殺戮にいたる病

今ようやく分かった。セックスとは、殺人の寓意にすぎない。

犯される性はすなわち殺される性であった。

男は愛するがゆえに女の身体を愛撫し、舐め、噛み、時には乱暴に痛めつけ、そして内臓深くおのれの槍を突き立てる――。

男はすべて、女を殺し、貪るために生まれてきたのだ。

殺戮にいたる病とは、我孫子武丸の小説である。

導入

女性を絞殺したのち凌辱し、遺体の一部を切り取って持ち帰るという猟奇事件が発生した。

そんな中、引退した元刑事・樋口武雄のもとに警察時代の部下が、かつて世話になった看護師の島木敏子が殺人鬼の手にかかり乳房と下腹部を切り取られ死亡したことを告げに来る。

概要

我孫子武丸の代表作であると同時に、とあるジャンルの日本における代表的な作品の一つ。

キルケゴールやヘシオドスの引用を用い、複数の視点で殺人事件を描くエログロサイコホラー。

かなりショッキングな描写が含まれるので苦手な人は注意。

登場人物

蒲生稔

岡村孝子の歌を聴きながら殺人と凌辱を楽しみ、それこそが「愛」だと信じてやまないサイコキラー。

樋口武雄

64歳の元刑事。妻を亡くし、ときどき相談に乗ってくれていた敏子までこの世を去ってしまったことに強いショックを受けるが、彼女の妹の出現でこの事件の解明に乗り出す。

蒲生雅子

専業主婦。自分の息子が犯罪者なのではと疑い始めている。

島木かおる

敏子の妹。姉と違い行動力が強い。

斎藤信雄

金欠にあえぐタブロイド新聞の記者。

竹田信

犯罪心理学に精通する大学教授。

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関連項目

• 叙述トリック
• 我孫子武丸
• 小説作品一覧