いわきFC新スタジアム問題とは、Jリーグに所属するサッカークラブ「いわきFC」が、その驚異的なスピードでのカテゴリ昇格にスタジアムの整備が追いついておらず、将来的なJ1リーグ昇格に必要不可欠なスタジアム基準を満たしていないことに起因する課題の総称である。
クラブの急成長というポジティブな要因から生まれている問題であるが、2025年3月に建設候補地が小名浜港周辺に絞り込まれ、計画は新たなステージに進んでいる。
概要
いわきFCは、福島県社会人リーグからわずか数年でJ2リーグまで駆け上がった、Jリーグでも類を見ないスピードで成長を遂げたクラブである。しかし、その急成長ゆえに、ホームスタジアムの整備が常に後手に回ってきた。
現在のホームスタジアム「ハワイアンズスタジアムいわき(いわきグリーンフィールド)」は、J3昇格に合わせて改修されたものの、J1ライセンス基準で定められた収容人数(1万5千人以上)や観客席を覆う屋根の設置率などを満たしていない。そのため、クラブは将来的なスタジアムの改善を約束することを前提に、例外的にライセンスの交付を受けている状況にある。
この問題を解決すべく、クラブといわき市は2031年シーズンの完成を目標とした新スタジアムの建設構想を進めている。2025年3月には、建設候補地をいわき市小名浜港の区域(アクアマリンふくしま隣接地)とすることを発表。これは単なるサッカー場ではなく、東日本大震災からの復興のシンボルとして、また、いわき市の新たな賑わいの拠点となる多機能複合型スタジアムを目指す壮大な計画である。
候補地は具体化したものの、これから事業費や財源確保、津波対策といった課題について、市民や県を巻き込んだ合意形成を図っていく必要があり、今後の動向が注目される。
経緯まとめ
| 時期 | 主な動き・やり取り | 関係性の変化・ポイント |
|---|---|---|
| ~2021年 | 【クラブの急成長】 福島県リーグからJFLまで、毎年カテゴリを昇格する驚異的なスピードで成長。この間、主にJヴィレッジスタジアムなどで試合を開催。 |
クラブの成長スピードがインフラ整備のそれを上回り、将来的なスタジアム問題が必至の状況となる。 |
| 2022年 | 【J2昇格と現在のスタジアム】 J3優勝を果たし、J2へ昇格。ホームスタジアムを改修した「いわきグリーンフィールド(ハワイアンズスタジアムいわき)」に本格移転。 |
J2ライセンスは取得したものの、スタジアムがJ1基準を満たしていないことが明確な課題として表面化する。 |
| 2023年~2024年 | 【新スタジアム構想の具体化】 クラブといわき市が連携し、2030年代の完成を目指す新スタジアム構想を公に議論し始める。復興のシンボルとしての位置づけや、多機能複合型を目指す方針が示される。 |
クラブと行政が同じ方向を向き、長期的な視点でのプロジェクトとして協力関係を構築。他のクラブに見られるような対立構造にはなっていない。 |
| 2025年3月 | 【候補地の決定】 クラブが記者会見を開き、新スタジアムの整備候補地をいわき市小名浜港の区域(アクアマリンふくしま西側の県有地)とすることを正式に発表。2031年シーズンの完成を目指す。 |
長年の懸案だった候補地が具体化し、計画が「構想」から具体的な「計画」へと大きく前進する。 |
| 現在 | 【計画の深化と課題の表面化】 候補地決定を受け、クラブ、市、県が連携し、具体的な計画策定を進める段階に入る。一方で、津波への懸念や交通アクセス、財源確保といった課題もより明確になっている。 |
J1ライセンスの例外適用を受けながらJ2で戦い、クラブの価値を高めつつ、スタジアム計画の進展を待つという状況が続いている。 |
補足
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市民との協力的な関係
他のクラブで見られるような行政との対立や、市民からの強い反対運動はなく、むしろクラブ、行政、市民が一体となって「いわきの未来のためにどんなスタジア-ムが良いか」を考える前向きな議論が進んでいる。中高生などの意見を取り入れる「ユースフォーラム」が開催されるなど、市民参加型のプロセスを重視している点が特徴である。
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「試合のない日」の収益化構想
従来のスタジアムの課題である「稼働率の低さ」を克服するため、スタンドの一部を5階建ての複合施設(ビルディング棟)とする計画を掲げている。ここにオフィスや商業施設、学習・イベントスペースなどを誘致し、試合がない日も年間を通じて収益を上げるビジネスモデルを目指している。
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津波懸念と防災拠点化
候補地の小名浜港は沿岸部であるため津波への懸念が指摘されている。これに対し、クラブや市は最新の技術で安全性を確保するとともに、スタジアム自体を災害時に市民が避難できる「津波避難ビル」として機能させることで、地域の防災機能を高める構想を示している。
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交通アクセスの課題
候補地周辺は市内有数の観光・商業エリアだが、公共交通機関が十分ではなく、試合開催日の大規模な観客輸送や、それに伴う交通渋滞、駐車場不足などが大きな課題として認識されている。
関連リンク
- いわきFC オフィシャルサイト
- いわきFC新スタジアムの整備候補地について - いわきFC公式サイト (2025年3月28日)
- 「いわきFC新スタジアムに係る今後の進め方」に関する共同記者会見を実施 - いわきFC公式サイト (2025年5月21日)
- Jリーグスタジアム基準|Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)
- いわきFC 民設民営でスタジアム整備へ 本年度は建設場所選定・資金調達の議論を - いわき民報 (2024年5月4日)
- 【いわきFC】新スタジアム「小名浜整備」への期待 - 政経東北 (2025年7月2日)
- いわきFCの新スタジアム 子ども・若者から意見 多彩な発表寄せられる - いわき民報 (2023年10月15日)
- 【福島・いわきFC新スタジアム】アクアマリンふくしま西側駐車場が候補地 - 建設通信新聞 (2025年3月31日)
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- なし
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