Me163 コメートとは、第二次大戦中ドイツが世界で初めて実用化した唯一のロケット戦闘機である。
コメートはドイツ語で「彗星」を意味する。
ロケットを推進力とする航空機の開発はリピッシュ博士によって1920年代から始められていた。
メッサーシュミット社と組んだリピッシュ博士は1938年に試作ロケット機「DFS194」を開発、後にこの試作機はMe163と名称を改められる。
最初期型であるMe163Aは1941年の滑空テストで855km/hを記録。
滑空とはいえこの時代で800km/h越えの達成は十分偉業だが、改良型ロケットエンジンを搭載し、機体各部を再設計されたMe163Bはなんと1011km/hという驚異的なスピードを叩き出し、高度1万mまでの上昇時間はおよそ3分半と凄まじい性能を発揮した。
ドイツ空軍主力であるBf109の最高速度が600km/h台であったことを考えるとその速さがよく分かるだろう。
また、武装も30mm機関砲を2門装備しており、「空の要塞」の異名をとるB-17を数発でバラバラにできたという。まさに空の通り魔である。
第二次大戦の戦闘機としては速力・火力が突出しており、その性能に驚嘆したドイツ航空省は1941年制式採用した。
さて、驚異的な性能が決め手となり制式採用されたMe163であったが、いくつもの重大な欠点を抱えていた。
よく挙げられる欠点として、ロケットの推進剤として使われる「HWK-R1」の危険性がある。
この推進剤は、高濃度の過酸化水素(T液)と、メチルアルコール・ヒドラジンの混合液(C液)から構成されているのだが、どちらも人体には猛毒な液体であり、常に爆発の危険性をも持つという、そもそも戦闘機の推進剤には不向きなんじゃないのコレ、と疑問を投げかけたくなるようなシロモノなのだ。
実際「HWK-R1」は人体を溶かすほどの威力があり、
「防護服を着用していたにもかかわらず、パイロットの右腕は完全に溶けていました。左腕と頭は、柔らかいゼリーの塊のように見えました」
という悲惨な事故を起こしてしまっている。
他にも
など推進剤絡みだけでいくつもの欠点を抱えている。
また、機体側にも問題が多く
運用に苦労した割には戦果が出せず、
戦後連合国の調査でも性能は目を見張るものがあるが実戦向きではない、との評価を受けている。
日米ソ英仏でもロケット戦闘機の研究は為されたがどれも試作・実験機止まりであり、結局ロケット戦闘機はMe163の他に実用化されることはなかった。
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最終更新:2024/12/21(土) 23:00
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