PC-88VAとは、日本電気(NEC)が発売したパーソナルコンピューターの機種である。
概要
1985年より、ホビーユースのパソコンとして業界のリーダーへと君臨したPC-8800シリーズであったものの、CPUはZ80A互換の8ビットCPUであったことと、グラフィック性能も他社製8ビットPCにも劣る部分が目立つようになり、性能面の限界に達していた。
そこでステップアップのため、CPUの16ビット化とグラフィックの強化を施したPC-88VAを開発することとなった。
PC-88VAは1987年3月に発売。
i8086およびV50をベースにしつつZ80Aのエミュレーションを可能にしたμPD9002(8MHz)を採用することで、従来のPC-8800シリーズとの互換性も維持された。
グラフィックでは、家庭用ゲーム機に組み込まれているスプライト機能を搭載、最大で65536色の表示を可能とした。
ただしサウンドはYM2203で、後にPC-8801MA/FAに組み込まれるYM2608ではなかった。
フロッピーディスクは、5インチで最大2HDまで対応していた(PC-8801MH/MA相当)。
OSはMS-DOSのほか、N88-BASICフォーマットとの互換性も維持されたPC-Engine(NECのゲーム機とは別物)という独自OSも付属した。
翌年には、サウンド機能としてYM2608を搭載したVA2、さらに3.5インチ2TD(9.3MB)対応ドライブを採用したVA3が発売された。
しかし、PC-88VAは期待されるほどの成功は収められなかった。
特に重視されていた互換性についても、8ビット機互換モードであるV1/V2モードも不完全で、VAで動作しないアプリケーションも存在した。
また、同じインテル系の16ビットCPUを搭載するPC-9800シリーズとの互換性は元々想定していなかった。
価格もPC-8800シリーズよりも10万円高い設定は、従来のユーザーが二の足を踏むものとなった。
一方で、同時期に発売されたシャープ「X68000」は、価格こそPC-88VAよりも高価であったものの、当時のアーケードゲームをほぼ忠実に再現できるほどのCPU性能、グラフィック、サウンド機能を備えており、本格的なゲームPCを求めるパワーユーザーはこちらを選択するようになっていた。
とどめを刺すように、PC-8800シリーズのゲームを開発していたソフトハウスの多くは、16ビット化のターゲットを、国民機として程度普及していたPC-9800シリーズへとシフトした。
そのころになると、PC-9800シリーズでも10MHz以上のi80286CPUを最低でも搭載、ミドルクラスではi386へシフトしており、VAの処理性能を上回っていた。グラフィック機能も十分な高速表示に対応したEGCを組み込んでいたことで、ソフトウェアの工夫次第でスムーズなスクロール表示にも対応できたのである。
完全に「中途半端」な位置になってしまったことで、PC-88VAシリーズはわずか2年で幕を引くこととなってしまった。
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