INFとは、
2.の概要
1987年にアメリカ合衆国とソビエト連邦の間で結ばれたINF(中距離核戦力)を全廃する条約。射程500-5500kmの地上発射弾道ミサイル(GLBM)及び地上発射巡航ミサイル(GLCM)を全廃するとともに、新規に保有することも禁じた。既存のINFを廃棄する作業は1991年で完了している。海上から発射するミサイルについては規制外である。START条約などと違い、期限が区切られていないので、どちらかが脱退を申し入れない限り無期限に有効である。[1]
2019年2月、アメリカのトランプ政権は、ロシアが条約に違反しているとしてINF条約の破棄を通告、6ヶ月後の8月2日に失効した。[2]
条約締結の背景[3]
1975年、ソ連は移動式多弾頭中距離ミサイル「SS-20」の配備を開始した。スペックを見れば、ソ連は対西欧限定の先制核奇襲をやる気があることを示していた(もちろん核攻撃の後には地上軍による占領を行う)。キューバ危機以降にアメリカが核戦略を変更し(ヨーロッパからIRBMを撤去)、アメリカはどこまでヨーロッパと運命を共にする気があるのかについて疑問を抱いたからこその構想だった。
さすがにアメリカはソ連の意図に気づき、INF(パーシングⅡと巡航ミサイル)をヨーロッパに持ち込んだ。この動きを阻止しようとしたソ連のプロパガンダは凄まじく、核兵器に詳しい者には、この異常な反応こそがソ連の戦争計画の実在の証明と映った。
ヨーロッパには既にアメリカ空軍が1000発を超える投下核爆弾を配備し、これを運用するであろうF-111も主にイギリスに駐留していた。また近海に展開する米空母が搭載する艦載機も核爆弾を運搬できた。ソ連からすれば、飛行場や空母はSS-20で先制破壊してしまえるが、追加されたINFは移動式なのでそれができない。だからこそ、INF持ち込みには反発しなければならなかった。
脚注
- *米国が懸念するロシアのINF(中距離核戦力)全廃条約違反疑惑とは何か
- *INF条約が失効 トランプ政権、21世紀型の軍備管理体制確立目指す 2019.8.2
- *「軍学考」兵頭二十八 中央公論新社 2003 3版 pp.205-206
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