「銀河英雄伝説」においてエルンスト・フォン・アイゼナッハを司令官とする艦隊には、実質的な司令官を務めている(ようにしか見えない)幕僚たちがいる。この記事ではいわば「中の人影の司令官」である三人について記述する。
「(クイッ)」
「全艦、概要!」
エルンスト・フォン・アイゼナッハといえば、「沈黙提督」の異名で有名である。その異名の通り、彼はその艦隊指揮において一言も声を発さず、ジェスチャーで指揮を取っている。ゆえに、その「無言の指令を解読」する優秀な副官なり参謀なりが必要となるのだが、言葉を介さずジェスチャーを解読しているにしては詳細すぎる艦隊運動を取っている例も多い。それ本当にアイゼナッハの命令したことか?
ともかく、アイゼナッハ艦隊が明確に敗北したことはないことを考えると、副官たちが優秀なのは間違いないであろう。繰り返し言うが、その命令がアイゼナッハの本当に意図したことだったのかはなんとも言えない(少なくとも当人は別に怒ったりしてはいないようだ)。
この記事では、主に石黒監督版OVAの映像描写をもとに、特に複雑ないくつかの命令について翻訳の解題を試みているが、むろん最低限の命令に従って幕僚が必要と思われる対処を独自に追加して命令している可能性も高い(それはそれで幕僚の即時の判断力が高すぎる気もするが)。
「(クルクル)」
「や、グリーセンベック参謀長殿!」
まず、参謀長としてグリーセンベック大将がいる。CV.高木渉(石黒監督版OVA)。
シヴァ星域の会戦において、アイゼナッハの参謀長を務めたのが彼である。会戦中盤、皇帝ラインハルトの不予による帝国軍最高指揮の混乱を察知したアイゼナッハが無言のジェスチャーで下した命令を解読し、艦隊を動かした。アイゼナッハの手振りは「左手を軽くあげ、立てた親指を前後に動か」すもので、この命令により、帝国軍左翼で最前線の混戦下にあったアイゼナッハ艦隊は、新たな命令への即応態勢を整えるべく後退を果たしている。
石黒監督版OVAにあっては、第108話(会戦終盤)、敵手イゼルローン軍に対し黒色槍騎兵艦隊が始めた突進に応じ、アイゼナッハ艦隊が側面攻撃の態勢をとった際の命令が特に目立つ。
アイゼナッハ「(左掌を地面に平行なまま左に振り、掌を腹部に向けつつ前に戻し、続けて掌を前に向けて胸の高さまで持ってきて振り下ろす)」
敢えて解題を試みると、以下のような対応になると考えられる。
ジェスチャー | 左掌を平行なまま左に振り | 戻した掌を振り下ろす |
---|---|---|
翻訳解説 | 六時から九時の方向に扇型に展開 | 逃げ崩れた敵を狙い撃つ |
「(ヒョイッ)」
「は、グリース少佐であります」
石黒監督版OVAのオリジナルキャラクターであるが、副官としてグリース少佐がいる。CV.光岡湧太郎。
第72話、マル・アデッタ星域会戦中盤で、司令官の後退命令を艦隊に伝達する役割を務めている。
なんとなくニュアンスとしては判らなくもない。アイゼナッハの命令伝達例としては簡単なものの一つである。
また、幼年学校からアイゼナッハに配属された従卒の少年に「指パッチン一回でコーヒー、二回でウィスキーだ。四分以内で!」(意訳)と教えた「副官」も、石黒監督版OVA作中ではグリースとされている。ところで、彼はいったいどこでアイゼナッハの指パッチンの意味を知ったのだろうか。もしかしてアイゼナッハは飲みたくもないコーヒーやウィスキーを飲まされているのではないだろうか。まさか……
「(フルフル)」
「は、シャウディン中将閣下!」
同様にOVAオリジナルながら、大親征時の参謀長を務めたのがシャウディン中将である。CV.櫻庭裕士。
こちらは第81話、回廊の戦いにおいてアイゼナッハの通訳を務めている。戦闘後半、アイゼナッハ艦隊がヤン艦隊を分断したものの、結果として挟撃を受けることになったときのことである。
なんという見事な超絶意訳。ある程度理解が及ぶ範疇では、以下のように考えられる。
ジェスチャー | 右手を握り親指を立てる | 腕を下に振る |
---|---|---|
翻訳解説 | 右翼部隊 | 敵を迎撃? |
「隊列を整えて隙を作るな」のような常識的な要素は、同じ戦況を見ている参謀長として自ら補っている可能性も高いものの、司令官も頷いているので意に反してはいないのだろう(たとえこの出征中ずっと2杯のコーヒーを拒否できずにいるとしても、である)。
また、この少し前、アイゼナッハは「左手を左に軽く振って戻す」というジェスチャーをしている。このときシャウディンに台詞はないが、会戦図で示されるアイゼナッハ艦隊の動きを見る限り、「敵前線部隊を迂回し左側から回り込め」という命令であると解釈されたようだ。
「(スーッ)」
「全艦、関連動画を整えて隙を作るな!」
銀河英雄伝説Ⅳを銀英伝キャラと東方キャラがプレイする、というコンセプトの動画。
アイゼナッハには1マスずれてる人の心が読める妖怪、古明地さとりがついている。なんという名副官。
「関連項目」
「あいつ、喋れたのか!?」
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