ヴェルトライゼンデ(Weltreisende)とは、2017年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牡馬。
屈腱炎を乗り越えて中495日の休養明けでの重賞制覇という平地競走JRA記録を作った、ドリームジャーニーの代表産駒。
主な勝ち鞍
2022年:鳴尾記念(GⅢ)
2023年:日経新春杯(GⅡ)
父ドリームジャーニー、母*マンデラ、母父Acatenangoという血統。
父はいわゆる「ステマ配合」の一番槍として2006年の朝日杯FS、2009年の宝塚記念と有馬記念を制し、父ステイゴールドの種牡馬評価を一気に高め、後の三冠馬である全弟オルフェーヴルや、稀代の癖馬ゴールドシップの誕生へと黄金の旅程を繋いだ孝行息子。種牡馬としては父に似た小柄な馬格が災いして種付けが非常に苦手で、中央重賞馬はヴェルトライゼンデ以前には1頭だけと苦戦していた。
母はドイツ産馬で11戦3勝。2003年のディアナ賞(ドイツオークス)3着などの実績がある輸入繁殖牝馬。
母父アカテナンゴは1985年のドイツダービーなどドイツ国内で12連勝を記録、GIを7勝し、3年連続年度代表馬に選ばれたドイツの名馬。種牡馬としても5度のリーディングサイアーに輝いた名種牡馬で、日本でよく知られた産駒には1995年のジャパンカップを勝ったランドがいる。
半兄(父ディープインパクト)に、2012年のきさらぎ賞と2014年のマイラーズカップを勝ったワールドエース、そしてその全弟で2019年の菊花賞と2021年の天皇賞(春)を勝ったワールドプレミアがいる。
2017年2月8日、ノーザンファームで誕生。オーナーはおなじみサンデーレーシング。募集価格は1口90万円×40口(=3600万円)であった。
馬名意味は「ドイツ語で『世界旅行者』」。祖父ステイゴールドの香港名「黄金旅程」から連想された父名に、兄ワールドエースや母のドイツ血統を加えての連想か。
父も所属した栗東の名門・池江泰寿厩舎に入厩。デビューは2019年9月1日、小倉・芝1800mの新馬戦。鞍上は川田将雅。このときはまだワールドプレミアが菊花賞を勝つ前だったので「ワールドエースの半弟」と紹介されていた。2.2倍の1番人気に支持され、2番手で先行すると重馬場もものともせず、直線で悠々と他馬を置き去りにして3馬身差の快勝デビューを飾る。
2戦目は出世レースとして名高い萩ステークス(L)。デビュー戦に続いて稍重の馬場、クリストフ・スミヨンが騎乗したここも2.2倍の1番人気に支持され、7頭立ての3~4番手で進めると、直線で抜け出し3頭の叩き合いを半馬身制して2連勝。とはいえスミヨンは「この馬はもっと固い馬場の方が良いのではないでしょうか」とコメントしていた。ちなみにこのレース、後に牝馬として初めて武蔵野Sを勝ったギルデッドミラーもいた(5着)。
ともあれ2連勝で、年末のホープフルステークス(GI)へ乗りこんだヴェルトライゼンデ。しかしここには最大の強敵が待ち構えていた。そう、東スポ杯2歳Sを5馬身差で圧勝してきたコントレイルである。コントレイルが2.0倍の1番人気、ヴェルトライゼンデは6.9倍の3番人気だった。鞍上はオイシン・マーフィー。
当時はまだ無名のブービー人気馬だったパンサラッサが逃げる中、コントレイルを前に見ながら中団の内につけたヴェルトライゼンデ。3コーナー前でコントレイルが上がって行くとヴェルトライゼンデもそれを追いかけていくが、マーフィーが懸命に追っているのにコントレイルの福永祐一は持ったまま。マーフィー騎手は「直線では一瞬勝てるかと思った」と語ったが、終わって見れば1馬身半差という着差以上の実力差を見せつけられての2着に敗れた。
明けて3歳はクラシックを目指し、スプリングステークス(GⅡ)から復帰。鞍上はここから4歳まで池添謙一となる。単勝1.7倍の断然の1番人気に支持されたが、中団から外を回して直線抜け出そうとするも、外からガロアクリークに捲られ、食い下がったものの振り切られて2着。池添は「勝負どころでもたもたして、まくられてしまった」と反省の弁。
迎えた本番・皐月賞(GI)では、コントレイルと弥生賞馬サトノフラッグ、無敗の朝日杯FS馬サリオスの3頭が人気を分け合う中、8枠17番のヴェルトライゼンデは離された13.0倍の4番人気。積極的に中団前目の位置を取りに行ったが、直線で全く伸びず、コントレイルとサリオスの無敗対決のずっと後ろで何の見せ場もなく8着に沈む。
この凡走で日本ダービー(GI)では66.4倍の10番人気まで大きく評価を落としたヴェルトライゼンデ。しかしここでは先行した同枠のコントレイルを道中ぴったりとマークして進める。直線ではコントレイルとのあまりの手応えの差に抵抗できず突き放される一方だったものの、しぶとく脚を伸ばして3着。ホープフルS2着馬の意地を見せた。
しかしその後、右後脚外側副管骨の骨折が発覚。休養に入ることになった。
幸い骨折は問題なく回復。秋は菊花賞を目指しセントライト記念から始動の予定だったが、熱発で回避となり、スライドして神戸新聞杯(GⅡ)から始動。結果、またもコントレイルとの対戦となり、1.1倍のコントレイルに対して20.3倍の3番人気。ここでも10番人気パンサラッサが逃げる中、大外枠から最後方に控えたヴェルトライゼンデは、直線で外に持ち出して上がり最速で猛然と追い込んだものの、持ったまま余裕綽々のコントレイルには2馬身突き放されて2着。アクシデントが重なりながらの好結果で実力は見せ、池江師も池添騎手も納得の様子ではあったが、やはり力の差はいかんともしがたい感じであった。
迎えた菊花賞(GI)では2番人気に支持されたものの、1.1倍のコントレイルに対して10.3倍。レースはコントレイルとそれを徹底マークするアリストテレスを見るような位置で進めたが、そのまま直線で抜け出した2頭には突き放される一方で見せ場なく7着。ただただ飛行機雲を見送ることしかできなかった。
明けて4歳はアメリカジョッキークラブカップ(GⅡ)から始動。1番人気はアリストテレスで、ヴェルトライゼンデは6.8倍の3番人気。レースはアリストテレスを前に見ながら中団で進め、4コーナーから追いかけていき直線でもしぶとく脚を伸ばしたものの、最後まで半馬身届かず2着。
勝ちきれないレースが続く中、日経賞を目標に調整を進めていたが、3月3日、右前脚の膝裏に熱感を生じ、エコー検査の結果、屈腱炎と診断される。現役引退でもおかしくなかったが、陣営は現役続行を決断。長期休養に入ることになった。
その間、コントレイルは苦難を乗り越えて引退レースのジャパンカップを制し種牡馬入り。結局、5度手を伸ばした飛行機雲には一度も手が届かないままだった。
明けて5歳となった2022年。実に1年5ヶ月にわたった長期休養を経て、ヴェルトライゼンデはターフに帰ってきた。復帰戦は6月の鳴尾記念(GⅢ)。鞍上にはダミアン・レーンを迎え、これだけの長期休養明けながら4.9倍の2番人気に支持される。
平均ペースの展開の中、じっと中団に構えたヴェルトライゼンデは、直線で前が空くと力強く加速。残り200m手前で抜け出すと、後ろから追い込んできたジェラルディーナやサンレイポケットを寄せ付けず、半馬身押し切ってゴール板を駆け抜けた。
残り100を迎えるが、先頭2番ヴェルトライゼンデが抜け出した!
内抵抗するキングオブドラゴンにギベオン、外からジェラルディーナ、サンレイポケットも来ている、2番手接戦!
先頭2番の、ヴェルトライゼンデ復活ーッ!!
ヴェルトライゼンデ屈腱炎明け! 屈腱炎からの見事な復活ーッ!
5歳夏のリスタート! 長期休養明け、初戦を重賞制覇で飾りました!
嬉しい重賞初制覇は、実に中495日での勝利。スズパレードの1987年宝塚記念→1988年オールカマーの中461日を更新し、平地競走では歴代最長記録の更新となった。ドリームジャーニー産駒の重賞制覇は、2020年のダイヤモンドSを最低人気で勝った青森産馬ミライヘノツバサ以来2頭目となった。
秋はオールカマー(GⅡ)から始動。鞍上は戸崎圭太がテン乗りとなり、5.4倍の3番人気に支持される。しかし好位を取れず後方からのレースとなり、直線では外を回していったものの、完全な内伸びの馬場での外回しではどうにもならず、伸びを欠いたまま7着。前走で2着に下したジェラルディーナの重賞初制覇を見送ることとなった。
続いては目標のジャパンカップ(GI)。海外勢も多数参戦して混戦ムードの中、人気を分け合ったシャフリヤール、ダノンベルーガ、ヴェラアズールに次ぐ9.5倍の4番人気。鞍上はダミアン・レーンが戻った。
レースは内枠の2枠3番から5番手の好位で先行。直線では先行勢がほぼ全滅の展開となり前がなかなか空かなかったが、残り200m手前で前に僅かなスペースが空くと、ダミアン・レーンはそれを見逃さずに突っ込んで行き、最内から抜け出しを図る。外から襲いかかるシャフリヤールとダノンベルーガとの熾烈な叩き合いに突入したが、そこに突っ込んで来たのがヴェラアズール! 最後はシャフリヤールとの間を抜かれ、シャフリヤールにもクビ差競り負けて3着。
敗れはしたものの、三冠牝馬デアリングタクトや3歳の注目馬ダノンベルーガに先着し、GIでも充分に勝ち負けになる力を見せたヴェルトライゼンデ。レーンは「内枠からいいスタートを切れて好位で競馬ができた。直線でスペースが開くのを待たされましたが、すごい瞬発力で伸びてくれました」とコメント。
明けて6歳初戦は日経新春杯(GⅡ)へ。トップハンデ59kgを背負わされたこともあり、オールカマー2着のロバートソンキーと同オッズで分け合っての3.8倍の1番人気となった。鞍上はデヴィッド・イーガン。
2枠2番から枠なりに最内の好位5番手を確保すると、4コーナーから徐々に外に出して行く。稍重の馬場を嫌って馬群が横にばらける展開の中、馬場の真ん中どころまで持ち出したヴェルトライゼンデはそこから上がり2位の脚で力強く伸びて、粘るキングオブドラゴンをクビ差かわしてゴール。
トップハンデもなんのその、ジャパンカップ3着の実力を見せつけるように重賞2勝目。幸先の良いスタートを切った。
続いては悲願のGI制覇を目指して大阪杯(GI)。牡馬の実績勢が軒並みドバイや国内の他の重賞に行ったためやや手薄なメンバーとなったこともあり、昨年の二冠牝馬スターズオンアースとジャックドールに次ぐ6.6倍の3番人気に支持された。鞍上は新馬戦以来3年半ぶりの騎乗となる川田将雅。
しかし中団馬群の中でレースを進めるも、逃げたジャックドールと武豊が刻んだ1000m58秒9から11秒台半ば連発のハイペース消耗戦ラップは、ヴェルトライゼンデには未体験の流れ。このペースの追走で脚を使わされてしまったか、直線では伸びを欠いたまま9着に撃沈。
そしてこの後、屈腱炎が再発。全治9か月以上と診断され、再びの長期休養へ入ることとなってしまう。
1年2か月の休養を経て、7歳となったヴェルトライゼンデは6月のエプソムカップ(GⅢ)で再びの帰還を果たす。だが、二度目の屈腱炎と年齢は、その旅路をゆく脚を容赦なく蝕んでいた。3番人気に支持されたが、中団から見せ場なく9着。
夏休みを挟み、秋のGI戦線を目指して毎日王冠に向かう予定だったが、膝裏の熱感で回避となり、結局秋はそのまま全休となってしまう。
8歳となっても現役を続行し、2年前に制した日経新春杯(GⅡ)で復帰するも、中団から伸びず10着。その後、金鯱賞に向けて調整が続けられていたが、3度目の屈腱炎を発症。さすがに年齢的にもこれ以上は厳しいと、2月8日に登録抹消、現役引退が発表された。通算16戦4勝 [4-4-2-6]。
引退後は一度はノーザンホースパークで乗馬になると報じられたが、その2日後に一転、2月13日のサラブレッドオークションに上場、種牡馬としての引き取り手を探すこととなった。
というわけで迎えたサラブレッドオークション。通常このオークションで取引されるのは中央から地方に移籍する馬や地方馬、繁殖牝馬などであるのだが、ヴェルトライゼンデは異例の「種牡馬」として上場された。
100万円からスタートしたオークションは終盤3名の入札者による争いとなったが、最終的にヴェルトライゼンデの一口出資者かつ命名者である森本研太氏が760万円で落札。地方の馬主であり2024年には中央の馬主資格も取得しており、名古屋と佐賀で14勝を挙げているドリームジャーニー産駒ブレーヴジャーニーなどを所有している人で、命名馬ヴェルトライゼンデを種牡馬にするべく並々ならぬ覚悟で今回のオークションに臨んでいたようである。
長期休養を乗り越えて旅路を続けた世界旅行者ヴェルトライゼンデ。ドリームジャーニーの中央重賞勝ち産駒3頭のうち、ミライヘノツバサは既に誘導馬になっており、スルーセブンシーズは牝馬なので、後継種牡馬になれそうなのは彼だけである。競走馬としての旅路ではGIの頂きに辿り着くことは叶わなかったが、祖父の黄金の旅程を、父の夢の旅路を種牡馬として繋いでいけるだろうか。
ドリームジャーニー 2004 鹿毛 |
ステイゴールド 1994 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
ゴールデンサッシュ | *ディクタス | ||
ダイナサッシュ | |||
オリエンタルアート 1997 栗毛 |
メジロマックイーン | メジロティターン | |
メジロオーロラ | |||
エレクトロアート | *ノーザンテースト | ||
*グランマスティーブンス | |||
*マンデラ 2000 栗毛 FNo.3-d |
Acatenango 1982 栗毛 |
Surumu | Literat |
Surama | |||
Aggravate | Aggressor | ||
Ravan Locks | |||
Mandellicht 1994 黒鹿毛 |
Be My Guest | Northern Dancer | |
What a Treat | |||
Mandelauge | Elektrant | ||
Mandriale |
クロス:Northern Dancer 5×4(9.38%)、*ノーザンテースト 5×4(9.38%)
掲示板
提供: 32
提供: ロードカナロア
提供: ヌシ
提供: 友好的な忍者Lv3
提供: ゲスト
急上昇ワード改
最終更新:2025/03/24(月) 15:00
最終更新:2025/03/24(月) 14:00
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