積分とは、数学の分野のひとつであり、微分と合わせて非常に応用分野が広い。学校では「微分の逆バージョン」として教えられることが多いが、それが積分の定義なのではない。
例えば、ある道のりを車で1時間かけて走り、その間のスピードメーターの指した値を逐一記録したとする。この時、走行距離をスピードと時間から求めることにする。
もし、常に一定の速さで進んでいたのなら、その速さに時間を掛ければよい。しかし、走行中に加速、減速、停止を繰り返せば、その度にスピードメーターの針が動くため、速さをひとつに絞ることができない。しかし、速さの最大値と最小値はわかっているのである。これに時間を掛けることで、走行距離のとり得る値の最大値と最小値を求めることができる。つまり、走行距離はこの範囲内に存在しているのである。
では、走行距離を求めるにはどうすればよいか。その為には、さらに値の範囲を絞り込んでいけばよい。先ほどは1時間の間での速さの最大値と最小値を求めた。では、今度は前半30分と後半30分に分けて、それぞれの速さの最大値と最小値を求めることにしよう。それに時間を掛ければ、それぞれの区間での走行距離のとり得る値の最大値と最小値を求めることができる。最大値同士、最小値同士を足せば、全体での走行距離のとり得る値の最大値と最小値になる。
ここで重要なのは、前半後半に分けたときの速さの最大値は、全体での速さの最大値を上回らないことである。同様に、前半後半に分けたときの速さの最小値は、全体での速さの最小値を下回らない。このことから、分割したほうが、より値を絞り込めることがわかる。
このようにして、分割を限りなく細かくしていけば、走行距離のとり得る値の最大値と最小値はそれぞれある一定の値に近づくのである。その値が一致すれば、それが走行距離なのである。
このように、瞬間的な変化の割合から全体的な変化を求める操作を積分という。先ほどの例で言うと、道のりは瞬間の速さを時間で積分したものといえる。
ちゃんと説明しようとするとかなり長くなるんで、概略を説明するよ。まず、∫abf(x)dxを、f(x)≧0のときにグラフに囲まれた面積になるように定めるために、次のように考える。
まず、区間[a,b]を分割する。分割っていうのは、いくつかの区間に分けること。等間隔に分ける必要はないけど、「分割の大きさ」を「分割によって分けられた区間の最大の幅」定義しておくよ。分割が全体的に細かくなれば、これが小さくなっていくわけだ。逆に分割の粗い所が1箇所でもあると、他を細かくしても分割の大きさは小さくならない。
分割がひとつ与えられたら、それぞれの区間での最大値をとる。それに区間の幅を掛けて、合計する。すると、囲まれた面積はこの値より大きくならないね。それぞれの区間での最小値に関しても最大値と同じように計算すると、囲まれた面積はこの値より小さくならない。つまり囲まれた面積のとり得る範囲がわかるわけだ。
分割の大きさを0に限りなく近づけていった時、囲まれた面積のとり得る範囲が限りなく狭くなるならば、これを∫abf(x)dxと定める。これが定積分の定義。もっと厳密に知りたければ、Wikipediaとかを見ればいいと思うよ。
積分区間[a,b]のうち、aを固定して、bを変数のように扱うと、bの関数ができる。ただ、関数は通常xの式で書かれるから、積分区間を[a,x]とするよ。このままさっきの定積分の式にあてはめると、f(x)のxとかぶるから、fの変数はtとしておく。すると、∫axf(t)dtという式が得られる。これはaの値によって色んな式が出てくるけど、違うのはxと無関係な定数項だけ。これは∫axf(t)dt=∫bxf(t)dt+∫abf(t)dtという式からわかるね。つまり、ある関数F(x)が存在して、すべてのaに対し、∫axf(t)dt=F(t)+Cを満たす定数Cが存在する、ということ。F(x)はaの値によらずに定まり、Cはaの値によって変化するよ。このF(x)+Cを、f(x)の不定積分といい、∫f(x)dxと書く。
不定積分は、微分すると元の関数に戻る、という定理。元々別の概念であった微分と積分が正反対の操作であることを表したものである。しかし高校で積分を習う際に最初に書かれているので、これを定義だと思い込んでしまう人も少なからず存在する。積分の歴史的背景も、現代における積分の厳密な定義も、微分とは全く関係ないので、積分と聞いて「あ、微分の逆バージョンね」と即座に反応すべきではないだろう。
上に述べられてきたように、積分は面積を求めるために考え出されたのである。そこから定積分の概念が生まれ、不定積分へと発展し、微分積分学の基本定理が証明された。しかし日本の高校では、不定積分を微分する前の関数として教えられる。定積分の計算は不定積分を用いて行われ、定積分を用いて面積を計算するのはその後である。順序が完全に逆転しているのである。
実際、微分の定義は教科書に載っているが、積分の定義は載っていない。区分求積の問題はあるものの、それを不定積分を用いて解くのは本質的とは言えない。このように、高校数学では微分積分学の基本定理を前提として積分を教えているのである。確かに積分の定義は難解であるし、積分を計算の道具として使う人にとっては基本定理さえわかれば十分なのだろう。
しかしこれでは、積分の解釈が定義と違うものになるだけでなく、なぜ定積分を使って面積を求められるのかがわからない。小学校時代に、分数の割り算を教わったであろう。その際に、「ひっくり返して掛ける」と、計算の仕方だけ教えられたと思う。これでは、なぜ計算が成り立つのかまではわからない。そのため、違和感を拭い去れないまま計算を強いられた人が多いのではないだろうか。これは分数や割り算のちゃんとした定義が教えられていないからだ。積分も同じように、計算の仕方だけ教えられても、きちんとした理解には至らないのである。
すべての数学的概念には定義がある。しかし、それは教科書で教えられていないものも存在する。しかし、議論で前提になるのは定理よりも定義なのである。理系に進む人は特に、定義が何なのであるかをしっかりと理解する必要があるのではないだろうか。
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最終更新:2024/05/05(日) 17:00
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