上方落語として始まり、後に江戸に伝えられたとされる。しかし、舞台は地方巡業をメインとしており、上方落語では高砂(兵庫県高砂市)、江戸落語では銚子(千葉県銚子市)が舞台となっている。なお、登場する提灯職人の徳さん、七兵衛はそれぞれ大坂、江戸の人物である。
ちなみに、花筏という四股名の相撲取りは江戸に実在したらしいが、この噺ほどの地位はないどころか、2年で廃業したと伝わる。また、戦後に花筏健という十両力士がいたが、落語好きが高じて、この題目の花筏を四股名としたという。
人気もさながら強さも確かな最強の大関「花筏」、次の巡業ではこの花筏を見ようと、地元は大いに盛り上がっていた。しかし、困ったのは興行側であり、花筏が急病に倒れ、四股を踏むことすらできないという。そこで、顔が瓜二つという、都一番の提灯職人で大柄な巨漢「徳さん」(江戸落語では「七兵衛」)が呼ばれることになった。
しかし、困ったのはこの徳さん、体は大きいだけで、決して力自慢でもなく、相撲なんてとんでもないと一旦は断る。しかし、1日の日当を、提灯張り1日分の仕事の2倍出す、しかも土俵で土俵入りの真似事だけすればいいという。加えて、酒は飲み放題、ごちそうは食い放題という身分だといい、それならと徳さんは了承することにした。
かくして興行が始まった街では花筏を一度見ようと押すな押すなの大盛況、病につき土俵入りだけでもお構いなし、徳さんの周りには若い女性もすっかり取り囲み、徳さんはすっかり有頂天になってしまった。そんなこんなで千秋楽、なんと土俵入りの真似事だけする予定だった花筏の取り組みが予定されていたのである。しかも相手は千鳥が浜という、玄人跣の怪力の男、震え上がった徳さんは「話が違う!」と文句を言う。
しかし、男はこう言い、非は徳さんにもあった。なぜなら、病人という触れ込みなのに、日夜酒を飲み食い、剰え興行主の娘にまで夜這いを仕掛けてしまったのだという。それを指摘した主から理由を聞かれ、仕方なく「病も癒えて元気になったんだろう」と言い訳を作ると、それなら取組も大丈夫だろうと、成り行きで相手が決まったのだという。それを聞かされた徳さんはすっかり自分の軽率な行為を悔やみ、そして涙ぐむが、男はわざと組む振りをして無様に転倒したらいいと吹き込む。聴衆は「やはり病を推して土俵に出ても無理だったか、それでも我々のために土俵に立ってくれてありがたい」と反応し、花筏の名誉にも傷は付かないと断言する。
一方、明日が大関花筏の取組が決まったと意気込む千鳥が浜、彼は明日も勝ってみせると父親に伝えるが、父は一言「親の心配も気にせず、明日の取組に出るなら勘当だ」と言い切った。それなら仕方なく諦めるが、それでも「せめて土俵入りだけは間近で見たい」と懇願し、それだけならと父親も了承し、お互い二人は夜を迎えた。
かくして当日、今までと明らかに雰囲気が違う徳さんは、思わず震えが止まらなくなり、滂沱と涙を流し、念仏まで唱えてしまう。すると、勘当の約束を破ってまで念願の土俵に立った千鳥が浜も、その念仏を聞いてしまい「相手は本気で、自分は殺される」と戦慄するや、同じくこちらもすっかり萎縮してしまった。二人の様子を怪訝そうに見守る行事だが、いざ取組が始まると、徳さんは我に返ってこける振りをして、思いっきり突っ張った。すると、それがすっかり縮み上がっていた千鳥が浜に直撃、彼は思わず張り倒されてしまう。それを見ていた観衆は大喜びで囃し立てる。
(下げ)…張るのが上手いのも無理はない、彼は提灯職人でございます。
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最終更新:2024/04/27(土) 12:00
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