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ニルマトレルビル(Nirmatrelvir)とは、抗ウイルス薬である。ニルマトレルビル錠とリトナビル錠をセットにしたパキロビッド®パックは、SARS-CoV-2感染症の治療薬である。
ニルマトレルビルは、3C様プロテアーゼ(SARSコロナウイルスメインプロテアーゼ)阻害薬である。アメリカ合衆国の製薬企業ファイザーが開発した。ウイルスのプロテアーゼ(タンパク質のペプチド結合を加水分解する酵素)と共有結合し、タンパク質の合成を阻害することでウイルスの増殖を抑制する。
パキロビッド®は、ニルマトレルビルとリトナビルをセットにしたSARS-CoV-2感染症(COVID-19)治療薬である。2022年2月に特例承認された。リトナビルは抗HIV薬(HIVプロテアーゼ阻害薬)だが、薬物代謝酵素CYP3A4によるニルマトレルビルの分解抑制(作用増強・持効化)を目的としている。これら2種類の薬剤を同時に内服する。
パキロビッド®パックに入っているリトナビルは、薬物相互作用の報告が多い。一部の高血圧症治療薬、抗不整脈薬、催眠薬、抗不安薬、抗真菌薬、健康食品などとの併用ができない。普段から使用している医薬品・健康食品がある場合、お薬手帳を活用するなどして医師や薬剤師に確認すること。
機序は不明だが、喫煙(タバコ)はニルマトレルビル/リトナビルのAUCを低下させる(≒効果を弱める)おそれがある。
SARS-CoV-2感染症(COVID-19)治療に用いられる抗ウイルス薬(抗体医薬を含む)を参考程度にまとめておく。実際にどの医薬品が推奨されるかは、患者の年齢や重症度、重症化リスク因子の有無、入院の要否、感染している変異株の種類などによって異なる。
販売名 | ベクルリー® | ロナプリーブ® | ゼビュディ® | ラゲブリオ® | パキロビッド® |
---|---|---|---|---|---|
一般名 | レムデシビル | カシリビマブ イムデビマブ |
ソトロビマブ | モルヌピラビル | ニルマトレルビル リトナビル |
承認 | 2020年5月 | 2021年7月 | 2021年9月 | 2021年12月 | 2022年2月 |
薬価 | 1バイアル 61,997円 |
未収載 | 未収載 | 1カプセル 2,357.8円 |
1シート 19805.5円 |
分類 | 低分子医薬 | 抗体医薬 | 抗体医薬 | 低分子医薬 | 低分子医薬 |
作用機序 | RNA合成酵素阻害によるウイルスRNA合成抑制 | スパイクタンパク質結合による細胞内侵入抑制 | スパイクタンパク質結合による細胞内侵入抑制 | RNA合成酵素阻害によるウイルスRNA合成抑制 | プロテアーゼ阻害によるウイルスタンパク質合成抑制 |
剤形 | 注射剤 | 注射剤 | 注射剤 | 経口剤 | 経口剤 |
適応 | 治療 | 治療・発症抑制 | 治療 | 治療 | 治療 |
用法用量 | 初日200mg 2日目以降100mg 1日1回3~10日間点滴静注 |
600mgずつ混合 単回点滴静注 or 単回皮下注 |
500mg 単回点滴静注 |
1回800mg (1回4カプセル) 1日2回5日間内服 |
NMV 300mg† RTV 100mg 1日2回5日間内服 |
小児 | 体重3.5kg以上なら投与可 (用量調節必要) |
12歳以上かつ体重40kg以上なら投与可 | 12歳以上かつ体重40kg以上なら投与可 | 小児投与不可 18歳以上のみ |
12歳以上かつ体重40kg以上なら投与可 |
妊婦 | 有益性投与‡ | 有益性投与‡ | 有益性投与‡ | 禁忌 (胎児毒性) |
有益性投与‡ |
備考 | 重症例に投与可。 COVID-19治療薬のうち最も使用経験が豊富。 |
オミクロン株に対しては中和活性が低下するおそれがある。 | オミクロン株に対しても中和活性が維持されると考えられる。 | 経口のCOVID-19治療薬としては併用禁忌薬が少ない。 | 腎機能や肝機能を考慮して投与する。† CYP3A阻害による薬物相互作用がある。 |
†中等度の腎機能低下(eGFR 30-60mL/min)例ではNMVを150mgに減量して投与。重度の腎機能障害患者への投与は非推奨。
‡有益性投与:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与。
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最終更新:2025/01/08(水) 09:00
最終更新:2025/01/08(水) 09:00
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