将棋では、自分の王将(玉将)が詰み(逃げ場がない状態)になると負けとなる。そこで、すぐに詰まされてしまうのを防ぐために、序盤で守りの陣形を築く。この陣形のことを囲いという。
仮に、初期配置のまま囲いを組まずに(「居玉」という)攻めに出ると、攻めには成功してもカウンターが大きかったり、終盤戦ですぐに王手や詰めろがかかってしまうため、「居玉は避けよ」という格言もある。
将棋の囲いは先人たちの研究の賜である。組み上がった形はしばしばその美しさから多くの人を魅了する。ここでは、よく見られる将棋の囲いを一覧で示した。
当該記事:矢倉
矢倉は将棋の純文学。単に「矢倉」とも呼ばれる。相居飛車で多く見られる。
図は矢倉の最も一般的な形で、他の種類の矢倉と区別して「金矢倉」ということもある。プロ間でも最も多く指されている戦型の一つ。古くは江戸時代から、現在に至るまで愛用する人は絶えない。先手後手ともに矢倉になる場合は相矢倉の将棋といい、序盤の24手が定跡となっている。
縦からの攻めに強いが、横からの攻めや端攻めにはやや弱い。
銀矢倉、総矢倉、片矢倉など派生形が多数存在する。詳細は「矢倉」を参照のこと。
振り飛車で多用される囲い。後述する発展形と区別して「本美濃囲い」と呼ぶこともある。
短い手数で組み上がり、横からの攻めに強さを存分に発揮する。ここからさらに囲いを発展させていくことができるので、手に困ることもない。だが、端攻めや玉のコビンを攻められると弱い。
本美濃に組む途中で現れるほか、中飛車で美濃囲いに組むときはこの形になる。守り駒の枚数が1枚少ないぶん本美濃に比べると堅さは劣る。
本美濃から左金を4七に上がり、上からの攻めに備えた形。本美濃と同様に端攻めには弱い。桂馬を跳ねた形もよく見られる。
高美濃囲いからさらに発展した形。上部に非常に手厚く、終盤の寄せ合いで玉が1七に逃げるとなかなか寄らない。2七に銀を上がる瞬間に4九の金が離れ駒となるので、組み上げるタイミングに注意が必要。桂馬を跳ねるとさらに上部が厚くなるが、下段がスカスカで少し心もとない。
本美濃囲いに組んだ後、左銀を5六から4七と引きつけてできる形。金銀4枚のダイヤモンドが美しく、絶大な堅さを誇る。しかし、金銀が守りに偏っているため、攻め手を欠く可能性もある。
当該記事:穴熊
みんな大好き穴熊。組むまでに手数はかかるが、一度組み上がってしまえば無類の堅さを発揮する。玉が遠いことが最大の利点で、図の状態は即詰みがない「ゼット」と呼ばれる状態であり、一手を争うような終盤戦で勝ちやすいのが魅力である。
短所としては、組むまでに手数がかかること。完成する前に戦いを起こされると一方的に攻められる展開になりがち。また、駒の配置が極端に偏っているため、打ち込みの隙を生じやすい。玉の逃げ場がないため、端攻めなどから一度手がつくと早い。
また、攻め駒を完全に抑えこまれたり、入玉されたりすると、穴熊が崩れていないにもかかわらず勝ち目がなくなることもあり、これを「姿焼き」という。
居飛車で左側に穴熊を組むと「居飛車穴熊」、飛車を振って右側に組むと「振り飛車穴熊」と呼ばれる。
一見穴熊のようだが、よく見ると玉と香車の位置が入れ替わっている。玉が香車に串刺しにされているように見えることから串カツ囲いと命名されたとか。見るからに端攻めに弱い。
ビッグ4の名の示す通り、金銀四枚を派手に使った堅牢な囲い。端攻めにも強い。その堅さゆえに打ち込みも怖くない。しかし組み上がるまでにとにかく手数がかかる。また、攻めが薄くなりやすい。
ちなみに、どうぶつしょうぎでぞうときりん4枚が並んだ形をビッグ4と呼ぶことがある。
こちらも金銀四枚の穴熊。ビッグ4より短手数で組み上がり、非常に堅く、端攻めにも強い。ここまで組み上がればその時点で作戦勝ちという評判もある。
居飛車の対振り飛車基本形。囲うのにかかる手数が短いため、急戦を仕掛けることができる。
上からの攻めに弱く、特に8七・7六の地点が急所。囲い自体はかなり薄いので、相手に攻められる前に優勢を築くか、持久戦に持ち込むかが作戦の分岐点。舟囲いから急戦型・左美濃・居飛車穴熊などに変化することができる。
左銀を5七に上げた形は対振り飛車急戦の構え。相手の戦型に応じて様々な定跡が整備されている。
基本形から右金を一路左に寄った形。玉が箱に入ったような形をしている。→箱入り娘
舟囲いの発展形の一つ。美濃囲いを居飛車側で組んだもので、横からの攻めに強い。
図は「天守閣美濃」と呼ばれるもので、左美濃の組み方の一つ。単に美濃囲いを反転すると、玉が相手の角筋に入り、コビン攻めが厳しい。そこで、8七の地点に空間を設けて玉に鎮座させることが多い。横や斜めからの攻めに対して強くなった反面、玉頭が薄い。よく見ると角道が通っているため意外にも攻撃力が高く、この形から急戦を仕掛ける定跡もある。
右銀を5七から6六、7七と引きつけた形は「四枚美濃」と呼ばれる。その場合は角道が止まるので角を引いて使う。
振り飛車の美濃囲いをそのまま左右反転した形で耐久力も同等だが、玉が相手の角筋に入っていたり、桂馬が6五に跳ねてきたときに角に当たるなど、少し使いづらい面もある。相居飛車では、矢倉より手数がかからないため、左美濃から速攻を仕掛ける作戦もある。
銀冠を左で組んだもの。非常に堅く、場合によっては9八香~9九玉~8八銀~7七金と穴熊に潜ることも可能。ただ、なかなかここまで組ませてはくれない。
二枚金とも呼ばれる。相振り飛車でよく見られる囲い。金が二枚横に並んだ形で、上部の攻めに強い。2八の銀が壁銀になるのを嫌って銀を3九に待機することもある。
美濃囲いと違って囲いの発展性に欠けるのが短所。
横歩取りの将棋で現れる形。横歩取りは大駒が盤面を行き交う全面戦争になることが多いため、自陣全体のバランスを優先した囲いになる。
中原誠十六世名人が愛用した囲い。近頃は「横歩取り△8五飛戦法」で後手がこの形に組むことが多い。
「居玉は避けよ」の格言に反した大胆な戦術。相手が囲いを組み上げる前に速攻を仕掛ける狙いや、作戦として居玉が最適な場合に見られる。また、急戦のためやむを得ず居玉のまま戦うということもある。
図は藤井システムの一例。相手が穴熊に組もうとした瞬間に居玉のまま開戦し、穴熊に組ませる前に攻め潰してしまうという高等戦術。
「壁囲い」「早囲い」とも呼ばれる。どの囲いよりも早く組めるが、長所はそれくらいしかない。
木村義雄十四世名人が用いた囲い。玉の逃げ場が広いことが長所だが、玉の薄さは気になる。
短手数で組める簡素な囲い。2枚の金がカニのはさみのように見えることから名付けられた。矢倉に組む途中でこの形が現れるほか、駒落ちで上手の上からの攻めに備えてカニ囲いに組むことがある。
居飛車にもかかわらず右側に玉を囲うという、「玉飛接近すべからず」の格言に反した囲いだが、打ち込みの隙が無く、バランスが取れている。場合によっては飛車を振って戦うこともできる。
「トーチカ囲い」「鎌倉囲い」「蒲鉾囲い」「三浦囲い」など多くの別名を持つ囲い。
穴熊に似ているが、決定的に違うのは玉と桂馬の位置。玉が角筋を避けており、桂馬が守りにも攻めにも使える柔軟さがある。玉が端から遠いので穴熊に比べて端攻めの脅威も薄らぐ。反面、単純な堅さでは穴熊に劣る。また、組むまでに手数もかかる。
→雁木囲い
→無敵囲い
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最終更新:2025/12/06(土) 02:00
最終更新:2025/12/06(土) 02:00
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