ミスタープロスペクター(Mr. Prospector)とは、1970年生まれの競走馬、後に種牡馬。
ノーザンダンサー以来最も成功した種牡馬であり、おそらくこれからのサラブレッド血統の中でもっとも重要な父系となるであろうミスタープロスペクター系の元祖である。
父Raise a Native、母Gold Digger、母父Nashuaという血統。レイズアネイティヴはネイティヴダンサーの仔で最も成功した種牡馬。ゴールドディガーはステークス競走5勝にケンタッキーオークス2着の実力馬で、ナシュアはナスルーラの仔。血統背景はノーザンダンサーに似ている。母の名は「金採掘者」の意で、そこから「探鉱者」と名づけられた。
ぶっちゃけこの馬、競走馬としては全然大した事が無い。セリでは血統が評価されて22万ドルという物凄い値が付いたのだが、戦績は14戦7勝。重賞勝ちすらない。6ハロン(≒1200m)戦で2度のレコードを記録しているが、7ハロン(≒1400m)でも距離が長いという感じの超短距離馬であった。同期生であったセクレタリアトの爪の先にも及ばない戦績であったと言える。
ちなみに、馬体も良くない。社台ファーム総帥だった吉田善哉氏が「ネズミみたいな馬だ」と言ったそうだが、まったくその通りで、写真で見る限りではなんだか色が斑な鹿毛で、首は短く胴も詰まり、サラブレッドらしい伸びやかさが無い。
ところが、この馬が種牡馬入りすると化けるのだから、馬というのは本当に分からない。
馬主が所有していたフロリダ州の牧場で種牡馬入りすると、片鱗しか見せられなかった彼のスピードに惚れ込んだフロリダの馬産家が、フロリダが生んだ伝説的名馬ニードルズの半妹やケンタッキーオークス馬ネイティヴストリートなどの良血馬をこぞって連れて来た。
その甲斐もあって27頭の中から4頭のステークスウィナーを輩出。特にイッツインジエアはエクリプス賞最優秀2歳牝馬を獲得する活躍を見せ、これによってミスタープロスペクターもフレッシュサイアーランキングで1位を獲得。これでミスタープロスペクターは一躍注目を浴び、2年目産駒もフロリダ州産が多数ながら北米2歳リーディングサイアーに輝くと、1980年には種付け料が当初の約5倍となる4万5000ドルに上がり、3年目産駒ミスワキがサラマンドル賞を勝ち2年目産駒に続いて欧州でも成果を挙げ評価を高めた。
1981年にはケンタッキー州の名門クレイボーンファームが買収し移籍。すると出るわ出るわ、大物産駒が次々と登場。1987・88年にはリーディングサイアーを獲得するのである。
大まかなところを上げるだけでもケンタッキーダービーを勝ったフサイチペガサス、ブリーダーズカップ・スプリントを勝ったガルチ、ムーラン・ド・ロンシャン賞を勝ったキングマンボ、メトロポリタンHとベルモントステークスを連闘で勝ったコンキスタドールシエロ、プリークネスステークスを勝ったタンクスプロスペクトなどがいる。シーキングザゴールド、マキャベリアン、ミスワキ、*マイニング、ゴーンウエスト、ウッドマンなんかはどこかで聞いた事があるだろう。三冠競走でも子孫が幅を利かせまくっており、1982年から2019年までの38年間の間に36頭で43勝(うち三冠1回)もしている。
更に恐ろしいのが、産駒が次々と種牡馬として成功しているところである。キングマンボは日本でエルコンドルパサーとキングカメハメハの父となっているし、シーキングザゴールドはドバイミレニアムを出し、マキャベリアンはストリートクライを出し、ガルチは*サンダーガルチを出し、ウッドマンは*ハンセルやヒシアケボノを出し、更に孫には……。
も~、書くのも難儀である。後継種牡馬は300頭を超えるのでそれもむべなるかな。英語版Wikipediaには米三冠競走を勝った馬だけを抽出した系統表があるくらいである。
アメリカはもとより日本でもキングカメハメハが2年連続でリーディングサイアーになるなど勢いを増している。とにかく種牡馬としては軽いスピードをよく伝えており、アメリカのダートと日本の短距離には抜群の適性を見せ、日本やヨーロッパの底力系の牝系に上手い事スピードを上乗せさせる和合性の高さもある。
ノーザンダンサー系との相性も良いので、ノーザンダンサーの血が行き渡ってしまった欧州ではまだ伸びしろがあるのではなかろうかと思うし、日本でもキングカメハメハが良好な産駒成績を残しており、父系の発展が期待されている。
ミスタープロスペクターは1999年死亡。その年にも29歳だというのに種付けをこなしていたのだそうである。馬の29歳っていったら人間換算で100歳超えてるんではないかという高齢なのだが……。なんというエロ爺っぷり。なんつうか、やっぱりそれくらい生命力がなければ大種牡馬にはなれないのだろうなぁ。
| Raise a Native 1961 栗毛 |
Native Dancer 1950 芦毛 |
Polynesian | Unbreakable |
| Black Polly | |||
| Geisha | Discovery | ||
| Miyako | |||
| Raise You 1946 栗毛 |
Case Ace | Teddy | |
| Sweetheart | |||
| Lady Glory | American Flag | ||
| Beloved | |||
| Gold Digger 1962 鹿毛 FNo.13-c |
Nashua 1952 鹿毛 |
Nasrullah | Nearco |
| Mumtaz Begum | |||
| Segula | Johnstown | ||
| Sekhmet | |||
| Sequence 1946 黒鹿毛 |
Count Fleet | Reigh Count | |
| Quickly | |||
| Miss Dogwood | Bull Dog | ||
| Myrtlewood |
Mr. Prospector 1970
│Fappiano 1977
││Unbridled 1987
│││Unbridled's Song 1993
││││Arrogate 2013
│││*エンパイアメーカー 2000
││││Pioneerof the Nile 2006
│││││American Pharoah 2012
│Miswaki 1978
││Urban Sea 1989
│Conquistador Cielo 1979
│Crafty Prospector 1979
││*アグネスデジタル 1997
│*ダミスター 1982
││Celtic Swing 1992
│││Takeover Target 1999
│Woodman 1983
││*ティンバーカントリー 1992
│││アドマイヤドン 1999
││*ヒシアケボノ 1992
│*アフリート 1984
││プリモディーネ 1996
││スターリングローズ 1997
│Gone West 1984
││Elusive Quality 1993
│││Raven's Pass 2005
││││タワーオブロンドン 2015
││Zamindar 1994
│││Zarkava 2005
│*フォーティナイナー 1985
││*エンドスウィープ 1991
│││*サウスヴィグラス 1996
││││ラブミーチャン 2007
│││*スウェプトオーヴァーボード 1997
││││レッドファルクス 2011
│││スイープトウショウ 2001
│││ラインクラフト 2002
│││アドマイヤムーン 2003
││Distorted Humor 1993
│││Funny Cide 2000
│Seeking the Gold 1985
││*シーキングザパール 1994
││*マイネルラヴ 1995
││Dubai Millenium 1996
│││Dubawi 2002
│Machiavellian 1987
││Street Cry 1998
│││*ストリートセンス 2004
│││*ニューイヤーズデイ 2011
││││Maximum Security 2016
│Kingmambo 1990
││*エルコンドルパサー 1995
│││ヴァーミリアン 2002
│││ソングオブウインド 2003
││*キングズベスト 1997
│││*ワークフォース 2007
│││エイシンフラッシュ 2007
││*アルカセット 2000
││キングカメハメハ 2001 → キングカメハメハの記事参照
│Our Emblem 1991
││*ウォーエンブレム 1999
│Smart Strike 1992
││Curlin 2004
│Fusaichi Pegasus 1997
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最終更新:2025/12/10(水) 18:00
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