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クロストリジウム・ディフィシル(ディフィシル菌)とは、一部の人が持っている細菌の一種。
だが時に重い病気を引き起こすことがある恐ろしい細菌でもある。
概要
クロストリジウム属と呼ばれるグループに属する細菌の一種。ちなみに同属の細菌としてはボツリヌス菌、破傷風菌、ウェルシュ菌などがある。
主に一部のヒト(人間)や動物の大腸に元々住んでいる細菌である。ヒトの場合、新生児や乳幼児、高齢者では保有率が高く(特に新生児は50%以上である)、逆に成人の保有率は1割にも満たない(ただし入院患者はもう少し保有率が上がる)。
同属のボツリヌス菌などと同様に芽胞と呼ばれるバリアを作れるため、防御力が非常に高い厄介な細菌である。高温(熱)や低温、乾燥、アルコール消毒、強酸(胃液)、強アルカリなどにも耐える。
普段はおとなしい細菌で特に問題を起こさないものの、病気の治療のために抗生物質(抗菌薬)を使用した際に腸内細菌のバランス(腸内フローラ)が崩れる(※)と一気に増殖し、偽膜性大腸炎という重い病気を起こすことがある。
※抗生物質を服用するとその病気の原因となった細菌を退治できるが、同時に大腸菌や乳酸菌など他の腸内細菌も死滅してしまうという罠がある(抗生物質を飲んだ後に下痢をしやすくなるのはこれが理由である)。逆にクロストリジウム・ディフィシルは(バンコマイシンなど一部を除く)多くの抗生物質が効かないという厄介な特徴がある。
偽膜性大腸炎
他の腸内細菌が死滅しクロストリジウム・ディフィシルが増殖することによって起こる重い大腸炎。
クロストリジウム・ディフィシルが出す毒素によって大腸の粘膜に偽膜(壊れた細胞や死んだ白血球などが固まってできた黄色い膜)を伴う炎症が起こるのが特徴である。
ただしディフィシル菌だけでなく、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など他の細菌が偽膜性大腸炎を起こすことも稀にある。
症状
抗生物質服用から数日〜数週間後に激しい腹痛や頻回の下痢、発熱などが起こる。重症の場合は大腸から出血して粘血便が出る(下血する)こともある。
劇症型の偽膜性大腸炎では激しい下痢による脱水症状、激しい炎症による麻痺性腸閉塞や中毒性巨大結腸症(大腸が正常に働かなくなりガスが溜まって膨らんでしまう病気)、大腸穿孔(大腸の壁に穴があく)などの重大な合併症を起こして死亡することもある。
特に高齢者や基礎疾患がある人(糖尿病、肝硬変、腎不全、心不全など)、免疫不全患者(エイズ、白血病など)は重症化のリスクが高いので警戒する必要がある。
治療方法
原因となった抗菌薬をすぐに中止し、クロストリジウム・ディフィシルに対して効果がある別の抗菌薬(バンコマイシンなど)を服用する。原則として入院治療となる。
多くの場合これで治るが、中毒性巨大結腸症や大腸穿孔などの合併症を起こした場合は緊急手術が必要になる。
また、最近では健康な人の大便を移植し、大腸菌や乳酸菌など他の腸内細菌を輸入するという治療も行われている。
関連項目
- 医学記事一覧
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)…クロストリジウム・ディフィシルと同様に、抗菌薬に対して耐性を持つ細菌の一つ。
- 感染症
- 胃腸炎、大腸炎
- 細菌
- 常在菌
- 芽胞
- ボツリヌス菌、破傷風菌、ウェルシュ菌…同属。
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