イチフジイサミ 単語


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イチフジイサミ

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イチフジイサミIchifuji Isami)とは、1970年生まれの日本競走馬鹿毛

ハイセイコー世代の「第三の男」と呼ばれた天皇賞

な勝ち
1973年日本短波賞
1974年オールカマー
1975年天皇賞(春)(八大競走)

概要

*オンリーフォアライフ、*メニナPsidiumという血統。
正直、今の線だとまったくピンとこないがとりあえずいこう。

1963年英2000ギニー種牡馬としてはイチフジイサミが代表産駒で、他に中央重賞クリヒデ産駒クリワイ中山大障害サクラオンリーなど6頭という、まあそこそこぐらいの実績
イギリスで、障害も走ったが10戦未勝利。イチフジイサミは第2
シディウムは1961年英ダービー種牡馬としては1966年愛ダービーセントレジャーを勝った*ソデイアムを輩出している。

1970年3月12日、静内町の千代田牧場で誕生。ニッポーテイオーホエールキャプチャウシュバテソーロなどで知られる静内の名門だが、当時はまだ千葉から静内に拠点を移して数年の頃であった。

オーナー中山記念勝ちフジイサミなど「イサミ冠名を用いていた保坂勇。中山競馬場松永雄厩舎に預けられた。

※この記事では馬齢表記は当時のもの(数え年、現表記+1歳)を使用します。

一富士二鷹第三の男

凡馬五戦会わざれば刮目して見よ

1972年7月15日東京・芝1100mの新馬戦にて、若手の岡部幸雄上にデビューしたイチフジイサミ。しかしデビュー当初の彼はまったく名の々なだった。この新馬戦、1番人気に支持されていたのはこの年のオークスタケフブキタケホープ人気に応えて勝利したタケホープの2近く後ろで、ブービー6番人気イチフジイサミは人気通りの6着に終わる。

その後もイチフジイサミは勝ち負けに遠い走りが続く。4戦から戦となる郷原洋行を迎えたが、掲示板には入るけれど……という程度で、勝ち上がりのはなかなか見えない。7戦では後の二冠牝馬ニットウチドリに2差をつけられての3着と、一流背中はるか遠く、結局3歳時は10戦走って未勝利のまま終える。

明け4歳、1月東京ダート1400mの未勝利戦を6馬身差で圧勝し、11戦にしてようやく初勝利。すると勝ち味を覚えて一皮剥けたか、続く同条件の200万下・アザレヤ賞を3着、芝に戻して中山・芝1800mの特別を2着とし、同条件のれんげ(200万下)と菜の花400万下)を見事に連勝。3歳時は10戦未勝利だったイチフジイサミは、そこから5戦3勝で一転してクラシックに間に合ったのである。

さて、この1973年といえば、言うまでもなく大井から殴り込んできた怪物ハイセイコーが大フィーバーを巻き起こしていた年。敗のまま弥生賞スプリングSを連勝し、皐月賞でも断然の1番人気に支持されていた。一方、重賞実績ゼロのイチフジイサミは16頭立ての10番人気そらそうよとしか言いようがない。
しかし中、スタートでやや出負けした結果最後方にじっと控えたイチフジイサミは、ハイセイコーが3でもう先頭に立ってみんながそっちに注している間に、他のが荒れた内を避けて外を回す中でいつの間にか最内をスルスルと上がっていき、直線入口でハイセイコーに果敢に並びかける。後のゴルシワープみたいな挙動で見せ場を作ったイチフジイサミは、最後は荒れた内を通った分だけ脚が止まったかハイセイコーに突き放されたものの、見事クラシック掲示板入りの4着に好走してみせた。

生産牧場にとっても厩舎にとっても馬主にとっても、デビュー時の期待値からすればこれだけで望外の結果だっただろう。しかしまだまだ、イチフジイサミの活躍はこれからだった。

第三の男イチフジイサミ

NHK杯は使わず、そのまま東京優駿へと直行したイチフジイサミ。しかしその背に戦の郷原洋行の姿はなかった。どうも2週間前に条件戦で落して怪をしていたようである。代打として津田昭を迎えたが、前走の好走は敢えて荒れたインを突いた名手郷原の手綱捌きあってのフロックと見られたか、ここでも27頭立て(!)の12番人気。単勝支持率は0.8%、おそらく単勝オッズは90倍台であった。もちろん大観衆が見に来ているのは、単勝支持率66.6%(!)を集めたハイセイコー敗二冠達成。しかし2分半後、大観衆は呆気にとられることになる。
今回もひっそりと後方に控えたイチフジイサミは、またしても群の中でひっそりスルスルと位置を押し上げていき、好位で先行するハイセイコーを4で射程圏内に捉えた。直線、抜け出しをはかるハイセイコーに、そのまま並びかけに行くイチフジイサミ。しかしそこへ、外から被せるように力強く伸びてきたのは、新馬戦で戦ったあの。9番人気タケホープ! ハイセイコー、イチフジイサミ、タケホープの3頭が横並びとなったが、ぐいっと力強く抜け出すのはタケホープ。力尽きるハイセイコーに、イチフジイサミはタケホープに食い下がったが、タケホープが内にヨレてきて内ラチ沿いに押し込められ、そのままタケホープに競り落とされて、1と3/4馬身差の2着現代だったら少なくとも確実に審議だろうが、当時は降着制度がなく失格騎手への制裁のみかの2択だったので……。
ダービーの栄には惜しくも届かなかったが、12番人気のわけのわからんが絶対的大本ハイセイコー(3着)に先着したのである。怪物の初に茫然とする大観衆の大半は「タケホープ? イチフジイサミ??? 誰だよ!!!」であっただろう。9番人気-12番人気の決着で枠連9560もついた。イチフジイサミの5には3番人気ウシュウエイトが居てこれである。当時馬単3連単があったらいくらになったのやら……。

何はともあれ「ダービーハイセイコーに先着した」の肩書きをゲットしたイチフジイサミは、続く郷原騎手が戻った日本短波賞では堂々1番人気に支持された。そしてダービー6着の2番人気ニューサントオークス3着の3番人気レデースポートを蹴散らし、見事重賞初制覇。皐月賞4着、ダービー2着がフロックでなかったことを示す。

夏休みを挟み、セントライト記念から始動。ここも1番人気に支持されたが、ダービー7着ヌアージターフのレコード勝ちに蹴散らされて1馬身半差の2着。
そして菊花賞では、もちろん1番人気ハイセイコーだったが、さすがにダービーほどの圧倒的支持はなく混戦ムード。ダービータケホープ京都新聞杯を惨敗して大きく評価を下げて6番人気まで落ちており、イチフジイサミはそのひとつ上の5番人気に支持された。レースはやはり後方から進めて追い込んだが、ハイセイコータケホープハナ差の死闘から3馬身離されて3着

ハイセイコータケホープの「終生のライバル」という構図が固まったその後ろで、皐月賞4着、ダービー2着、菊花賞3着のイチフジイサミは、ダービーハイセイコーに先着した実績も込みで「第三の男」という評価されてるんだか侮られてるんだかよくわからない立ち位置に納まることになった。

華やかなるブームの陰で

かしここから、イチフジイサミは苦戦の日々が始まる。ケチのつきはじめは有馬記念ニットウチドリスロー逃げストロングエイトの大金星が決まったその後ろで、後方待機のイチフジイサミはそのまま最下位11着に撃沈してしまう。

一度勝ち味を知ると好走する一方、大敗すると負けがついてしまうイチフジイサミは、このあとパッとしない走りが続く。明けて5歳初戦、津田昭を再び迎えたアメリカジョッキークラブカップタケホープに蹴散らされて4着に敗れると、東京新聞杯8着、ダイヤモンドステークスは最下位8着に撃沈。天皇賞(春)を諦め、郷原洋行が戻ってその前日の京王杯スプリングハンデキャップに向かったがここも5着。

しかし中1週で向かった東京・芝1800mのオープンを4馬身差で快勝すると、また勝ち味を覚えて復調する。日本経済賞は1番人気で3着、夏休み挟んで京王杯オータムハンデキャップは5着に終わったが、続くオールカマー同期ヌアージターフを蹴散らして重賞2勝を挙げると、続いて目黒記念(秋)を4着として天皇賞(秋)へと乗りこんだ。
この年の秋天タケホープ春天で勝ち抜け、ハイセイコー出血で回避したため一気に混戦ムードとなり、イチフジイサミはホウシュウエイトに次ぐ2番人気に支持される。逃げトーヨーアサヒが快調に逃げる中、いつも通り後方のインで進めたイチフジイサミは、内ラチ沿いの経済コースを通って直線へ。そのまま内ラチ沿いで抜け出しを図るが、隣から先に抜け出したのは5番人気カミノテシオカミノテシオが内にヨレてきたのでイチフジイサミは外に切り返して追ったものの、半馬身届かず2着タケホープハイセイコーもいなくてもまた斜行被害ちきれないのが「第三の男」という微妙称号の所以なのか……。

そして年末、ハイセイコータケホープのともに引退レースとなった有馬記念では、大観衆の前であえなくブービー8着に撃沈。やかなハイセイコーブームの終わりを、「第三の男」イチフジイサミはの注も浴びぬ日陰でひっそりと見送っていた。

天才児に古豪の意地を

ハイセイコータケホープが去ってもイチフジイサミの戦いは続く。明け6歳、始動戦の中山記念は4着、続くダイヤモンドステークスは3着。どちらも4歳ヒカルジンデンに敗れたが、有馬記念の大敗を引きずっていないのは好材料だった。

そして迎えた天皇賞(春)ハイセイコータケホープタニノチカラもいないだったが、ここには新たな絶対的大本命が名乗りを挙げていた。昨年の二冠馬、ここまで13戦11勝の「天才キタノカチドキである。関西としての支持も集めたキタノカチドキ50%を越える圧倒的な支持率を得たのに対し、2番人気に支持されたイチフジイサミだったが、単勝6.5倍、支持率11.5%と、これといった対抗がいない中で押し出された2番人気という感じあった。
しかし最高の仕上がりで当日を迎えたイチフジイサミは、剛腕・郷原洋行の手綱で、二冠馬に歴戦の古の意地を見せつけた。中は中団に構えると、後半ですーっと上がっていく得意のパターンに持ち込んだイチフジイサミは、4で外からすっと先頭に取り付いた。直線ではキタノカチドキとの全な一騎打ちとなったが、で稍重の馬場の中、キタノカチドキをすっとかわして先頭。必死に食い下がってくるキタノカチドキに対して最後まで差を詰めさせないまま、郷原騎手の猛ゲキに応え、堂々と1と3/4馬身差をつけて押し切った。

「第三の男」が6歳にしてついに手にしたの栄誉。稀代のアイドルとその宿敵がターフを去ったあと、その三番手に甘んじていた男が1歳下の二冠馬に世代の強さを見せつけた。――こう書くとナリタトップロードとか、そこまで行かずともグリーングラスのような渋い人気を集めそうな戦歴である。

だが……イチフジイサミの評価は、この勝利でも特に上がらなかった。

そして、栄光なき流転

結局のところ、イチフジイサミには判官贔屓を呼ぶようなドラマ性が足りなかったのだろう。血統は地味だし、上も実績ある名手。レースでの二度の斜行被害も大して注はされず。なによりダービー以降、注の集まるハイセイコーとの直接対決でこれといった見せ場を作れなかったのが痛かった。そして、春天制覇のあとの戦績もパッとせず、5戦して4着が最高。
最後はラストランになるはずだった有馬記念松永師が出走登録し忘れて出走できないまま引退という、あまりにも締まらない結末になってしまった。通算41戦7勝。

しかも、イチフジイサミの不幸はこの後も続く。引退して故郷の千代田牧場に戻ったイチフジイサミは、別の牧場種牡馬として購買されることになったのだが、なんとその牧場代金を払わず千代田牧場との間で裁判沙汰になったのである。
種牡馬としても全く人気を集めず、4年からもう種付けゼロになってしまったイチフジイサミは、この裁判の間になんと行方不明になってしまった。ええ……。

幸い、失踪から5年経って、イチフジイサミは鵡の個人経営の牧場で見つかった。そこではひっそりと当て馬をして暮らしていたという。故郷の千代田牧場に連れ戻されたイチフジイサミは、種牡馬として種付けを再開したが、以降も3年間で7頭に種付けしたに留まった。

1989年種牡馬引退したイチフジイサミは、静内の田原安田牧場に引き取られ、そこで余生を過ごすことになった。喘息を患い、流転の日々の苦労が刻まれたイチフジイサミの姿は、20歳という年齢以上に老けて見えたという。
そんなイチフジイサミにも、彼のそばで暮らしたいと静岡から静内に引っ越してきたという熱ファン女性もおり、田原安田牧場の人々には大事にされ、ようやく安寧の日々を過ごすことになった。

1992年10月30日、イチフジイサミは放牧中に転倒を繰り返し、喘息の症状が悪化。医の判断で、安楽死の処置がとられた。23歳だった。
彼のたてがみは、牧場の夫人と、彼のために移住してきたファン女性財布の中に収められたという。

血統表

*オンリーフォアライ
1960 黒鹿毛
Chanteur
1942 黒鹿毛
Chateau Bouscaut Kircubbin
Ramondie
La Diva Blue Skies
La Traviata
Life Sentence
1949 黒鹿毛
Court Martial Fair Trial
Instantaneous
Borobella Bois Roussel
Annabel
*メニナ
1963 鹿毛
FNo.13-e
Psidium
1958 栗毛
Pardal Pharis
Adargatis
Dinarella Niccolo Dell'Arca
Dagherotipia
Menke
1955 黒鹿毛
Nakamuro Cameronian
Nogara
Ann of Austria Fairway
Ann Gudman

クロスFairway=Pharos 5×5×5×4(15.63%)、Nogara 5×4(9.38%)、Blandford 5×5(6.25%)

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