アフロ・アジア語族(Afroasiatic)とは、語族の一つである。
概要
主に西アジアからアフリカ北部・東部・チャド湖周辺地域にかけて話されている/いた言語を含む。かつては「セム・ハム語族」と称されたため、セム語、ハム語といえばピンと来る人もいるかもしれない。ヒエログリフや楔形文字でおなじみのオリエントの古代語たちの多くがこの語族に属する。
この語族の祖先である「アフロ・アジア祖語」はおそらくエチオピア高原で用いられていたと考えられている。この地域にはオモ語派(Omotic)とクシ語派(Cushitic)の言語が多く分布しているが、そのような多様性が示されることがその根拠とされる。
エチオピア高原を離れた一部のアフロ・アジア語族の話者集団はその後、中央アフリカのチャド湖地域(チャド語派 Chadic)やナイル川下流のエジプト(エジプト語派 Egyptian)、さらに北アフリカ(ベルベル語派 Berber)、西アジア(セム語派 Semitic)へと拡散する。またセム語派の話者はさらにアラビア半島から紅海を越えて再びエチオピア高原へと侵入した(セム語派エチオピア・セム語グループ Ethiosemitic)。アラビア語(Arabic)もイスラームの拡散に伴い北アフリカを含む広範囲に拡大している。
分類
既に述べたように、かつては「セム・ハム語族(Semito-Hamitic)」ないし「ハム・セム語族(Hamito-Semitic)」と呼ばれていた。その頃の理解では、この語族はセム語派(=現在のセム語派)とハム語派(Hamitic、現在のエジプト語派・ベルベル語派・チャド語派・クシ語派・オモ語派)に2分されると考えられていた。
これに対して、ハム語派と呼べるような分類群は成立しないとして提案されたのが、現在受け入れられているセム語派、エジプト語派、ベルベル語派、チャド語派、クシ語派(クシュ語派)、オモ語派の6語派に分類する学説である。ただしこの6語派に分類する学説にも異論はあって、特にオモ語派に関しては、これをクシ語派に含むという考え方もあれば、そもそもアフロ・アジア語族ではないとする説も存在する。また各語派内部の分類についても最終的な解決を見たわけではなく、最も研究の進んでいるセム語派ですら議論が続けられている。
以下に現在受け入れられているアフロ・アジア語族内部の系統関係を示す。
| 語派 | 言語名 | |||
|---|---|---|---|---|
| オモ語派 | ||||
| エリトリア語派 | クシ語派(クシュ語派) | |||
| ノルエリトリア諸語 | チャド語派 | |||
| 北アフロアジア諸語 | セム語派 | |||
| エジプト語派 | ||||
| ベルベル語派 | ||||
特徴
- 通常2~3の子音から構成されて意味の核となる「語根」と、それを当てはめる型となる種々のパターンや接辞からなる、鋳物のような形態法を持つ
- 子音は咽喉音か有声音の連続
- 母音は本来は/a/,/i/,/u/の3つ
- 名詞の女性は-at
- 名詞の接頭辞にm-がある
- 活用は単数1人称:a-、2人称:ta-、3人称男性:ya-、3人称女性:ta-、複数1人称:na-などの人称接尾辞からなる
関連商品
アフロ・アジア語族全体を扱った概説書。
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 6
- 0pt

