガンダムネットコミュニティは大荒れ。少しでも笑えるネタを見つけないと、作品自体の振り返りなんてやってられなかったのだ。
ちなみに『DESTINY』の結末は、本放送から3か月後に深夜帯放送された特別編で補完され、完全ではないにしろまとまった展開に訂正された。しかし当時組の全てがそれを追いかけたわけではなく、『DESTINY』に対してネガな印象が抜けなかったガノタも多かったのである(なお、2013年のHDリマスター版では本編と特別編を統合した新たな最終回が追加されているため、ここから『DESTINY』に触れた新規ファンの感想と本放送組の感想にはだいぶ差がある)。
かくして、やたらと「!!!!!!」をつけた迫真の文章で怒鳴るアスラン、というミームが誕生した。
以降は、『ガンダムSEED DESTINY』第50話/ 同リマスター版49話を鑑賞後に閲覧することを推奨します。 |
以下のセリフ引用はHDリマスター版・第49話準拠です。 だって本放送版は絶版になっちゃったんだもん…… |
ザフトのデスティニーガンダム:シン・アスカと、オーブ軍のインフィニットジャスティス:アスラン・ザラの激突が続く。大量破壊兵器レクイエムを巡るザフトとオーブ連合軍の戦いは佳境に入ろうとしていた。
僚機のインパルスガンダム:ルナマリア・ホークが中破し、激昂するシン。アスランはシンのがむしゃらな攻撃を防ぎ、彼に呼びかける。
母や幾人もの戦友を失ってきたアスランの叫びに、ハッとするルナ。
だが、家族や想い人を失い、戦友の願いを背負い、ギリギリまで追い詰められているシンは、己の最後のよすがであるデスティニープランへの妄執から離れられない。
……わかってる……わかってるさ!
だから世界はもう、変わらなきゃいけないんだ!
だからオーブは……討たなきゃならないんだぁっ!シン……!
シンの脳裏に、妹マユ・アスカと、ステラ・ルーシェの末期の声が響く。レクイエムでオーブを討つということは、彼女たちのような「力の犠牲者」をもっと増やすことになる。レクイエムによって世界に強制されるデスティニープランとは、結局のところ、未来を力で捻じ曲げているだけなのではないか……?
それぐらいはわかっている。だが、「それ」は……。
レイ・ザ・バレルの言葉が、シンの最後の力を暴走させる。
(「それ」は弱さだ。それでは何も守れない)
だけど……だけどぉぉぉっ!!!
掌底――パルマフィオキーナを煌かせて飛翔するデスティニーの前に、インパルスが割り込む。しかしシンの脳裏には、ステラ、マユ、インパルス(=ルナ)をまとめて焼き払おうとするフリーダムガンダムの幻影がよぎっていた。最早完全に錯乱したシンは、そのままインパルスに掴みかかろうとする。
うわああぁぁっ!ステラ! マユ!
やめろおおおおぉぉぉっ!!
アッ…!
――この、馬鹿野郎!!!
アスランはSEEDを発現させ、間一髪、デスティニーを押し戻す。デスティニーはジャスティスのビームサーベル2刀流をパルマフィオキーナで掴むも、耐えきれず両腕と翼が損壊。破れかぶれの右キックも、ジャスティスの脚部サーベルで防がれ、へし折られた。
翼と三肢を捥がれ月面に墜落するデスティニー。その瞬間、張り詰めていたシンの何かが解放された。シンの回収に向かうルナを見送ったアスランは、沈痛な表情のまま、オーブ軍本隊との合流を目指した……。
リマスター版第49話『最後の力』はここで終わり、最終話『選ばれた未来』に続くのだが、本放送版最終話『最後の力』ではこの後に「ミネルバ中破→ネオ・ジェネシス発射→シン・ステラ邂逅→メサイヤ炎上→レクイエム破壊→ミネルバ擱座→キラ・デュランダル対峙→デュランダル一家心中→music:君は僕に似ている~キラ脱出→DESTINY・完」という、ソードマスターキラ・ヤマトみたいな詰め込み展開が繰り広げられた。
セリフや間もだいぶ端折られており、例えば上記引用、錯乱したシンの叫びでは、本放送版だと「うわああぁぁっ!ステラ! マユ!」の部分は入っていない。発光信号を見つめるシンとルナも、オーブ・プラントの会見も、シンとキラの再会も、ラクスのプラント評議会招聘のシーンも、一切存在しない。
ついでに、アスランがミネルバの主機に止めを刺すシーンは、リマスター版では「グラディス艦長…」と悼んでいるが、本放送版では流れ作業のようにリフター突撃をかます血も涙もない描写になっている。
いつの間にかシン達ザフトが悪役側みたいになり、アスランやキラ、ラクス・クラインらの「ラクシズ」がやりたい放題で目的を達成(※実際のところはオーブ連合軍も多大な損害を受けている)して終わった感じ……の最終回が、当時の視聴者に悪い意味で衝撃を与えたことは言うまでもない。風呂敷を畳み切れなかった分、ソードマスターヤマトより下かもしれない。 このぶつ切り感漂う終わり方も、やたらと叫ぶアスランネタの誕生に一役かった……のかもしれない。
本放送版、特別編、そして本放送版+特別編を再編集して4分割したスペシャルエディション版では、アスランのセリフがそれぞれ微妙に異なっている(リマスター版の当該部分は基本的に特別編準拠)。
既に引用した前2つに続く、SPエディション版のセリフは以下の通り。
シン!やめろ!もうお前も!
過去に囚われたまま戦うのは、もうやめるんだ!
そんなことをしても、何も戻りはしない!
……なのに未来まで殺す気か!お前は!
お前が欲しかったのは、本当にそんな力か!
一連のアスランのセリフは、第17話『戦士の条件』から続く、シナリオ上のロングパスになっている。
第16話で、命令を無視して戦闘能力を失った敵兵を蹂躙したシンに対し、彼が誰かを守れる力を欲していることを察したアスランは、自分の経験を踏まえて説教をした(戦争はヒーローごっこじゃない!)。
だが、時代と情勢はシンから正常な判断力を奪い、盲目的に力に縋ろうとする馬鹿に変えてしまった。アスランがシンを必死に止めようとしていた展開も、このやり取りを前提として覚えておくと飲み込みやすいだろう。間隔が空きすぎて覚えていない視聴者も多いだろうけど
掲示板
10 ななしのよっしん
2024/04/27(土) 21:44:50 ID: DUpspPSxh0
因みにこの台詞、カガリが最初(先)だったりする
(アイツどんだけ好きなんだよ…w)
11 ななしのよっしん
2024/04/29(月) 12:53:07 ID: 2SZXf/qNac
掴んだのはビームサーベル二刀流じゃなくて連結ビームサーベルとビームシールドに付いたビームブーメランだぞ
根拠は
・パルマをシールドで止めるシーンで連結状態であること
・足を切るシーンでも一瞬だが連結状態であることが確認されること
・追加された納刀シーンで上記のブーメランもビーム消してること
12 ななしのよっしん
2024/05/01(水) 09:47:30 ID: oXWDlgb5lJ
なんやかんや言って、この2機のぶつかり合いは好き。
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最終更新:2024/05/22(水) 11:00
最終更新:2024/05/22(水) 11:00
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