スウィープフィート(Sweep Feet)とは、2021年に生まれた日本の競走馬である。栗毛の牝馬。
馬名の由来は「sweep off feet(心奪われる)より。母系より連想」(JRA競走馬情報より)
通算成績6戦2勝[2-2-1-1]
主な勝ち鞍
2024年:チューリップ賞(GⅡ)
父:スワーヴリチャード 母:ビジュートウショウ 母父:ディープスカイという血統。
父は2018年の大阪杯と2019年のジャパンカップを制したハーツクライ産駒。2023年から種牡馬としてデビュー間もなくから驚異的な勝ち上がりを誇り、既に産駒のレガレイラが2歳G1を制するなど飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している。
母のビジュートウショウは11戦1勝(2着1回)だが、母の母にG1を3勝した名牝スイープトウショウ、4代前にを遡ると欧州最強とも名高い凱旋門馬「踊る勇者」ダンシングブレーヴ、また更に遡ると昭和の時代の日本を幾度も熱狂させる名勝負を演じたTTGの一角、天馬トウショウボーイまで入る良血馬であり、オープン馬として既にビジューブリランテも排出している今は亡きトウショウ牧場が遺した名牝系である。
また母父のディープスカイも2004年キングカメハメハ以来、史上2例目となるNHKマイルカップ、東京優駿を連勝し「変則2冠」を成し遂げた名馬であり、冷静に考えれば日本競馬に燦然と輝く良血馬といえる。
当馬の母はトウショウ牧場解散に伴ってノーザンファームに売却されるも、2020年のノーザンファーム繁殖牝馬セールにてスワーヴリチャードの子を胎内宿した状態で550万の価格で聖心台牧場に購入される。[1]
その後、腹の中にいた子は2021年4月5日に誕生……しかし誕生直後に急いで馬房に駆けつけるも生まれたはずの子馬の姿はなく、家族総出で厩舎内を探すも見つからない。すでに日暮れあとの雪も降りしきる夜に「もしや」と思い車に乗って探し始めたところ、ヘッドライトに照らされた向こうに彼女の姿があったという。
生まれたばかりの子馬が立ち上がるどころか、どうやってか厩舎から抜け出して、こちらを見ていななきもすることなく、雪の中を堂々と立っているとかいう、なんか某ウイニングポストの誕生イベントみたいな誕生秘話に牧場関係者は「ひょっとしたら特別な馬になるのでは…」と思ったそうな。
そんなこんなで翌年の2022年のサマーセールにて上場した彼女を350万(税込み385万)にてYGGオーナーズクラブが落札。ニコニコ的にはリアルダビスタ企画出身のモーメントキャッチが所属するクラブとして知られる。
当時は他に競りかける声もなく一声で落札が決まる程度には見栄えのしない馬体だった様子。今や種付け料が200万から1500万に大幅値上げされたスワーヴリチャードの産駒が、デビュー前とはいえ破格の値段で売りに出され、かつ主取り寸前だったのだから馬産の世界は何が起きるかわからないものである。
母父のディープスカイが基本的にダート馬しか出さないパワー系種牡馬だったり、結局は社台に見切りを付けられた牝馬と思われてめちゃくちゃ侮られてたっぽいのは秘密。
その後、この見た目のあまりよろしくない牝馬はYGGオーナーズクラブでは本馬を990万円(19800円×500口)という比較的懐に優しいお値段で募集されるも、やっぱりなんかコロっとした馬体で走りそうに見えず、血統面から気性の荒さも心配されたことから一次募集では満口にならず。
ただ調教開始後に育成牧場から「乳酸値が上がりにくい(=ハードな運動をしても筋肉が疲労していない)」という情報が発信されるや、あっという間に募集は満口へと到達、競走馬としてのデビューに向けて日々坂路を走り続けるのであった。この時、出資を様子見していた会員たちが判断が遅かったことを後悔するのはまだ先の話である。
なおスワーヴリチャードでの産駒を管理していた庄野調教師の厩舎への配属は早い段階から決まっていたようだが、セールで競り落とされた本馬を見た庄野先生が自分から管理させてほしいと逆アピールしたという噂もあるのだが…もしかしたら、庄野はこの時点から既にこっそり自身が管理していたスワーヴリチャードの子で重賞、あるいはG1制覇をという野心の炎をこっそり燃やしていたかもしれない。なんか未勝利戦勝ち時点ですごいクラシック意識した発言しまくってたし、なんかすでにフラグ立ってきたな…
やたら評価とテンションが高いクラブのSNSを尻目に育成は順調に進み、育成牧場からも思ったよりも素直でカーっとなることはあるけど制御不能までは行かずに走れる子と評価され、また不安視されていた馬体もこの頃から急激な成長をとげて相当に動きがよくなっていたことが会員向けに報告されている。
ただし非常に前進気質が高くなっており、坂路を走り出すと調教なのに抑えるのが難しいくらい燃え上がる部分はこの当時から顔を見せていた模様。
そして年は空けて2023年3月、生まれて初めての北海道から京都への移動を経験、体重が20キロほど減ったものの、飼葉食いが細くなることはないため短期間に体重を戻している。
その後、京都府の宇治田原優駿ステーブルでの育成を経て、晴れて同年の4月に栗東・庄野厩舎に入厩、競走馬としてのキャリアの第一歩を踏み出すことになる。
早速、競走馬としてのデビューのための準備としてゲート練習に勤しむことになるのだが…
とにかく走るのが好きすぎるがために早く出たくて飛び出そうとする姿勢があり、ゲート試験でも縛られた状態でなんとか合格はしたはいいが、ストレスからくる皮膚病+体重も20キロ以上落とすという見るも無惨な姿で帰ってきたのであった。なお体重は1週間放牧にだしたらだいたい元通りになったので、特に育成に対する影響はなかった。
その後も燃え上がりすぎないようにゆっくり調教が行われ、調教で見せる前進気質から庄野調教師は彼女の初戦として短距離戦を選択、8月13日(日) 小倉6R 2歳新馬 芝1200m戦に永島まなみ騎手騎乗でデビューした。
なお、この時は減量の恩恵を受けることができるということで起用された永島まなみ騎手であったが、これが以降の約1年間を共に過ごすことになる最初のパートナーとの出会いであった。[2]
レース当日は3番人気となったが12頭立てのレースの中11番という大外枠、このときは大きな出遅れもなく順当に先行位置を追走、4コーナーから懸命に位置をあげていくも最終直線で前2頭の加速についていけず4.5馬身ほど離れての3着。
とはいえ初戦としては決して悪くない内容という評価で、大跳びで切れると言うよりはジリジリ脚を使うタイプという印象を受けた永島騎手の提言もあり、広い馬場となる京都マイル戦へと方針を転換することになる。なおこのレース時は大外からまくりあがっての、上がり35.1秒のタイムを出せてはいたが、上位2頭はそれを上回るタイムを出したため、追いつけない結果であった。[3]
そして迎えた2戦目は10月8日の京都2R 2歳未勝利 牝馬限定 芝1600m戦に登録、距離は前走の1200mから400m伸びた1600mとなり初のマイル戦を経験することになる。
枠順はまたも12頭立ての10番と外枠、スタートは相変わらずあまりよくないものの先頭集団に取り付く形、道中は行きたがるスウィープを抑える永島騎手とのせめぎあいを 若干かかり気味にぶんぶん頭を振ってまるで獅子舞状態しながらも、中段後方にやや下げつつも脚を溜める走りで追走、最終直線でその脚をついに解き放ち、最期は競りかけるウインディオーネとの激しい追い比べを制し念願の初勝利となった。
そして3戦目、この勝利でクラシック戦線でも通用すると判断した運営は次走に2歳1勝クラスの牝馬限定の1600m戦、白菊賞を選択。ここで賞金を重ねて2歳GⅠへの挑戦を目指すことになる。
スタートは前回以上の出遅れから最後方2番手を追走、レースは序盤からハナを切って逃げて展開を作るなか、4コーナーからスウィープフィートは一気に進出を開始、ジワジワと位置取りをあげつつ最終直線で溜め込んだストレスをぶつけるかのように急加速して最後方強襲!
しかし逃げるプシプシーナも必死に逃げ粘る!ゴールまであと100を切った地点で2番手を追走していたヒヒーンを間に挟んで交わし、先頭プシプシーナに迫るスウィープフィート……だが、結果はプシプシーナにクビ差届かずの2着に惜敗…
賞金額的に阪神JFの出走に黄色信号が点灯してしまうも、前残りの展開となったレースに対し京都の下り坂の勢いはあるとはいえ世代最速級の上がり33.1秒の豪脚を披露、タイム差なしのクビ差は、この馬の本来の強さの片鱗を見せるレースとなったのであった。
さて、残念ながら賞金額を詰めなかったスウィープフィートであったが、抽選突破に賭けて阪神ジュベナイルフィリーズへ特別登録、また抽選漏れになったときのための保険として朝日杯フューチュリティステークスへも同時登録することになる。
この当時の有力馬として既にG2アルテミスSを制して早くも世代トップと目されるチェルヴィニア、牝馬ながらG3サウジアラビアRCで2着に入った強豪ボンドガールが体調不良により回避を表明。最終的に空いた4枠を抽選対象9頭が争う結果となるが、無事当選し関係者の大きな期待を背負ってGⅠの大舞台へと赴いた。
一方で同じく阪神JFで抽選対象になりつつも抽選に漏れたタガノエルピーダは、牝馬ながら同時登録していた朝日杯FSへと出走し3着という結果を残した。後にこの両者は再度ぶつかることになる。
そして迎えた阪神JFで当日、スウィープフィートは鞍上の永島まなみ騎手のG1初騎乗ということや、白菊賞で見せた末脚を評価されて若干の注目を集めるが、9番人気と穴候補として見られる程度の評価であった。
JRA女性騎手が若手ながらレジェンド武豊のように若くして初G1制覇を果たす…もしくは好走して掲示板に入るくらいはできるかもしれない…G1という舞台は決して甘くないということは頭では理解しつつも、スウィープフィートを応援する出資者、ファンはそんな淡い期待を抱いていたかもしれない。
が、現実は想像以上に厳しかった。ゲートが開き各馬スタートしたなか一頭だけ出遅れ、先頭集団から話された距離をカバーするために位置取りをあげて中段少し下げた位置をキープ、最終コーナーでは無理に大外をまわる。迎えた最終直線、淀の坂を最期まで足を使って後方から大きく位置を押し上げるものの、先頭争いをする3頭からは大きく離されての7着…
1着のアスコリピチェーノは無敗かつレコード勝利、2着ステレンボッシュと3着コラソンビートまで4着以降に大きな差を空けての勝利であった。2歳シーズンで挑んだ最初のG1競争の壁は想像以上に分厚かった。
年は空けて2024年、年末にGⅠを無事走り終えたとはいえ、賞金額は未勝利戦の400万のみのためなんとかして賞金を重ねないとクラシック戦線には参戦できない状態に変わりはない。ここは何としても賞金を重ねないといけない陣営はエルフィンステークス(L)を選択する。
初勝利を収めた京都の地、そして白菊賞の時に見せた脅威の末脚をもう一度繰り出して今度こそクラシックへの下積みを得たかったレースもまた悔しい結果に終わってしまった。
レースではスタートは相変わらずよくないものの、中盤前に位置取りをややあげにいって先行位置へ。
前走の苦い経験からか、もしくはスウィープフィートの馬場の悪さをものともしないパワーを信じてか、荒れがちの内馬場を選択したが、結果的には本馬のみが荒れた内ラチ側を走ったことでやや伸びを欠き、ゴール直前に勝馬のライトバックに差し切られての痛恨のクビ差2着。
この際の上がりタイムは出走メンバーの中で第2位の34.2秒を記録しつつも、またもやあと一歩のところで掴めそうな勝利を逃す悔しい結果となり、実際に現地にいた際に感じた自分を含む出資者や関係者の空気はだいぶ重苦しいものだった…
勝利必須のエルフィンステークスで敗北を喫してしまった陣営に残された選択肢は少なかった。悲願のクラシック制覇に向けて桜花賞トライアルのチューリップ賞(GII)を選択、そして鞍上はこれまでの全レースを担当していた永島まなみからレジェンド武豊への乗り替わりを発表。
これは今年の牝馬クラシックに乗る特定の馬がおらず、たまたま当日の予定が空いてた武豊への依頼で偶然に近い形で成立したコンビであった。また、この乗り替わりに関してはこれまでずっと乗ってきた永島騎手からの乗り替わりは、若手騎手の育成を軽視して強奪するような形に見えなくもなく、色々と賛否両論あったが、それはまた別の話…
さて騎乗依頼を受託した武豊騎手、権利取りといえばな騎手ということで世間の評価は単純な鞍上強化と見る動きが多かった。
そしてチューリップ賞本番の一週間前に初めてスウィープフィートにまたがり調教に参加することになるのだが、「調教の動きも良かったですし、思っていた以上に良い馬だと感じました。走りそうですね」とかなりの高評価。
また自身のオフィシャルサイトのコラムにも「この馬に優先権を取らせてあげたいというよりも、ボク自身の桜花賞の騎乗馬を確保できるように頑張ります。」と記載しており、かなりの期待を寄せていたものと思われる。
こうして関係者からの多くの期待が募るなか始まったチューリップ賞当日、スウィープフィートは5番人気で出走することになる。
当日の1番人気は奇しくも阪神JFで抽選に漏れて朝日杯FSで牝馬ながら3着に入ったタガノエルピーダ、アルテミスSで3着のスティールブルー、無傷の三連勝で桜花賞への切符を狙うミラビリスマジック、あの世界最強馬イクイノックスの妹半妹ガルサブランカと続く人気順。
ここでもスウィープフィートは穴人気、もしくは1歩劣ると評価されながらも馬自体はパドックで鉄柵を蹴って甲高い音をたてたりとかなり荒ぶっていたが、前走の疲れはなく毛艶もよさそうだった。
そして始まる最重要トライアルのチューリップ賞、桜花賞への切符を賭けてすべての陣営が必勝を掲げる中で、スウィープフィートのスタートは相変わらずよくなかったが、ゆったりとゲートを出して後方3番手を追走。
好スタートを切ったのは7番人気のワイドラトゥール、そしてワイドラトゥールを交わしてハナに立つのは9番人気セキトバイースト、それに続いてエラトー、タガノエルピーダ、スティールブルー、ミラビリスマジックなども高位置をキープ。
スウィープフィートは14番手の位置をじっくりと走りながら、これまでになく折り合いのついた状態でリラックスして走り、先行馬たちの背後をじっと外目の位置を維持。
そして迎えた4コーナーで一気に外に持ち出した状態で最終直線に突入、コーナー抜けた位置でやや外によれたイツモニコニコに煽られつつも、外から一気に溜め込んだ足を解き放つ。それは奇しくも祖母スイープトウショウがチューリップ賞に挑んだときと同じ、14番手から一気に他馬を飲み込む後方強襲で、前の13頭をわずか1ハロンでまとめてごぼう抜きにする強烈な末脚だった。
最終的には先頭を走っていたセキトバイーストが逃げ粘るも、前上がり最速34.3秒[4]の末脚を発揮、1と1/4馬身差をつけ勝ち時計1分33秒1での完勝であった。
なお本レースは2着に9番人気のセキトバイースト、3着に15番のハワイアンティアレとなったことで、3連単が1,693,290円の大波乱を巻き起こし、チューリップ賞の史上最高配当となっている。
また庄野調教師の誕生日であり、師にとっても初G1馬をもたらした思い出深いスワーヴリチャードの娘による重賞制覇[5]、馬主のYGGオーナーズクラブにとっても現名義になってから初の中央芝重賞制覇に加えて初のクラシック挑戦権の獲得[6]、今回テン乗りとなった武豊騎手もレース後には「ね? いい馬でしょう」と語り、牝馬クラシックに挑戦可能なお手馬を手に入れることができたし、現地に駆けつけた脳を焼かれた出資者たちも悲願の勝利と、関係者全員が笑顔のチューリップ賞であった…あと何故か直後の阪神12Rに騎乗予定だった池添騎手が、直前の10Rで手を負傷したので乗り代わっていた。
レースが終わって3日後には鞍上武豊騎手の続投も決定、桜花賞も同じコンビで乗り込むことになる。
これまでのレースではほとんどかかり気味で走り続け、なかなか結果に繋がらずそこまで高い評価を得られてなかった本馬には1人の出資者としては歯がゆい思いが長く続いていた。それがここにきてクラシック戦線の主役候補に名乗りをあげたのはかなり大きな出来事だったりする。
本場の名前のスウィープフィート(sweep off feet)の由来としては「心奪う」だが、実は原文には(人)の足をさらう、(人)をなぎ倒すという意味があったりする。
近年はトライアルから桜花賞本番に挑む馬から勝者はでていないとのことだが、前有利のチューリップ賞を後方から差し切った馬としてはハープスターやブエナビスタなどの大物も多くでているし、桜花賞本番でも名前のとおりに上位馬の足元を救う活躍をしてほしいなぁ、と彼女の一口持ってる一口馬主の1人は夢想したりするのである。
| スワーヴリチャード 2014 栗毛 |
ハーツクライ 2001 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | |||
| アイリッシュダンス | *トニービン | ||
| *ビューパーダンス | |||
| *ピラミマ 2005 黒鹿毛 |
Unbridled's Song | Unbridled | |
| Trolley Song | |||
| *キャリアコレクション | General Meeting | ||
| River of Stars | |||
| ビジュートウショウ 2011 栗毛 FNo.[5-j] |
ディープスカイ 2005 栗毛 |
アグネスタキオン | *サンデーサイレンス |
| アグネスフローラ | |||
| *アビ | Chief's Crown | ||
| Carmelized | |||
| スイープトウショウ 2001 鹿毛 |
*エンドスウィープ | *フォーティナイナー | |
| Broom Dance | |||
| タバサトウショウ | *ダンシングブレーヴ | ||
| サマンサトウショウ |
クロス:サンデーサイレンス 3×4(18.75%)、Lyphard 5×5(6.25%)
スウィープフィートに関するニコニコ静画のイラストやマンガを紹介してください。
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最終更新:2025/12/16(火) 03:00
最終更新:2025/12/16(火) 03:00
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