資産(asset アセット)とは、簿記で使われる言葉である。
個人や団体が占有する有体物や無体物を財産という。その財産の中で、資本(capital 営利追求の事業活動の基金)として使われるものを資産という。
簡単に言ってしまうと、市場価値が高くて換金性がある財産を資産というのである。
財産と資産の違いについては、財産の記事の『資産と財産の違い』という項目に記述があるので、参照のこと。
簿記の世界では、ある時点における財務状況を示すため、貸借対照表が作成される。その左半分が借方で、左半分すべてが資産の部となっており、資産を書き入れていく。
借方(かりかた) | 貸方(かしかた) |
資産の部 | 負債の部 |
純資産の部 |
資産の部において、流動資産と固定資産を分類するのが、重要な作業となる。
現金(紙幣・硬貨)または銀行預金や、貸借対照表の基準となる日の翌日から1年以内に現金または銀行預金に変換される資産は、流動資産として扱われる。
現金または銀行預金に変換される予定がない資産、あるいは、現金または銀行預金に変換される予定が貸借対照表の基準となる日の翌日から1年を超えた先に設定されている資産は、固定資産として扱われる。
このように、1年以内に現金や銀行預金に化けるかどうかで流動資産か固定資産かを分類する。このことを一年基準(ワン・イヤー・ルール one year rule)という。
ただし、正常な営業取引の過程にあるものに限り、現金や銀行預金に化ける予定が1年を超える先に設定されている債権・製品(完成品)・仕掛品(制作中で未完成の物)は、流動資産に入れることになっている。このことを正常営業循環基準という。
実務上は、まず正常営業循環基準を適用して流動資産か固定資産かを決め、その後に、会社の本業以外の取引で発生するものに対して一年基準を適用して流動資産か固定資産かを決める。
会社の本業の商取引に関わる資産か、会社の本業の商取引に関わらない資産のうち貸借対照表の基準となる日の翌日から1年以内に現金や銀行預金に変換される予定のある資産を、流動資産という。
一般に、銀行が企業を評価するとき、資産総額の中で流動資産の割合が多いほど評価が高くなる。会社にとって、債権が銀行預金に化ける期日が現在よりも近ければ近いほど得である。支払期日が1日後の手形と支払期日が1万年後の手形のどちらが会社にとって有用かというと、これはもちろん前者である。そうした常識から、銀行は流動資産を重視している。
この項目と『固定資産』『繰延資産』の項目は、Wikipediaの勘定科目の記事を開きながら読み進めることをお奨めしたい。
紙幣や硬貨といった現金や、各種の銀行預金がこの分類に入る。定期預金なら、一年基準を適用して、満期まで1年以内のもののみが入る。他人の振り出した小切手もここに入る。
売掛債権は、会社の本業の商取引で得られる債権であり、売掛金と受入手形と電子記録債権の3つに大別される。
会社が商品を販売したとき、代金を即時に銀行振り込みしてもらったら流動資産の現金預金の数字が増える。ところが信用取引で支払いを猶予しているときは、会社に債権があることになるので、売掛債権の数字が増える。
棚卸資産は、会社の本業の商取引に結びついている品物を指す。
会社の倉庫に入っている商品の在庫がこの分類に入る。まだ完成していないが販売しようと思えば販売できる状態のものを半製品といい、まだ完成していなくて販売も不可能なものを仕掛品というが、それらもここに入る。製品の原材料や、製品を作る過程で必要となる消耗品もここに入る。
トヨタ自動車は、在庫を極限まで少なくすることを目指しており、それをかんばん方式という。これは要するに、棚卸資産の金額を減らそうとしているのである。
この分類には、色んなものが雑多に入る。
会社の営業以外の売り上げで非継続的に獲得した債権を未収債権と呼ぶ。飲食店が備品のコピー機を中古屋に売却したときに、即時に銀行預金を振り込まれず債権を得ることがあるが、その債権のことである。未収債権は、「銀行預金を振り込んでもらう約束」や手形や電子記録債権という形で得られるが、支払期日が1年以内なら、一年基準を適用して、流動資産の未収金に入る。
会社の営業以外の売り上げで継続的に獲得する債権がある。飲食店が持っている土地建物を他企業に貸し出して定期的に後家賃を得る、というのが典型例である。家賃というのは前家賃(先払い)と後家賃(後払い)があり、日本において民間の家賃のほとんどが前家賃である(資料)。前家賃を銀行振り込みで受け取ったら現金預金の項目の数字が増えるが、後家賃の場合は「銀行預金を振り込んでもらう約束」であり、債権となる。後家賃を受け取る期日が1年以内にやってくるのなら、この項目の未収収益の数字を増やすことになる。
会社が製造する商品の原材料(資産)や、会社が使用する工作機械(資産)の代金の一部を前払いすることがある。このとき支払った額を前渡金としてこの項目に記入する。この前渡金は将来入ってくる物品(資産)の一部である、という考えである。100万円の原材料を購入するとき10万円を先払いしたら、資産の現金預金が10万円減って資産の前渡金が10万円増える。そののちに原材料を受け取ったら、資産の棚卸資産が100万円増え、資産の前渡金の10万円を削除して負債の買掛債務を90万円増やす。
会社の家賃を数ヶ月分前払いすることがある。このとき支払った額を前払費用としてこの項目に記入する。この前払費用は、将来入ってくる借地権(資産)の一部である、という考え方である。
会社は、財テク目的で、国債や社債などの有価証券を購入し保有することがある。その有価証券の償還期日が1年以内なら、有価証券の項目に金額を書き入れる。
会社は、従業員や取引先に対し、お金を貸すことがある。その場合の返済期限が1年以内なら、短期貸付金の項目に貸した金額を書き入れる。
会社の本業の商取引に関わらない資産のうち、現金や銀行預金に変換される予定が無い資産や、貸借対照表の基準となる日の翌日から1年を超えた後に現金や銀行預金に変換される予定がある資産を、固定資産という。
土地、建物、工作機械、営業用の自動車、パソコン、テレビといった有体物の固定資産はここに分類される。
会社の保有する著作権や、会社の保有する特許権、実用新案権、意匠権、商標権(これら4つで産業財産権という。資料)は、知的財産権だが、この項目に分類される。
会社の保有する借地権、鉱業権、漁業権は、この項目に分類される。これら3つは、「不動産の上で活動する権利」と表現できるだろう。権利という抽象的なものが資産なので、無形固定資産になる。
会社が、土地を所有せずに工場を建てる場合、地主に家賃を払うことになる。家賃を払って入居するのは、流動資産の現金預金の数字を減らして、固定資産の無形固定資産の借地権の数字が増える、ということである。
会社は財テクとして無人の土地を所有することがある。無人の土地を所有した時点で、会社は多くの借地権を保持している。入居者が現れるたびに、会社が保有する借地権がどんどん減っていく。会社に対して家賃を払って入居する人が出ると、会社の流動資産の現金預金が増えて、会社の固定資産の無形固定資産の借地権の数字が減る。
電話加入権、水道施設利用権、電気ガス供給施設利用権、電気通信施設利用権といった権利も、無形固定資産となる。
会社が購入したパソコンのソフトウェアは、ここに分類される。
会社の営業以外の売り上げで非継続的に獲得した債権を未収債権と呼ぶ。飲食店が備品のコピー機を中古屋に売却したときに、即時に銀行預金を振り込まれず債権を得ることがあるが、その債権のことである。未収債権は、「銀行預金を振り込んでもらう約束」や手形や電子記録債権という形で得られるが、支払期日が1年を超えた先なら、一年基準を適用して、固定資産の「投資その他資産」の長期未収金に入る。
会社の営業以外の売り上げで継続的に獲得する債権がある。飲食店が、持っている土地建物を他企業に貸し出して定期的に後家賃を得る、というのが典型例である。家賃というのは前家賃(先払い)と後家賃(後払い)があり、日本において民間の家賃のほとんどが前家賃である(資料)。前家賃を銀行振り込みで受け取ったら現金預金の項目の数字が増えるが、後家賃の場合は「銀行預金を振り込んでもらう約束」であり、債権となる。後家賃を受け取る期日が1年を超えた先にやってくるのなら、この項目の長期未収収益の数字を増やすことになる。
会社は、家賃を数年分前払いすることがある。このとき支払った額の、1年先を超える部分を長期前払費用としてこの項目に記入する。5年分の家賃を払ったのなら、最初の1年分は流動資産の前払費用の欄に入れ、残りの4年分を固定資産の長期前払費用に入れる。
会社は、子会社(合名会社・合資会社・合同会社・有限会社)の経営を支配する目的で、子会社に出資し、議決権や地位を得ることがある。この場合、出資金の項目に金額を書き入れる。
会社は、子会社(株式会社)の経営を支配する目的で、子会社の株式といった有価証券を購入し保有することがある。この場合、投資有価証券の項目に金額を書き入れる。
会社は、財テク目的で、国債や社債などの有価証券を購入し保有することがある。その有価証券の償還期日が1年を超えるのなら、投資有価証券の項目に金額を書き入れる。
会社は、従業員や取引先に対し、お金を貸すことがある。その場合の返済期限が1年を超えるのなら、長期貸付金の項目に貸した金額を書き入れる。
長期貸付金を分割払いにすることがある。1000万円を貸し付けて、1年に200万円返すことを5回繰り返して5年で返済するなどのことである。この場合は、最初の1年目の200万円が流動資産の短期貸付金に入り、2年目~5年目の800万円は固定資産の長期貸付金に入る(資料)。
繰延資産は、簿記の技法として作り出されたものである。
資産というのは「資本となり得る財産で、換金性が高いもの」と定義されるが、繰延資産は換金性が無く、資産の定義に当てはまらない。資産の中の異端児といえる。
「繰延資産は、資産ではなく、費用の一種である」と考えるのが適切とされることがある。
繰延資産は、すでに代価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用をいう(資料)。
繰延資産の例は、創立費(法人を設立するためにかかった費用)、開業費(会社を設立したときの広告費など)、株式交付費、社債交付費、開発費である。
※この項の資料・・・記事1、記事2
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最終更新:2024/12/02(月) 05:00
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