安芸(列車)とは (アキとは) [単語記事]

安芸とは、国鉄で運行されていた列車名である。

概要

安芸は「夜行急行時代」「昼行急行時代」「夜行特急時代」に分ける事ができるが、全て呉線を経由したという共通点を持つ。

夜行急行安芸

呉線初の優等列車として東京駅と広島駅を結んだ無名の急行列車が安芸のルーツである。この列車は姫路駅発着・岡山駅発着であったのを徐々に運行区間を延長していって誕生したものである。終戦したものの当時の呉市を中心とした呉線にはそれだけの需要があったからである。

呉線に初めて優等列車が誕生した同年10月には大阪駅と広島駅を呉線経由で結ぶ準急列車も誕生した。また、急行安芸（当時はまだ無名の急行）は岡山駅で一部編成を分割・併合する事で宇野線初の優等列車として宇野駅発着の編成も連結するようになった。11月には急行としては東京～神戸間の夜行急行銀河にしか付いていなかった列車名が一部の急行列車にも付けられる事となったので、呉線経由の急行列車は「安芸」と命名された。ただし広島地区では急行安芸と命名されるまで急行 ひばりと呼ばれていたようである。尚、ひばりは1961年から1982年まで東北本線の特急列車として使われていた。1951年には宇野駅発着の編成は急行せと（後の急行瀬戸→特急瀬戸→サンライズ瀬戸）に分離された。

当時の呉線は電化されていなかったので、客車の急行安芸は呉線内ではC62 蒸気機関車が牽引していた。C62は東海道本線特急 つばめや東北本線特急 はつかり等の特急列車を牽引した機関車として活躍していたが、呉線の急行安芸と函館本線の急行ニセコはその最後の活躍の場として当時は有名であった。しかし1970年に呉線が電化されると、山陽本線経由で東京駅と下関駅を結ぶ寝台特急 あさかぜに格上げされたので夜行急行としての安芸は廃止された。ちなみにあさかぜは主に東京駅と博多駅を結んでいたが、2005年の廃止時に運行されていたのは急行安芸から格上げされた下関駅発着の1往復であった。

昼行急行安芸

1970年に客車夜行急行としては廃止された急行安芸だが、今度は電車昼行急行となった。3往復運行されていた新大阪・大阪～三原間の急行ともの内、1往復は赤穂線経由で運行されていたのでその運行区間を呉線呉駅まで延長したと同時に安芸と改称された訳である。ちなみに急行ともは福山市の鞆ヶ浦（ともがうら）が列車名の由来である。

1972年に山陽新幹線が岡山駅まで開業すると、急行安芸は岡山駅で新幹線に接続する呉線の急行として3往復に増発された。この際に新大阪～呉線経由広島間の急行宮島と岡山～呉線経由広島間の急行吉備を吸収したので、呉線の優等列車は昼行急行安芸と新大阪～下関間の夜行急行音戸に統一された。余談だが前述の新大阪・大阪～三原間の急行ともはこの時に廃止されている。

しかし1975年に山陽新幹線が博多駅まで開業すると昼行急行の安芸はあっさり廃止されてしまった。

夜行特急安芸

1975年に山陽新幹線が博多駅まで開業した事によって山陽本線の寝台特急が削減された。この時に余剰となった20系客車を使用して呉線の夜行急行音戸を特急に格上げする事となったり、この際に登場したのが特急安芸であった。

しかし「急行時代と然程変わらないスピード」「呉線の客にとっては利用しにくい時間帯（例として呉駅は下りが4時30分頃着・上りは0時頃発）」「広島駅以西の山陽本線の客にとっては呉線を経由している間に東京駅発着の寝台特急に抜かれるダイヤ」「国鉄の運賃値上げやストライキで国鉄自体の利用者減」といった要因から最早空気を運んでいる状況となった為に僅か3年半で廃止されてしまった。

ちなみに特急安芸は絵入りのヘッドマークもテールマークも無い唯一のブルートレインであった。

廃止直前の運行形態

列車種別：（夜行）特急
運行区間：新大阪～呉～下関間
使用車両：24系25形9両編成+電源車
1978年 10月2日に廃止

停車駅

文字数の都合から姫路駅以東の路線名は省略してある。新大阪駅・大阪駅・三ノ宮駅が東海道本線で姫路駅が山陽本線。

路線名	東海道・山陽				呉線			山陽本線
駅名	新大阪駅	大阪駅	三ノ宮駅	姫路駅	竹原駅	広駅	呉駅	広島駅	宮島口駅	岩国駅	柳井駅	徳山駅	防府駅	小郡駅	宇部駅	下関駅
下り安芸	●	●	●	●		●	●	●	●	●	●	●	●	●	●	●
上り安芸	●	●	●	●	●	●	●	●	●	●	●	●	●	●	●	●