F-111とは、アメリカのジェネラル・ダイナミックス社によって開発された軍用機である。非公式なペットネーム(愛称)はアードバーク。
概要
世界で初めての実用可変翼機。開発は当時の国防長官ロバート・マクナマラによってアメリカ海軍と空軍の新型機開発計画を統合する形でスタートしたが、海軍型のF-111Bはキャンセルされ、残った空軍型(初期型はF-111A)が制式採用され、ベトナム戦争や湾岸戦争に参加した。既存のF-111Aを改造して戦略爆撃機であるFB-111や電子戦機EF-111A”レイヴン"も作られた。アメリカでは派生形を含め全機退役済みである。
アメリカ以外で導入したのはオーストラリアのみで、30機前後が導入されたが、こちらも全て退役している。
開発[1]
米空軍はF-105の後継機を模索していた。この機体は最大速度マッハ2.5でV/STOL性能を持ち、核爆弾を含む大量の兵装を搭載して低空を長距離侵攻できるというかなり欲張った要求だった。この仕様を検討している間にNASAからVG翼(可変翼)の情報がもたらされ、新型機開発はこのVG翼を採用することを前提に進めることになり、1960年に発行された特別作戦要求(SOR:Special Operational Requirement)183による機体はTFX(Tactical Fighter Experimental)と名付けられた。
1961年にアメリカ大統領に就任したジョン・F・ケネディが国防長官に任命したロバート・S・マクナマラは、国防費の削減になると考えて、同時期に米海軍が構想していた艦隊防空戦闘機FADF(Fleet Air Defence Fighter)計画とTFXの統合を命令、改めて提案要求が発行され、6社の提案の中からボーイングとゼネラルダイナミクス/グラマンの2案が最終選考に残り、マクナマラはゼネラルダイナミクス/グラマン案を採用することを発表した。
空軍型F-111Aの開発1号機は1964年12月に初飛行したが、初めて戦闘機にアフターバーナー付きのターボファンエンジンを搭載したため、コンプレッサー・ストールに悩まされ開発は難航した。
海軍型F-111Bの開発1号機は1965年5月に初飛行したが、空軍型同様に開発はうまくいかず、1968年に議会が開発費を認めなかったため、国防省は開発中止の命令を出した。
海軍型の開発中止により共用戦闘機という足かせがなくなったので、空軍は独自に開発を続け、F-111を阻止攻撃機として実用化した。
テクノロジー
世界初の実用型可変翼戦闘機である。16°から72°までの間で任意の角度で調整することが可能。手動制御式。これにより高速性能と離着陸性能の両立が可能になったが重量が増加、このことが海軍型をキャンセルに追い込むことになった。当然ながら運動性はかなり悪い。
エンジンは、実用機としては世界で初めてアフターバーナー付きのターボファンエンジン(TF30)を2基搭載している。初期生産型はエアインテイクの関係上空気流入量に敏感で、ちょっとしたことでもすぐコンプレッサーストールを起こす欠点があった。この欠点は同種のエンジンを装備するF-14にも発生した。
しかしそれらの技術によって達成できた搭載量は伊達ではなく、F-15Eストライクイーグルのそれすらも上回る。合わせて新型のパルス・ドップラーレーダーや地形追随装置なども合わせて低空からの高速侵入による圧倒的な破壊力が与えられている。
バリエーション
- F-111A:アメリカ空軍向けの初期生産型。
- F-111B:アメリカ海軍向けの艦隊防空戦闘機。上述の通りキャンセル。
- F-111C:オーストラリア空軍向けの機体。
- F-111D:アメリカ空軍向けの機体。エンジンやアビオニクスを換装したタイプ。
- F-111E:アメリカ空軍向けの機体。インテークの改良を行いエンジンの信頼性や性能向上を狙ったモデル。
- F-111F:アメリカ空軍向けの機体。出力向上型エンジンを採用している。
- F-111G:後述するFB-111の改造型。戦略爆撃装置を撤去されている。一部はオーストラリアに輸出された。
- FB-111:戦略爆撃機型。アメリカ空軍に配備されたが戦略爆撃機として中途半端な性能だったため生産機数は少なめ。後にF-111Gに改造された。
- EF-111:電子戦機。
関連動画
関連項目・外部リンク
脚注
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