概容
1907年に発表。同年に発表した『蒲団』と並び、自然主義文学の最初期の作品とみなされる。
あらすじ
文学者杉田古城はかつては人気を博した小説家であったが、今ではすっかり文壇から見放され、その無骨な容姿と甘ったるい少女趣味の作風とのギャップを嘲笑される身である。そんな彼の日々の楽しみは、新体詩を賦することと、通勤の途中で見かけた少女を観察したり、時には後をつけたりすることだった。
美しい少女を見かけるたびに、少女の境遇を想像したりして悶々とし、どうして若い時分にこういった少女と恋をし、肉を味わって来なかったのかと後悔をしたりしていた彼は、ある時電車の車中で少女の観察に夢中になるあまり急ブレーキに反応できず車外へ飛び出し、折悪しく通りがかった対向電車に轢かれ死んでしまうのであった。
解説
真面目に解説しようと思えば、都市化と電車とか近代の恋愛観における霊肉問題とか自然主義文学がどうのこうのとか色々テーマはあるのだが、とりあえず言いたいのは、田山先生、赤裸々すぎます、という事。
着物の盛り上がった胸元を見て中身を想像してドキドキしたり、つり革につかまって露わになった二の腕の白さにトキメいたり、落し物を拾ってあげた相手が「これで自分の事を意識したに違いない」と妄想したりと、一部男子諸兄は身に覚えがあるであろう描写が溢れており、今も昔も変態男性心理は変わらないという事を確認させてくれる作品である。
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関連項目
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