AIM-9 サイドワインダーとは、アメリカで開発された赤外線誘導空対空ミサイルである。
概要
第二次世界大戦直後に米海軍によって開発が開始された。弾頭の赤外線シーカーがターゲットのジェットエンジン排気口の赤外線を検知する。後には検知する波長がジェット排気煙の領域まで広げられ、ターゲットの真後ろからでなくても発射できるようになった。多くの国に輸出され、いくつかの国では独自に発展させた(日本のAAM-1、イスラエルのシャリフ)。ソ連はAIM-9BをコピーしたAA-2アトールを開発している。[1]
1982年にフォークランド紛争が発生したが、この時点でサイドワインダーの赤外線センサーは著しい発達を遂げ、敵機の主翼前縁が空気摩擦で熱くなって発生させる輻射波長にロックオンできるようになっていた。つまりサイドワインダーの発射母機は敵機の後方をとる必要もなくヘッドオンで発射でき、また、波長を精密に区別するので砂漠からの太陽の照り返しや敵機の放出する囮熱源(フレア)を敵機のエンジンと誤認するようなことも原理的に起きないことを意味した。米国からこの最新型のサイドワインダーを供給された英海軍のシー・ハリアーは空中戦においてアルゼンチンのミラージュをよせつけず、英空母の防衛を完遂した。[2]
形式
- AIM-9A/B
第1世代。射程は最低900mから最大4.8㎞、最速はマッハ1.7。前述の通り誘導装置の構造上、熱源捕捉に失敗すると太陽や砂漠へ向かってしまうため敵機の回避機動で躱されることも多かったが当時から完成度の高いミサイルに該当する。 - AIM-9C/D/G/H
第2世代の空軍仕様。D~Hは従来からの誘導装置を改良した型だがCはセミアクティブ・レーダーホーミング式の誘導装置に換装された型だったが成績が芳しくなく後述するサイドアームに改造された。なお、共通して新型ロケットモーターの採用に伴い最大射程は18㎞に延伸している。 - AIM-9E/J/N
第2世代の海軍仕様。当初は誘導装置の改良のみだったが後に空軍同様にロケットモーターも換装。 - AIM-9L/M/R/P
第3世代。第2世代での空軍、海軍が別個に改良を行うのは無駄との反省から合同で改良が行われた。
この世代ではそれまでの誘導装置の中核、赤外線センサーの大幅な改良が行われ目標の後方に部署しなくても赤外線の波長で正確な目標を検知できる全方位交戦能力が備わったことでAIM-9は一つの完成点に到達した。 - AIM-9X
最新型。制御翼面を小さくすることで抵抗を減らし、最大射程はAIM-9L/Mの約18kmから26km程度に伸びたとされる。シーカーの高度化、排気口ベーンによる運動性向上によって、照準機能を持つヘルメットと組み合わせることで真横などのオフボアサイトと呼ばれる位置にいる目標との交戦が可能。発展型のブロックⅡも開発中で、発射母機からミサイルに送信を行なう1方向のデータリンク、発射後ロックオン能力を有している。[3]
派生型
- MIM-72『チャパラル』
地対空ミサイル仕様でアメリカ軍では1969年~1998まで運用されていた。レーダーに頼ることなく操作員の肉眼とミサイル自体のセンサーで目標を捕捉する軽便な反面、第1世代同様の弱点も備わっていたがミサイル自体の改良と赤外線監視装置の発射機への追加で弱点は限定的ながら狭まった。 - RIM-72『シーチャパラル』
チャパラルの艦対空ミサイル仕様。採用したのは台湾海軍のみ。将来的には台湾の国産艦対空ミサイルで更新される予定。 - AGM-122『サイドアーム』
モスボールされていたAIM-9Cを改造した対レーダーミサイル。アメリカ海兵隊が運用。性能は高くなかったがリサイクル品だったためコスパが良く全弾が使い切られて運用終了。
関連動画
関連商品
関連項目
脚注
- *「世界のミサイル」ワールドフォトプレス編 光文社 1991
- *「日本の兵器が世界を救う」 兵頭二十八 徳間書店 2017 p.248
- *「ツウになる!F-35完全教本」青木謙知 秀和システム 2018 p.78
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