多とは、おおいこと、たくさんを表す漢字である。
数
一般言語
一般言語では、数がおおいことを意味する。対義語は「少」。
何をもって「多」とするかは主観により、一概に決めることはできない。
数学・物理学など
「通常より多い」の意味で使われる。通常1つであれば2つ以上、2つであれば3つ以上である。
対義語は、2以上を「多」とする場合は「単」または「一」。それ以外は場合による。
例えば、xを1つ決めればyがただ1つ決まるのが通常の関数だが、yが2つ以上決まる関数を「多価関数」という。また、通常「真」「偽」の2値である真理値をもっと多くして考えるのが「多値論理」である。
一方、「任意の自然数」という意味で使われる用法もある。この場合「1」も「多」である。
これは、数が1つであるか2つ以上であるかという議論に意味が無い場合に用いられる。
例えば、「多角形」は「n角形(n∈ℕ)」という意味であり、「一角形」を多角形に含まないわけではない。ユークリッド平面には存在しないが、その他の平面には存在することがあり、その場合は「一角形」も「多角形」である。
また、中学や高校の数学の教科書では、「単項式」と「多項式」を分けて考えているが、より高度な数学では「多項式(多項式関数)」は「指数関数」などと対立する関係であることが多く、単項式を分けて考える意味は薄い。従って、「単項式」は「多項式」に含まれる(高校の教科書では「整式」といわれる)。
例えば、計算理論において「多項式時間」という用語があるが、時間の関数が単項式で表せるとしても「多項式時間」である。
人名
多氏
古代豪族の多(おお)氏は神武天皇の皇子、神八井耳命の後裔とされるものの、確実なことは不明。カバネは朝臣。大和国十市郡飫富郷(現奈良県磯城郡田原本町)発祥とされる。
多氏は畿内、九州に勢力を持ち、その後宮中で雅楽の奏者である楽家として続いた。鉄道唱歌の作曲者、多梅稚は多氏の末裔である。また、古事記を書き記した太安万侶も多氏の一族とされる。
多はウジであり、多入鹿であれば「おお・の・いるか」と所属を表す「の」を入れて呼称するのが正しい。現在の苗字としての多姓はその名残で多くが「おおの」と読む。
実在の人物
- 多入鹿(759年 - 816年) - 平安時代初期の公卿
- 多梅稚(おおの うめわか、1869年 - 1920年) - 明治時代の作曲家
- 多自然麿(? - 886年) - 平安時代初期の雅楽師
- 多忠亮 - 大正時代の作曲家
- 多忠修 - ジャズミュージシャン
- 多忠麿 - 昭和、平成の雅楽師
- 多品治(おお の ほんじ、? - 696年) - 飛鳥時代の人物
その他
- 多 - 『ファイアーエムブレムif 暗夜王国』のラスボスの俗称
漢字として
- 意味
- おおい、おおく、まさる、戦功。
- 〔爾雅・釈詁〕に「眾(衆)なり」とある。
- 字源
- 夕を重ねた会意。夕は肉を表している。供える肉が多いことから多いの意味となった。炙の上が肉を表しているのと同じ。
- 〔説文解字〕には「重ぬるなり。重夕に从(したが)ふ。夕なる者は、相ひ繹(たづ)ぬるなり、故えに多と爲す」と、夕が重なった構成の字とし、繹と夕が畳韻であることをもって解釈している。また「重夕は多を爲し、重日は曡を爲す」とあり、夕を重ねたのが多で、日を重ねたのが曡としている。
- 音訓
- 音読みはタ(漢音、呉音)、訓読みは、おおい、まさる。
- 規格・区分
- 常用漢字で、小学校2年で習う教育漢字である。1946年に当用漢字に採用され、1981年に常用漢字になった。JIS X 0213第一水準。JIS X 0213第一水準。
- 部首
- 〔説文解字〕では部首である。多のほか夥、𡌪、㗬の合わせて4字を収める。
- 声符
- 多を声符とする漢字に、侈、卶、垑、哆、陊、姼、迻、栘、移、眵、趍、誃、鉹、䡔などがある。
- 語彙
- 多寡・多感・多岐・多士済々・多重・多少・多情・多数・多大・多聞・多量
異体字
- 𡖇は、〔説文〕に「古文の多」とある異体字。夕を横に並べた字。
- 𡖈は、〔集韻〕に「多:古、𡖈に作る」とある異体字。
- 𡖩は、〔字彙補〕に「音義多と同じ。〔海篇〕に見ゆ」とある異体字。
- 𢑑は、〔字彙補〕に「古文多字」、〔康煕字典〕に〔字学指南〕を引いて「多に同じ」とある異体字。
- 夛は、俗字。JIS X 0213第二水準。
- 𢑰は、〔字彙補〕に「音義多と同じ」とある異体字。
- Unicode
- U+591B
- 部首
- JIS X 0213
- 1-52-76
- 夕部
- 画数
- 6画
関連項目
- 2
- 0pt