教会旋法とは、 今から1000年以上前に確立され、西洋の「グレゴリオ聖歌」に用いられたいくつかの旋法の総称である。
古くは様々な種類の旋法が使われていたが、「長調と短調」の概念が広まった17世紀以降は廃れていった。近現代では全編に渡って教会旋法が用いられている曲は少ないが、部分的に教会旋法を使用している曲は案外多かったりする。
現代における「教会旋法」は、7つの旋法が含まれている。
古代にはドリア旋法、フリギア旋法、リディア旋法、ミクソリディア旋法の4つ(+その亜種)しかなかったが、後世になってから整理が行われ、「全音階には”ドレミファソラシ”の7つの音があるんだから、それぞれに対応する旋法を制定しよう」という意図でエオリア旋法、ロクリア旋法、イオニア旋法が加えられ、7つになった。
なお、かつてはそれぞれに対して正格旋法と変格旋法の2種類があり、変格旋法には頭に「ヒポ」をつけて区別していたが、これは単にレンジが異なるだけである。どういうことかというと、音域が高いほうを正格旋法、低いほう(具体的には4度)を変格旋法と呼び、聖歌同士をスムーズに連結できるようにしていた。
もともとあったドリア・フリギア・リディア・ミクソリディアには正格旋法と変格旋法を区別していたが、後から追加されたイオニア・エオリアではそこまで重要視されなかったし、ロクリアは実際の作曲で用いられることはほぼなかったので割り振られることもなかった。
| ド | ド♯ レ♭ |
レ | レ♯ ミ♭ |
ミ | ファ | ファ♯ ソ♭ |
ソ | ソ♯ ラ♭ |
ラ | ラ♯ シ♭ |
シ | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ドリアン・スケール | Ⅶ | - | Ⅰ | - | Ⅱ | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ | - | Ⅵ |
| ▼移調すると… | ||||||||||||
| 自然的短音階 | Ⅰ | - | Ⅱ | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ | Ⅵ | - | Ⅶ | - |
| ドリアン・スケール | Ⅰ | - | Ⅱ | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ | - | Ⅵ | Ⅶ | - |
ドリア旋法は、長音階の第2音を主音とする旋法。その構成音は、自然的短音階の第6音を半音上げたものに等しい。その音階を「ドリアン・スケール」と呼んだりする。
雰囲気は短調に近いが、Ⅳの和音が長三和音となるため、短調よりも少し明るい雰囲気。
| ド | ド♯ レ♭ |
レ | レ♯ ミ♭ |
ミ | ファ | ファ♯ ソ♭ |
ソ | ソ♯ ラ♭ |
ラ | ラ♯ シ♭ |
シ | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| フリジアン・スケール | Ⅵ | - | Ⅶ | - | Ⅰ | Ⅱ | - | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ |
| ▼移調すると… | ||||||||||||
| 自然的短音階 | Ⅰ | - | Ⅱ | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ | Ⅵ | - | Ⅶ | - |
| フリジアン・スケール | Ⅰ | Ⅱ | - | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ | Ⅵ | - | Ⅶ | - |
フリギア旋法は、長音階の第3音を主音とする旋法。その構成音は、自然的短音階の第2音を半音下げたものに等しい。その音階を「フリジアン・スケール」と呼んだりする。
用いる音がスペイン音階(スパニッシュ・スケール)と似ているため、西欧っぽさが感じられる。
募集中
| ド | ド♯ レ♭ |
レ | レ♯ ミ♭ |
ミ | ファ | ファ♯ ソ♭ |
ソ | ソ♯ ラ♭ |
ラ | ラ♯ シ♭ |
シ | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| リディアン・スケール | Ⅴ | - | Ⅵ | - | Ⅶ | Ⅰ | - | Ⅱ | - | Ⅲ | - | Ⅳ |
| ▼移調すると… | ||||||||||||
| 長音階 | Ⅰ | - | Ⅱ | - | Ⅲ | Ⅳ | - | Ⅴ | - | Ⅵ | - | Ⅶ |
| リディアン・スケール | Ⅰ | - | Ⅱ | - | Ⅲ | - | Ⅳ | Ⅴ | - | Ⅵ | - | Ⅶ |
リディア旋法は、長音階の第4音を主音とする旋法。その構成音は、長音階の第4音を半音上げたものに等しい。その音階を「リディアン・スケール」と呼んだりする。
Ⅰ-Ⅳの音程が完全4度ではなく増4度となるため、不安定で浮いたような印象を与える。
募集中
| ド | ド♯ レ♭ |
レ | レ♯ ミ♭ |
ミ | ファ | ファ♯ ソ♭ |
ソ | ソ♯ ラ♭ |
ラ | ラ♯ シ♭ |
シ | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ミクソリディアン・スケール | Ⅳ | - | Ⅴ | - | Ⅵ | Ⅶ | - | Ⅰ | - | Ⅱ | - | Ⅲ |
| ▼移調すると… | ||||||||||||
| 長音階 | Ⅰ | - | Ⅱ | - | Ⅲ | Ⅳ | - | Ⅴ | - | Ⅵ | - | Ⅶ |
| ミクソリディアン・スケール | Ⅰ | - | Ⅱ | - | Ⅲ | Ⅳ | - | Ⅴ | - | Ⅵ | Ⅶ | - |
ミクソリディア旋法は、長音階の第5音を主音とする旋法。その構成音は、長音階の第7音を半音下げたものに等しい。その音階を「ミクソリディアン・スケール」と呼んだりする。
雰囲気は長調に近いが、「Ⅶ→Ⅰ」の間隔が半音から全音に広がったため、力強さが生まれている。
| ド | ド♯ レ♭ |
レ | レ♯ ミ♭ |
ミ | ファ | ファ♯ ソ♭ |
ソ | ソ♯ ラ♭ |
ラ | ラ♯ シ♭ |
シ | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| エオリアン・スケール | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ | Ⅵ | - | Ⅶ | - | Ⅰ | - | Ⅱ |
| ▼移調すると… | ||||||||||||
| 自然的短音階 | Ⅰ | - | Ⅱ | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ | Ⅵ | - | Ⅶ | - |
| エオリアン・スケール | Ⅰ | - | Ⅱ | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ | Ⅵ | - | Ⅶ | - |
エオリア旋法は、長音階の第6音を主音とする旋法。その構成音は、自然的短音階(ナチュラル・マイナー・スケール)と同一。わざわざ「エオリアン・スケール」と呼ばれることは少ない。
普通の短調でよく用いられる「和声的短音階」「旋律的短音階」ではなく、「自然的短音階」にこだわることで短調との差別化を図ることになるが、結局は普通の短調とあまり変わらない。
| ド | ド♯ レ♭ |
レ | レ♯ ミ♭ |
ミ | ファ | ファ♯ ソ♭ |
ソ | ソ♯ ラ♭ |
ラ | ラ♯ シ♭ |
シ | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ロクリアン・スケール | Ⅱ | - | Ⅲ | - | Ⅳ | Ⅴ | - | Ⅵ | - | Ⅶ | - | Ⅰ |
| ▼移調すると… | ||||||||||||
| 自然的短音階 | Ⅰ | - | Ⅱ | Ⅲ | - | Ⅳ | - | Ⅴ | Ⅵ | - | Ⅶ | - |
| ロクリアン・スケール | Ⅰ | Ⅱ | - | Ⅲ | - | Ⅳ | Ⅴ | - | Ⅵ | - | Ⅶ | - |
ロクリア旋法は、長音階の第7音を主音とする旋法。その構成音は、自然的短音階の第2音・第5音をそれぞれ半音下げたものに等しい。その音階を「ロクリアン・スケール」と呼んだりする。
Ⅰ-Ⅴの音程が完全5度ではなく減5度になるため非常に使いづらく、用いられることは極めて稀。理論の上でも「形式上は存在する」のような扱いである。不憫。
| ド | ド♯ レ♭ |
レ | レ♯ ミ♭ |
ミ | ファ | ファ♯ ソ♭ |
ソ | ソ♯ ラ♭ |
ラ | ラ♯ シ♭ |
シ | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 長音階 | Ⅰ | - | Ⅱ | - | Ⅲ | Ⅳ | - | Ⅴ | - | Ⅵ | - | Ⅶ |
| イオニアン・スケール | Ⅰ | - | Ⅱ | - | Ⅲ | Ⅳ | - | Ⅴ | - | Ⅵ | - | Ⅶ |
イオニア旋法は、長音階の第1音を主音とする旋法。その構成音は、言うまでもなく長音階と同じ。エオリア旋法の時と違って、どうあがいても普通の長調からは抜け出せない。
教会旋法を対位法で使う場合、以下のような特徴がある(「パリ音楽院の方式による厳格対位法
」を参考にしている)。
あとの規則はどの旋法でも同じだし、旋法の説明から外れるので割愛。
掲示板
9 ななしのよっしん
2024/03/26(火) 12:35:46 ID: xvgxGrG5U6
10 ななしのよっしん
2024/03/26(火) 12:40:26 ID: xvgxGrG5U6
これらを駆使することで民族調やブルースなどの曲調を簡単に作れますしゲームや映画音楽を作る上には必須と言ってもよいほどの知識になるんですよね~
百聞は一見に如かず→百見は一聞に如かず
たまにはこういうのもいいんじゃないですかね
11 ななしのよっしん
2025/07/22(火) 19:28:52 ID: Nu9GVwz3Am
サガフロのBattle#5のイントロ
6/8拍子の所
フリギア旋法じゃね?
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/08(月) 18:00
最終更新:2025/12/08(月) 18:00
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