ジャレド・ダイアモンドとは (ジャレドダイアモンドとは) [単語記事]

ジャレド・ダイアモンド（1937～）とは、アメリカの進化生物学者、生理学者、生物地理学者、ノンフィクション作家である。
日本においては『銃・病原菌・鉄――1万3000年にわたる人類史の謎』のヒットにより有名な学者ではあるが、歴史学者ではない。もう一度言おう、歴史学者ではない。

概要

1937年にボストンでベッサラビア出身のユダヤ系の両親の間に生まれる。1958年にハーバード大学で生物学の学士号を、1961年にケンブリッジ大学で生理学の博士号を取得した。その後ニューギニアで鳥類の研究を行い、フィールドワークとそれに伴う現地の人々との交流をきっかけに人類史に興味を持ち、『銃・病原菌・鉄――1万3000年にわたる人類史の謎』を著した。

『銃・病原菌・鉄』は大ヒットした割に、あまりにも長いのと、個別研究が延々と続くので、脱落者が多いため、とりあえず一言でまとめよう。ユーラシアと対照的なアフリカやアメリカの孤立状態は、結果人口規模の小ささ、免疫が危機にさらされることの少なさをもたらし、近世・近代において病原菌に強い、産業化されたヨーロッパ人の猛攻に土地を無防備なままさらすことになってしまった、というものだ。
つまり大規模な歴史的変動の説明を地理や環境的要因に重点を置き、文化や交易活動、技術といったものより勝ると主張したのである。

このような彼の主張は別分野からの興味深いアプローチと解すものと、先行研究を無視し、結局ヨーロッパ中心主義的な前提に回帰している門外漢と評すものと、両極に分かれている。また、その後の彼の著作は、『文明崩壊――滅亡と存続の命運を分けるもの』や、『昨日までの世界――文明の源流と人類の未来』といったように、根拠に基づいた学術書ではなくノンフィクションであり、何らかの主張ありきで書かれたものであることを注意しなければならない。