モルト(銀河英雄伝説) 単語

モルト

2.3千文字の記事

モルMort)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。

CV.鈴木勝美(石黒監督OVA)、麻生智久Die Neue These

概要

銀河帝国軍人・中将。重厚で古な初老の軍人で、とりたてて用兵に優れる人物ではないものの、忠実で信頼できる人物とみなされていた。

リップシュタット戦役時、ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥の麾下でオーディン留守部隊指揮官を任される。戦役終結後には新憂宮の警備責任者を務めるが、皇帝エルウィン・ヨーゼフ2世誘拐事件の際、責任を取って自裁した。

経歴

リップシュタット戦役

帝国488年、リップシュタット戦役の勃発にあたってラインハルトオーディンを出撃した時、都に残された留守部隊指揮官たるを任されたのがモル中将である。その的は、幼エルウィン・ヨーゼフ2世の住む新憂宮、元帥府、軍務省、そしてラインハルトアンネローゼ・フォン・グリューネワルトの居館であるシュワルツェンの館の警護であった。

モルトの麾下には3万の将兵が属したが、この兵力は護るべき皇宮上軍中枢の重要性とべてわずかといってよく、事実上、ラインハルトは出征にあたって都をにしたものと言える。敵する門閥貴族側の統制が全く取れておらず、信頼関係の欠如ゆえに敵別働隊によって都が襲撃を受けることはありえない、という的確な敵情判断ゆえの兵力配置であった。

リップシュタット戦役終結時にはラインハルト麾下の諸将によるオーディン再制圧が発生しているが、留守を預かるモルトがなんらかのかたちで関与したかどうかは記述がなく不明。ただし、襲撃を受けた宰相府や宰相リヒテンラークラウスの居館は、いずれもモルト登場時の具体的な警護対としては挙げられていない施設である。

幼帝誘拐

戦役後も、モルトは一切の落度なくあたえられた任務をはたしつづけた。このあいだ帝国489年7月ごろまでに、新憂宮の警備責任者を務める立場として、都防衛官に着任したウルリッヒ・ケスラー大将揮下に入っている。

しかし7月6日、警備本部付属の宿舎で就寝中だったモルトのもとに異変ありと急報が入る。モルトはすぐさま皇宮にかけつけ、うろたえるばかりの老従に幼エルウィン・ヨーゼフ2世の安否を確認したが、きわめて婉曲に伝えられた返答は、7歳の幼は侵入した賊に拉致された、というものであった。

彼は老従を一言叱責してから箝口を要し、部下には宮殿内の捜索を命じた。広大な宮殿敷地内の捜索は、残留熱量の測定による不審な行跡の発見という成果をあげはしたものの、行跡は皇帝ジギスムント1世の像のもとで地上から消えていた。外部への隠された地下道の存在が想定されたが、現場の兵士の権限では皇帝像に手を出すことはできなかった。そして宮殿敷地の地下は、過去5世紀にわたる数の宮廷陰謀と疑心の結果として数の抜けが建設され、巨大な迷宮となっていたのである。彼は、幼の身がもはや自分の手から離れたことをさとった。

翌日未明、モルトは通報を受けたケスラーとともに、皇帝誘拐ラインハルトに謝罪すべく元帥府に出頭する。その場でラインハルトから同日正午に処分が通知されると伝えられ、それまで執務室での謹慎と身辺整理を命じられた彼は、命に隠された暗示に感謝の色すら浮かべて退出し、1時間経たないうちに自ら命を絶った。死後、ラインハルトの次席副官リュッケ大尉事後処理を任され、モルトの名誉と遺族を保護するよう、とくに命じられた。

幼帝誘拐の裏事情

この幼誘拐は、その実、エルウィン・ヨーゼフ2世を排除するためフェザーンラインハルトがほとんど共謀するかたちで発生したものであった。フェザーンが旧門閥貴族亡命者をオーディンに潜入させ、ラインハルトはこれを黙認し、監視を解いて間接的に支援しさえしていた。

しかしその過程で、皇帝の身辺警護を担う警備責任者であるモルトは犠牲とならざるをえない身であった。この点は事前オーベルシュタインから摘されたが、敵には容赦のないラインハルトも、忠実な味方であるモルトを死なせることには抵抗を感じずにはいられなかった。しかし、古モルトはたとえ赦されても好意に甘んじたがらないだろう、という進言を受け、ケスラーなど他の責任者にまでは累を及ぼさない、と条件を付けて彼に責任を取らせることを肯んじるにいたったのである。

モルトの謝罪を受けたときも、怒る資格を持たないラインハルトはただ無表情のままだった。この段階でもやはり罪悪感は禁じえなかったらしく、モルトの死後に名誉と遺族の保護を命じたときには「これははなはだしい偽善ではないか」と感じながらも、何もやらないよりはまし、罰せられるべき行為であればいずれむくいがあるだろう、と思いめぐらしていた。

副官

モルトの登場は上記の2回だが、その双方に副官が登場するため特記しておく。同一人物かどうかは不明。

リップシュタット戦役開戦時の登場では、ラインハルト麾下の大艦隊の出撃にあたり、モルトは「副官らとともに」敬礼で見送ったと記述されている。

誘拐時には、皇帝拉致を知ったモルトが副官に宮殿内の捜索を命じている。非常事態を知り顔色を変えて命を受けた副官は、自ら兵士揮して捜索にあたった。副官はやがてモルトのもとにかけもどり、不審な行跡の発見を報告するとともに、ジギスムント1世像への対処について許可をもとめている。

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最終更新:2025/12/28(日) 19:00

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