音のない世界
気圧もなく
酸素もない
宇宙で生命は存続できない
ゼロ・グラビティ(原題 "Gravity")とは、2013年年末に公開された宇宙事故を題材としたパニック映画である。米英合作。91分。3Dカラー作品。
概要
監督は『トゥモロー・ワールド』『ハリーポッターとアズカバンの囚人』で有名なアルフォンソ・キュアロン。
第70回ヴェネツィア国際映画祭のオープニング作品となり8月に上映された後、10月4日に全米公開、遅れること2ヵ月後の12月13日に日本上陸となった。
ストーリーは宇宙に放り出された飛行士が様々なトラブルを乗り越え、地球に帰還できるかを非常に緻密な心理描写と特殊撮影で描く。随所に『エイリアン』『2001年宇宙の旅』などのオマージュが見られるが、参考とした作品としてはロベール・ブレッソンの『抵抗 死刑囚の手記より』という作品から全体的構想のヒントを得たという。
本作の最大の特徴は「一体どうやって撮影したのかわからない」と観客誰もに思わせる宇宙の描写で、アメリカ映画にありがちな「宇宙空間で音がする」「無重力描写の無視」といったSF的な発想を払拭するリアリティで、キュアロン監督お得意の長回しに始まり、事故発生時の地球とのやり取り、飛行士視点からのカメラアングルによる3D映画ならではの「観客への事故体験」とも言える強烈な回転映像、マニュアル本やコンピューター画面に至るまで本物と見間違うばかりソックリに造られたステーションや宇宙船の内部など徹底的なまでに『実在の宇宙』を観客に体験させている点である。当然ながら、冒頭にもあるとおり、「宇宙空間は音が無い世界」なので、スペース・デブリの衝突場面も無音の破壊が続くという人間の声以外しない無音の恐怖映像が繰り広げられ、音楽も極力使われない。また「宇宙では支えなしに止まることが出来ない」ので、延々と暗闇を飛び続ける映像が流れている。かのアポロ11号の乗組員にも「本当の宇宙に限りなく近い」と言わしめている。
このリアルな映像には同業の監督からも賞賛の声が相次ぎ、宇宙映画を数多く手がけたスティーヴン・スピルバーグやジェームズ・キャメロンもこの技術力の高さと演出美を高評価している。他人の映画をあまり褒めないことで有名なクエンティン・タランティーノですら2013年のベスト10に選んでいる。
その数多くの賞賛は賞レースでも十分に見返りを受け、第86回アカデミー賞に最多ノミネートされ、監督賞、撮影賞、作曲賞、編集賞、視覚効果賞、音響編集賞、録音賞を受賞している。
ちなみに、『ゼロ・グラビティ』は日本独自に付けられた邦題で、原題は「ゼロ」とは付かない。直訳すると「重力」と意味が真逆となってしまうが、この元タイトルの意味は映画を最後まで観るとよくわかるだろう。
あらすじ
宇宙空間で船外活動を行っていたライアン・ストーン博士とマット・コワルスキー、シャリフの3人は
ロシアの人工衛星爆破のミスにより発生した大量のスペース・デブリに巻き込まれ、シャトルを破壊され、宇宙空間に放り出されてしまう。
指揮官のマットと共に生き残ったライアンは何とか地球への帰還を試みるため、地上への通信を行うが、通信衛星も破壊されたことで通信不能となる。
国際宇宙ステーション(ISS)を目指し遊泳を続ける二人だったが、ステーションの船体に阻まれたマットは、ライアンを地球へ帰還させるため、自ら犠牲となる。その後も宇宙船の故障、ステーションの火災、更なる宇宙ゴミの襲来といったトラブルがライアンを襲い、精神的にも極限まで追い詰められていく。しかし、その時彼方に散ったはずのマットが現れ・・・
果たして彼女は無事生き残り、この奇想天外な旅を終えることができるのであろうか?
登場人物
・ライアン・ストーン (演:サンドラ・ブロック)
本作の主人公。医療技師で、ハッブル宇宙望遠鏡の修理などを行っていた。
初の宇宙ミッションで思わぬ事故に巻き込まれ、何度も打ちひしがれそうになるが
マットの懸命な励ましと生への強い執着心から何とか地球帰還を試みる。
女性なのに『ライアン』という男性的な名前なのは父親が男の子を望んだため。
過去に出産暦があり、娘が一人いたが、鬼ごっこで頭を打って亡くなってしまったという。
・マット・コワルスキー (演:ジョージ・クルーニー)
もう一人の主人公。今回のミッションの指揮官を務める。
会話好きなようで、事故前も地上管制官とプライベートの出来事をいろいろと話している。
宇宙遊泳の世界記録を破るという夢があった。
司令塔としても優秀で、事故に巻き込まれた直後のパニックになったライアンに的確な指示を送り
その後も絶望から生きる意欲を失いつつあった彼女に様々なアドバイスを送る。
しかし、 ISSに到着した直後に姿勢制御不能に陥り、ライアンを救うためその身を漆黒の彼方へと投げ出した。
・シャリフ (声:ファルダット・シャーマ)
今回のミッションに同行した男性。冒頭で茶目っ気を見せるが、かなりの高学歴である。
最初のスペース・デブリの襲撃で命を落とし、生き残った二人が遺体回収を試みるが
シャトルの乗組員が全滅したことに加え、ISSまで運ぶことは不可能と判断され、遺体は宇宙に放置された。
・NASA地上管制官 (声:エド・ハリス)
地球のヒューストンから飛行士にミッションを送っていた。
ロシアの人工衛星爆破を当初はミッションに影響しないとしていたが
実際には連鎖的に衛星が破壊され、交信断絶にまで陥る大惨事となってしまった。
・アニンガ (声:オルト・イグナチウッセン)
地球に住む一般市民。おそらくアマチュア無線家。
宇宙船『ソユーズ』から発せられたライアンによるAMのメーデー信号を偶然傍受した男性。
しかし、 地球では上空彼方の絶望的な出来事など知る由もなく、ライアンの通信を単なる冗談だと思っていた模様。
イヌと赤ちゃんが家にいるようである。
その正体はスピンオフムービーで明らかになるのだが、本編未見の人は観ないほうが楽しめるだろう。
特殊撮影とゼロ・グラビティ
どうやって撮影したのか?と言われる本作だが、意外にも(?)メイキングはYouTubeなどで世界中に公開されており、新聞などのインタビューでも撮影の種明かしをしている。
宇宙空間の描写には『ライトボックス』と名付けた撮影装置を発明。仕組みは60cm四方のパネル196枚から成る高さ6m、縦横3mの直方体にLED電球4096個を埋め込んであり、中の俳優に当たると光線が宇宙と同じように変化する仕組み。俳優の目線の先にある地球や宇宙船を自在に投影することも可能。各機器は自動制御で動き、各機器はシンクロして動作する。と、インタビューで答えている。なるほど、まったくわからん。
この複雑な装置のため、演技者にも正確かつミスのない絶妙なタイミングが必要になり、何度もリハーサルを重ねた後に撮影している。
宇宙船やステーションでの移動場面では女優の身体にワイヤーを装着し、操り人形師がワイヤの上げ下げの操作機器を担当し、別のスタッフ二人が身体の向き、動きを担当するという、かつてゴジラ映画などで用いられた操演特撮のような手法を用いている。ちなみに、この機構はかなり役者に負荷がかかるらしく、メッチャ痛いらしい。鍛え上げられた肉体を持ったサンドラ・ブロックだったからこそ可能だったという。
パロディ
2014年のエイプリルフール企画のひとつに映画.comが行ったものの中で
ふなっしー主演映画がいくつか掲載され、そのうちのひとつが本作のパロディ映画「ゼロ・フナビティ」というものだった。
ゆるきゃらが宇宙空間で生きていけるのであろうか?
是非とも本物を見てみたいものである。
関連チャンネル
関連動画
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関連コミュニティ
ゼロ・グラビティに関するニコニコミュニティを紹介してください。
関連項目
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