トゥルー・ビリーバー・シンドローム(true-believer syndrome、狂信者症候群、信じ込み症候群)とは、何らかの超常現象や超自然現象について真実であると信じ込んだ人が、その「超能力者」からトリックであったことを告白されるなどの非常に明確なインチキの証拠を示されてもなお、その超常現象/超自然現象を信じ続けてしまうことである。
1976年に発売された書籍『The Psychic Mafia』(サイキック・マフィア、直訳すれば「超能力マフィア」)内で初めて言及された言葉だとされる。
この『The Psychic Mafia』は自らも霊媒として活動していたM. LaMar Keeneが「霊能力者らがどのようなトリックを用いて顧客を騙し、霊能力を信じさせてお金を巻き上げていたか」を告白する内容の暴露本である。
この本の中で、「霊媒自身がインチキであったと告白した後にも、変わらず(あるいは以前よりさらに強固に)霊能力を信じ込んで執着してしまう客がいる」という現象および、M. LaMar Keeneがその現象を「the true believer syndrome」と呼んでいることが紹介された。
The need to believe in phony wonders sometimes exceeds not only logic but, seemingly, even sanity.
※同書籍より引用、意訳
『The Psychic Mafia』では、オペラ作品『The Medium』(邦訳タイトル『霊媒』。ジャン=カルロ・メノッティ作)でも類似の場面があることが紹介されている。このオペラの主人公はいんちき霊媒で、作中で「私はあなたを騙していたのだ!」と顧客らに告白する。しかし顧客たちはその告白を受け入れない。このオペラは1940年代に初演されたものであり、「トゥルー・ビリーバー・シンドローム」という用語としては『The Psychic Mafia』が初出であるものの、こういった出来事が起こりうることはかなり以前から知られていたことがわかる。
ここまで読んで「なぜそんな矛盾した心理状態になるのか?私にはまったく理解できないし想像も共感もできない」と感じた人もいるかもしれない。
しかし、「その超常現象を信じて多くの他人に広めてしまったり、自分や家族の人生を賭けてしまっている」という状況を想定してみるとどうだろうか。そういった状況では、今さら「私が信じていたこの超常現象は誤りだった」と認めてあらゆることを軌道修正させるよりも、そのまま信じ続けている方が乗り越えるべき心理的ハードルは低いこともあるだろう。また、信者は「霊能力者自身も気づいていなかったようだが、実はいんちきのつもりで無意識のうちに本当の霊能力を使っていたのだ」などと思い込むことで強引に矛盾を打ち消し、合理化することもある。これらの心理は「今さら引っ込みがつかない」とか「自己欺瞞と合理化」という言葉に単純化することもできる。
「引っ込みがつかない」「自己欺瞞と合理化」といった心理状況を人生で経験している人も少なくないだろう。また仮に自分で経験したことはなくとも、「引っ込みがつかないだの自分を騙すなどといった気持ちはかけらも想像もできないし、そんな気持ちになるのは異常な奴だけだ」と主張する人は少ないのではないだろうか。こう考えれば、「トゥルー・ビリーバー・シンドローム」もそれほど理解・共感しがたい状態というわけでもなく、普通の人が普通に陥る可能性がある状態かもしれない。
『The Psychic Mafia』の和訳版『サイキック・マフィア―われわれ霊能者はいかにしてイカサマを行ない、大金を稼ぎ、客をレイプしていたか』では、原著の「the true-believer syndrome」(ハイフンが付かない「the true believer syndrome」と表記している箇所もある)は「狂信者症候群」と訳されている。しかし「信じ込み症候群」の方が本来の意味に近いのではないかとする意見もある[1]。なお「syndrome(症候群)」と付いてはいるが、上記の経緯からわかるように正式な医学的/心理学的用語というわけではない。
本来は超常現象の分野で使用される言葉だったが、カルト宗教などや、さらには超常現象や宗教が関わらないデマ・陰謀論・疑似科学などの場合でも類似の心理現象が生じるようであり、そういったケースを評する際にもこの言葉が使用されることがある。
(上記の英語サイト「The Skeptic's Dictionary」(懐疑論者の事典)の和訳版)
(ウェブアーカイブ)
掲示板
9 ななしのよっしん
2023/06/04(日) 11:19:48 ID: GTqoFUgTNr
関連項目にコンコルド効果を入れてほしい
この心理状況に陥る理由として一番シンプルな物だと思う
10 ななしのよっしん
2023/07/15(土) 14:08:37 ID: 5M7eB2a5XG
コンコルドは過ちには気付いてるから似てはいるがだいぶ違うのではないか
11 ななしのよっしん
2023/09/26(火) 12:28:06 ID: 50csndKV5f
トゥルー・ビリーバー・シンドロームは対象に対する憧れや崇拝の気持ちがあることが大前提で、対象に対して金や時間をあまり使ってなくても成立する(思い込みの激しい人であれば、たった1、2回インチキ霊能力者のショーを見ただけであってもほとんど同じ心理状態になると思われる)
コンコルド効果は対象に対して金や時間を相当つぎ込んでいるのが大前提で、その対象を本気で凄いものだと思い込んでいるかどうかは問わない(本人が自分の身の丈にあった良いモノだと思っていた場合にも起こる)
微妙に噛み合わない要素だから、わざわざ関連項目に載せる意味あるかは疑問
仮に載せるとしても、↑に書いたような内容を踏まえて「近いけど異なる概念」として載せるのがいいと思う
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最終更新:2025/12/12(金) 11:00
最終更新:2025/12/12(金) 11:00
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