本当は綺麗事が良いんだもんとは、
仮面ライダークウガ:EPISODE41『抑制』で語られた、五代雄介の心の声である。
概要
女優になることを夢見る女性「朝日奈 奈々」は、尊敬していた演技の先生を未確認生命体=グロンギに殺されてしまう。無念の死を遂げた先生の為にも努力を重ねていた奈々だが、彼女が受けたオーディションの課題は「好きな人を目の前で未確認生命体に殺されたときの芝居」だった。更に、同じオーディションを受ける女性から「実際に先生を殺された経験が演技の役に立ちそうで良かったね」という旨の悪質な嫌味を吐かれてしまう。
その嫌味に深く傷ついた奈々は、普段の朗らかな様子からは想像できないほど激怒し、
「誰かを殺してやりたいと思ったことってある?」、「(嫌味を吐いた女性を)引っ叩きにいってもいいですよね!?」
などと発言するが、奈々の知人である五代雄介=仮面ライダークウガは、
「許せないねそれは……」「だから行くべきだと思う!」と、奈々の憤りに共感しながらも、
「でも、おれはこれ(拳)を使ってすごく嫌な気持ちになった。大事なのは『間違えてる』ってことを伝えることじゃないかな?」「こう(殴)したら、こう(殴)来るかもしれないだろ?そしたら、またこう!こう!(殴り合い)ってならない?」 と続け、暴力を振るっても問題は解決しないことを伝えようとした。
彼は悪質なグロンギとの戦いで憎悪に支配された経験があり、憎しみに支配されたまま暴力を振るうことの危険性と虚しさを、身を持って味わっていたのである。
しかし、雄介がクウガとしてグロンギと戦っているという事情を知らず、彼のことを暴力とは縁遠い気楽な人間だと思い込んでいた奈々は、雄介の言葉を誰にでも言える他人事の慰めと受け止め、「さっきから五代さんの言ってること、綺麗事ばっかりやんか!!」と絶叫してしまう。
雄介は「うっ……そ、そうだよ!」と彼女の指摘を半ば認めながらも、「でも!だからこそ現実にしたいじゃない!本当は綺麗事が、いいんだもん!!これ(拳)でしかやり取りできないなんて、悲しすぎるから!」と語った。
誰よりも暴力を嫌いながら、人間と同質の存在であるグロンギを殺害する形でしか人々の笑顔を護れない雄介。彼は自分の言葉や考えが綺麗事に過ぎないことを自覚しながらも、奈々が暴力に手を染めたり、言葉で分かり合える人間との対話を拒絶することを善しとはしなかったのである。
幸い、雄介の痛切な言葉は奈々の心にも届き、彼女は暴力的衝動を押し殺して件の女性と対峙。対話の末に和解を成し遂げている。
……また余談だが、最終決戦の最中に変身を解除された雄介は、涙を流し、悲痛な泣き顔を浮かべていた。綺麗事が通じないグロンギとの闘いの中、彼は常に流される涙を仮面で隠していたのかもしれない。
関連項目
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