Pentium Dとは、Intelが展開していた漢のデスクトップ向けCPUのブランド名であり、Intel初のデュアルコアCPUである。
名前が似ているのでよくPentium Dual-Coreと間違えられるが全く異なる製品である。
x86系の第七世代であり、Netburstマイクロアーキテクチャを採用している。
概要
当時Intelは消費電力や発熱の大きいことが問題視されていたPrescottコア(Pentium 4参照)の後継として、Tejasと呼ばれるPentium 4で3回目の大型拡張を行ったCPUを、2004年冬を目標に開発していた。ところが比較的早期に出回ったTejasのサンプルは2.8GHz駆動ですら消費電力が120Wを超えており、製品としては使えないレベルと判断されてしまった。
結局Tejasは2004年4月頃に派生品・後継品を含めて全て開発中止となり、モバイルCPUであったPentium Mを拡張して消費電力や発熱の問題をクリアした全く新しいCPU(後のCore 2)を発売する2006年夏まではデスクトップ向け新製品の計画が存在しないという異常事態に陥った。
これにより、ライバルであるAMD社のAthlon 64に対する持ち駒がなくなってしまったIntelは、苦肉の策としてCPUとしては超短期間となる たった数ヶ月の開発で製品が2つ考案され、開発・出荷された。1つ目が従来のPrescottの2次キャッシュを倍増し、EISTに対応したPrescott-2M(Pentium 4参照)であり、2つ目がNocona(Xeon用のPrescott選別品)2つをMCM方式でワンパッケージに収めたSmithfield(PentiumD)である。Intelは「HTTによる仮想2コアCPUよりも、物理的に2コアを搭載しているので高速」とアピールを行った。
しかし、元々デュアルコア化を想定していなかった為にダイ間通信にはノースブリッジを経由する必要がありFSBの利用効率が悪く、AMDが元よりデュアルコア化を想定して開発していたAthlon64 X2(後のAthlon X2)を投入したため、性能・消費電力共に大きく差が開いてしまう事となった。
Pentium 4とは製造原価としては大きな差があるにも関わらず、ほとんど変わらない価格設定がなされている。これはデュアルコア製品を明確にシングルコア製品の上に位置づけていたAMDとは全く対照的な戦略で、発熱や消費電力を許容できるならば非常に優れたコストパフォーマンスを誇っていた。
さらに上位ラインアップとしてHTTに対応し、論理的に4コアCPUとなったPentium Extreme Editionがある。
2006年夏には発熱と消費電力の問題を解消し、さらに性能面でも大幅に向上したCore 2シリーズが発売されたことにより、2007年12月に受注を終了。現在は製造されていない。
種類
ダイの設計により次の2つの世代に分かれる。
- ■Smithfield
- 2005年6月に発売された前期Pentium D。
製造プロセス90nm、FSB533～800MHz、動作周波数2.67～3.2GHz、TDP95～130W。
プロセッサ･ナンバーは800番台。
Nocona(Xeon用のPrescott選別品)2つを LGA775パッケージに実装したもの。ベースとなるPrescottが非常に消費電力の大きいものであったことから、必然的に空前絶後の超高消費電力となってしまった。特に上位のTDP130W品は、当時はCPUクーラーやPCケースの廃熱設計が未熟だったこともあり"掃除機かジェット機のような騒音の超高速ファンを使用したクーラーが付属、にもかかわらず830及び840においては夏場には日常的にTM2(焼損防止機能)が発動し、クロックが820相当の2.8GHzまで強制的に引き下げられる"というような有様であった。このような発熱問題から、周波数はPentium 4(Prescott)の下位製品並に抑えられていた。 - ■Presler
- 2006年1月に発売された後期Pentium D。
製造プロセス65nm、FSB800MHz、動作周波数2.8～3.6GHz、TDP95～130W。
プロセッサ･ナンバーは900番台。
消費電力と熱の問題がある程度改善されたCedarMill(Pentium 4参照)2つをLGA775パッケージに実装したもの。これにより、動作周波数をPentium 4と同等レベルまで引き上げることが可能となった。2次キャッシュもSmithfieldの2倍の2MBから4MBに増量され、ある程度の性能向上を果たしている。当初リリースされたリビジョンでは省電力機能がエラッタにより利用できないトラブルもあったもののSmithfieldと比較してTDPも引き下げられ、これらのエラッタが修正された製品では大きく消費電力が低減し最終的には全ての製品がTDP95Wとなった。また仮想化支援機能であるIntel VTに対応している。後にIntel VTを無効化した廉価版(プロセッサ・ナンバが同周波数の通常版より数字が5小さい)が投入されている。全体的にSmithfieldと比較すれば大幅に改善されたが、Athlon 64 X2も着実に高周波数品を投入しており、設計上の大きな弱点をそのままに小改良を行った程度では追いつくことは出来なかった。Presler/CedarMillはAMDの攻勢を中～低価格帯において若干和らげたに過ぎず、反転攻勢はCore 2世代に委ねられることとなる。
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関連項目
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