医とは、医者や医術のことである。
漢字として
医の旧字は醫で、現在使われている医は、この醫を略したものである(イと読む、匚に従う)。しかしこの略字とは別に医(エイと読む、匸に従う)という字がある。ここではその医と醫についてそれぞれ解説する。
医・醫(イ)
- 意味
- 旧字体は醫。
- 医者、医術、医療する、癒す、(醷と通じて)粥から作った甘酒、梅酢。
- 〔説文解字・巻十四〕に「病を治す工なり」と医者のこととあり、また「周禮に醫酒有り。古は巫彭初めて醫を作る」と、甘酒の一種とある。
- 字形
- 殹+酉の会意。解釈に諸説ある。
- 〔説文解字〕には二説載っている。一つは「殹、惡(みにく)き姿なり。醫の性、然り。酒を得て使ふ。酉に從ふ。王育の説」で、殹は醜い姿のことでそれが医の本性であり、酒を薬として使うので酉に従うとある。もう一つは「一に曰く殹、病む聲なり。酒は病を治す所以なり」で、殹は病気のときの声で、酉(酒)で治療を表すとある。
- ほかに、殹は矢を呪器として用いる儀礼を表し、また酒を使うので酉に従うとする説(白川静)などがある。
- 殹声の形声説もある。
- 医は俗字。
- 音訓
- 音読みはイ(漢音、呉音)、訓読みは、なおす、いやす。
- 規格・区分
- 医は常用漢字であり、小学校3年で習う教育漢字である。1946年に当用漢字に採用され、1981年に常用漢字になった。JIS X 0213第一水準。
- 語彙
- 医学・医者・医術・医生・医方・医療
異体字
- 醫は常用漢字表に参考字体として載っている。JIS X 0213第二水準。
- 毉は、〔集韻〕に醫と同じとある異体字。もともと毉が医師の意の字、醫が甘酒の意の字で、どちらも醫の字が使われるようになったとする説もある。JIS X 0213第四水準。JIS X 0212補助漢字。
- 醷、臆は、甘酒の意味での異体字。〔集韻〕に「或ひは醷に作る。亦た臆に作る」とある。
- 簡体字も医。
互換文字
- ㊩はUnicodeにおいて医と互換とされる字である。
㊩
- Unicode
- U+32A9
医(エイ)
- 意味
- うつぼ、矢を入れる箱、という意味がある。〔説文解字・巻十二〕に「弓弩の矢を盛るる器なり」「國語に曰く、兵は医を解かずと」とある。
- また翳と通じてかげり、という意味がある。
- 字形
- 匸+矢の会意。矢を隠すという字。
- 音訓
- 音読みはエイ(漢音)、訓読みは、うつぼ。
- 声符
- 医(エイ)を声符とする漢字には、殹などがある。
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