B787(Boeing 787)とは、アメリカ合衆国のボーイング社が開発した、ワイドボディ・ジェット旅客機である。
愛称はドリームライナー (Dreamliner)。
概要
大きさとしては200~300人乗り前後の中型クラス旅客機にあたり、おおざっぱに言えば同社のボーイング767の後継機。
正確には767よりも多少大きいため、もう一つ上の大きさの777の一部クラスの後継機なども兼ねる。
当初ボーイングでは従来速度の2割増しである遷音速(音速の少し下)で飛行する、「ソニック・クルーザー計画」を推し進めていたが、9.11テロ以降の航空不況や燃料費高騰の影響を受け、後の787となる7E7計画に改めることとなった。
何が新しくなったのか
飛行性能としては、従来のジェット旅客機同様に亜音速領域の速度を飛ぶ。
しかし、その飛行速度や飛行高度や航続距離は国際線用の大型機に匹敵するものであり、従来の中型機の枠を越えた性能を持っているため、旅客便の増加によって混雑した空を飛び越えるように「より高く、より速く」飛ぶことが可能となった。
また、従来では大型機が必要だった長距離国際路線に対し、787(中型機)の投入が可能になるため、より柔軟に直行便などを設定できる。
技術的な面では、従来アルミ合金が主に使われていた機体構造材を、胴体や主翼などを中心に炭素繊維複合材(CFRP)へ大胆に置き換えられている。
更に、従来はエンジンの圧縮機から抽気した圧縮空気(ブリードエア)を使っていた与圧空調装置や、翼の凍結防止装置なども電気式へ改良。
エンジン始動も、従来の圧縮空気ではなく、エンジン内蔵の発電機兼スターターモーターを使った電気式へ。
ブレーキも油圧から電気式のものへと、ある意味「ほぼオール電化」とも言える従来旅客機からの変更がなされた。
これらブリードエア系統の廃止、油圧系統の削減などにより高圧配管やダクトのメンテナンスコストを削減し、エンジンを推進力と発電の役割に専念させることで、燃費の削減を図っている。
しかしながら、上記数々の新機軸のために開発は難航し、計画は大きく遅延することにもなった。
で、乗客にとっては何が変わるの?
- 客室の乾燥が低減される
従来機ではアルミ製胴体の腐食防止のため、やむなく客室はカラカラに乾燥させていたが、胴体素材の変更により加湿器を装備可能となった。 - 耳痛が起こりにくい
胴体が高い圧力に耐えられるようになったため、従来では2400mの高度に相当する機内気圧だったものを、高度1800m相当にまで機内を与圧することが可能になった。 - 窓が大きく・ウインドウシェードが電子式シェードへ
胴体素材の強化により、従来型よりも窓の大きさが拡大された。
更に、従来では物理的にスライドさせ外光を遮断していたウィンドウシェードが、自動車の自動防眩式バックミラーなどに用いられるエレクトロクロミズムを用いた電子式シェードへ変更。
窓の色の濃さを変えることができるため、眩しさを低減しつつ外の景色を楽しむことも可能。
日本での導入状況
運航開始
B787は日本の全日本空輸(ANA)がローンチカスタマーとなり、世界各国の航空会社から発注された。
2011年9月28日に第1号機が日本に到着、1か月間の操縦訓練飛行を行った後、10月26日の成田~香港間でのチャーター便で世界初の商業運航を行った。
また同年11月1日からは羽田~岡山・広島線で定期運航も開始された。
ANAが受領した機体のうち、第1・2号機のみ特別塗装が施されている。
通常のANA機のトリトンブルー2色カラーではなく、3本の青い帯を導体に巻いたような塗装が特徴的。
第3号機からは通常のANA機と同じ塗装となっている。
ただし、2014年2月までに受領した機体にはすべてB787だと分かりやすいように、機体前方側面に「787」のロゴが入っている。
同じ日本の航空会社では、日本航空(JAL)もB787を発注している。
ただし、ANAが国内線へ集中投入しているのに対し、JALは国際線のみの運航となっている。
ANAから遅れること半年の2012年4月22日に成田~ボストン線で運航が開始された。
現在では成田・羽田・中部・関西の4空港から東南アジアや欧米各国への運航となっている。
ちなみにJAL機には特別塗装などはされていないため、他機種と紛らわしい。
似たようなサイズのB777、一部路線で併用されるB767との違いは以下の通り。
- B787のエンジンには、ギザギザの縁が設けられている。
- B777は後脚の車輪は3組。B787とB767は2組。
- B767・B777は機首部分が弾丸のような円錐状。B787は新幹線のように下部から上部へかけての流線型。
バッテリー不具合などによる運航停止
2011年11月の運航開始以来、機材トラブルによる欠航や遅延が度々発生していた。
- 1月7日、アメリカのボストン・ローガン空港でJAL機が駐機中、バッテリーから発火。
- 1月9日、同じくボストン・ローガン空港で離陸するため地上走行中のJAL機から燃料漏れ。
- 1月16日、ANA機が飛行中に客室内に煙が充満、異常事態を知らせるランプが点灯したため高松空港へ緊急着陸。
このように重大な事故が立て続けに発生した事で、1月16日にはANA・JAL共に運航を一時的に停止。
アメリカ連邦航空局はこの事故を受けて、全世界の航空当局に運航の一時停止を命じた。
事故原因は多数の機器の電子化に伴い、大容量化されたバッテリーの影響であった。
そのため、バッテリー改修を行うまでの間、B787が運航されていた路線では代替機材による運航となり、一部路線では欠航も相次いだ。
2013年4月から改修作業が開始され、5月16日には121日ぶりの飛行を再開。
5月26日には国内線で運航が再開された。
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