遠近法とは、絵や図を描く時に対象の奥行きを表現するために使われる手法のことである。
平面に立体(空間)を表現しようとしても、紙は平面であるため折り紙でもしない限り画面は平面のままである。
そこで、様々な錯視効果を使って絵の中に三次元の空間があるように感じさせる。この手法が遠近法である。
近くの物は大きく描き、遠くの物は小さく描くというのも遠近法の一つである。
目で見た形をそのまま平面上に写すと、遠くの物が小さく見える法則に則って歪みを生じる。この歪みを正確に平面に写し取ることを目的とした図法が透視法である。奥行きを持つ線が傾いたり歪んで見えるが、この見た目の歪みのことをパースペクティブ、略してパースなどと呼ぶ。
例えば窓の外の風景を写し取る時に、窓に対しての視点を固定して窓ガラス上に風景をなぞり写せば、同じアウトラインを平面上に再現することができる。古典的な手法としては枠の中に十字に糸を張り、同じように画面にも十字線を入れることで座標を写し取ったり、カメラ・オブスキュラが活用されたりした。
さらにこの歪みは幾何学的に解明されていき、消失点を伴う「一点透視法」「二点透視法」「三点透視法」へと発展した。
平行な複数の線にパースによる傾きが生まれると、距離が離れるにしたがって線の間隔は狭まっていき、やがて同じ点に集まって消える。これが消失点の基本的な概念である。
例えば、地平線までまっすぐ伸びる線路の上に立って真正面を見た時、二本のレールは地平線に向かってまっすぐ伸びて行き、地平線と交わる位置で交差し消失する。線路の左右に建物が立っていた場合の外壁や窓枠のラインなども、線路と平行なものは全て一点に消失する。これが一点透視法である。
立方体を斜めから見た場合、片面の消失点と、もう片面の消失点の2つの消失点が画面の左右に発生する。これが二点透視法。
そして、超高層ビルなど縦方向にも強烈なパースがかかる場合は左右と上(あるいは下)にも消失点が発生し、三点透視法となる。
透視法によって「ほぼ見たまま」のリアルな表現が可能となったが、大きな欠点として画面周辺に向かうほどに歪みが大きくなるというものがある。そのため、巻物などのような視点の動きを伴うほどの幅広い画面の描写には向かない。
遠くの山などが空気の層を挟むことで霞がかかって見えたり、青みがかって見える現象をを利用し、遠景ほど濃淡を淡くしたり、細部を省略して描いたり、寒色寄りに統一して描いていくことで、空気の層を感じさせ奥行きを表現する手法。
モナリザなどの西洋画の背景や、東洋の山水画などに頻繁に利用される。
暖色は視覚的に前に出てきて見え(前進色)、寒色は奥まって見える(後退色)という効果があり、それを利用して遠近感を表現する技法。
前述の空気遠近法にも空気の層を描く手段の一つとして利用されているほか、例えば室内で側面の壁を暖色で、背面の壁を寒色で描くと遠近感が強調されるといった使い方もできる。さらに、平面的なデザインなどの色面構成においても利用される。
浮世絵などの日本の絵画では、遠景、中景、近景をそれぞれが引き立つように効果的に画面内に配置し構成することで、ダイナミックな遠近感を演出することに成功していた。
例えば、街道を歩く人を描くために、街道を遮るように近景に大胆に木を配置する構図を作り、中景となる街道を強調したり、遠景を引き立たせるために中景として崖を描き込んだりする。今風に言えば、遠景・中景・近景のようにレイヤー分けをして、レイヤー同士の距離感とダイナミックな画面構成で遠近感を感じさせる手法である。この手法を使えば透視法のように対象を歪めて描く必要が無いため、巻物などの中心が存在しない形態の画面とも親密度が高い。
この西洋の遠近法とは全く違った独自の遠近法は西洋の画家達にも大きな衝撃を与え、ジャポニズムの流行とともに、印象派やキュビズムに多大な影響を与えることとなった。現代絵画の父と呼ばれるポール・セザンヌが浮世絵の遠近法から大きな影響を受けていたことは有名である。
現在でも、漫画やアニメにおける画面構成で、配置と構成で見せる遠近法は強く息づいている。
写真や映像的演出などで、遠近法を逆手に利用した作品などが存在する。
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最終更新:2024/10/12(土) 18:00
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