H-I とは、1992年に運用を終了した日本の第3世代型液体燃料ロケットの名称である。
日本の液体燃料ロケット開発の中ではN-II ロケットとH-II ロケットの橋渡し的存在であり、
80年代後半における人工衛星打ち上げの主体を担った存在でもある。
概要
H-I ロケットとは宇宙開発事業団(NASDA)と三菱重工が、
米国デルタロケットの技術等を参考に開発していた2段または3段式の液体燃料ロケットである。
開発経緯
東京大学生産技術研究所を礎とする固体燃料ロケットの分野ではそれなりの技術を有していた日本であったが、
実用的な大型衛星などを打ち上げ可能とする液体燃料ロケットの開発には遅れをとっていた。
これらの開発担当となったNASDAは米国からの技術供与を得てデルタロケットの技術を段階的に習得、
本機はN-I ロケットの改良型2型として更なる打ち上げ性能向上を狙った機体である。
機体構成
2段または3段式の液体燃料+固体燃料ロケットで、米国デルタロケットの略同型とされている。
全長40.30メートル、総重量139.3トン。(積荷の人工衛星を除く)
第1段機体
N-IやN-II ロケットにも使用した、液体酸素とケロシンを燃料とするMB-3-3エンジンをライセンス生産。
第2段機体
宇宙開発事業団と航空宇宙技術研究所、三菱重工、石川島播磨重工が共同開発したLE-5エンジンを搭載。
液体酸素(液酸)と液体水素(液水)を推進剤とし軌道上での再着火が可能。
また、国産化した慣性誘導装置を第2段に搭載。
第3段機体
日産自動車宇宙航空事業部(現IHIエアロスペース)が生産した、固体ロケットモータUM-129Aを使用。
末端水酸基ポリブタジエン系コンポジット推進薬。
GTO投入時に用いられLEOへの打ち上げでは使用せず、その場合ロケットは2段構成となる。
補助ブースター(SOB)
サイオコール社の固体ロケットモータ キャスターII を、
日産自動車宇宙航空事業部(現IHIエアロスペース)がライセンス生産。
打ち上げ時には、第1段部分に6または9基を装着し推力増強。
N-II ロケット同様、SOBが上空で分離する様は圧巻である。
ペイロードフェアリング(衛星フェアリング)
マクドネル・ダグラス製のデルタロケット用フェアリングを輸入して使用。
打ち上げ能力
打ち上げ実績
9回中すべての打ち上げに成功。
詳細
機体番号 日時 段数・SOB数 | 搭載衛星 |
試験機1号機(H15F) 1986/08/13 05:45 2段式・9基 ※2段式初飛行 |
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試験機2号機(H17F) 1987/08/27 18:20 3段式・9基 ※3段式初飛行 |
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3号機(H18F) 1988/02/19 19:05 3段式・9基 |
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4号機(H19F) 1988/09/16 18:59 3段式・9基 |
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5号機(H20F) 1989/09/06 04:11 3段式・6基 |
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6号機(H21F) 1990/02/07 10:33 2段式・9基 |
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7号機(H22F) 1990/08/28 18:05 3段式・9基 |
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8号機(H23F) 1991/08/25 17:04 3段式・9基 |
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9号機(H24F) 1992/02/11 10:50 2段式・9基 |
成果とその後
8割から9割以上の国産化率を占め、先に述べた様に純国産液体燃料ロケットH-II の礎的存在となる。
第1段エンジンのクラスタ化など増強案(H-IB)もあったが、
2トン級人工衛星の需要増加などに伴いH-II ロケットの開発へ移行し運用終了となった。
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関連リンク
関連項目
- NASDA 宇宙開発事業団 / 三菱重工 / 石川島播磨重工 / 日産自動車
- ISAS 宇宙科学研究所
- JAXA 宇宙航空研究開発機構
- N-I / N-II / H-II ロケット
- 種子島宇宙センター
- 気象衛星ひまわり
- 打ち上げロケット・宇宙機の一覧
- 宇宙へ打ち上げリンク
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