クローズド・サークル 単語

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クローズドサークル

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クローズド・サークルclosed circle)とは、推理小説の用(というかサブジャンル)。

「密室」と混用・混同されることがあるが、詳しくは後述。

概要

吹雪で山を下りることができなくなった山の山荘、で連絡が来られなくなった絶の孤など、外部との行き来および連絡が不可能である閉鎖環境のことをす。また、そういった閉鎖環境舞台にした作品を示すサブジャンルでもある。

吹雪の山荘・絶の孤が代表的だが、外部との行き来と連絡が不可能ありさえすればクローズド・サークルは成立するので、「宗教団体の施設内」「核シェルター内」「ハイジャック中の飛行機内」「大地震で崩落したビルの地下駐車場内」「故障したエレベーター内」など、非常に様々なクローズド・サークルが存在する。

「この中に殺人犯がいるかもしれないのに同じ部屋にいられるか! は自分の部屋で寝る!」という死亡フラグはクローズド・サークルのお約束

アガサ・クリスティそして誰もいなくなった』を筆頭に、クローズド・サークルでの連続殺人本格ミステリというべきジャンルである。近年は携帯電話の普及で「外部と連絡が取れない」という状況が設定しにくくなり、そのためクローズド・サークルは書きにくくなったとも言われるが、現在も手を変え品を変え、様々な作品が生み出されている。

ちなみに世界最初のクローズド・サークルを舞台にしたミステリがどれなのかははっきりしていないが、大西洋横断中の舞台となるモーリス・ルブランの短編「アルセーヌ・ルパン逮捕ルパン逮捕される)」(1905年)が初という説がある。ちなみにこれは怪盗アルセーヌ・ルパンの初登場作[1]。長編ではエラリー・クイーンの『シャム双子』(1933年)がクリスティの『オリエント急行の殺人』(1934年)や『そして誰もいなくなった』(1939年)よりいが、もっとい作例があるかもしれない。

日本では、実は新本格以前にはクローズド・サークルものの作例は多くない。代表的なのは西村京太郎『殺しの双曲線』(1971年)あたりか。本格ミステリといえばクローズド・サークルでの連続殺人、というイメージの形成は、綾辻行人十角館の殺人』や有栖川有栖の《学生アリスシリーズをはじめ新本格以降にクローズド・サークルものの名作が多数書かれたことや、『金田一少年の事件簿』や『かまいたちの夜』の大ヒットによるところが大きいだろう。

クローズド・サークルの利点

本格ミステリにおいてクローズド・サークルを舞台にする利点は大きく言って3つある。「容疑者の限定」「警察の排除(それによる名探偵の活躍)」そしてスリルサスペンスである。

容疑者の限定
本格ミステリにおいては、犯人は登場人物の中にいなければならない。しかし、たとえば中での殺人事件などでは、通りすがりの物盗りなど、物語とは全く関係の人間の犯行である可性を厳密に排除することは困難である。
そこで、外部との行き来が不可能閉鎖環境内で事件を起こせば、自然犯人閉鎖環境内のごく少数の人物に限定することができ、作者読者の間での犯人当てゲームとしての純度を高めやすい。
警察の排除
警察による科学を使えば、名探偵がわざわざ論理的な推理をしなくても犯人に辿り着けてしまう可性は高い。しかし外部との行き来が不可能、助けをめることもできない状況では警察も事件に介入のしようがない。加えて、犯人を突き止めないとどんどん被害者が増えてしまうかもしれない。そのため、名探偵が積極的に事件に介入し、論理的な推理で犯人を突き止めるという本格ミステリ謎解きの過程に物語上の説得が生まれる効果がある。
なお、警察全に排除した素人だけでは死亡定時刻など最低限推理に必要な情報すら得られなくなりがちなので、検視のできる警察官医師が現場にたまたま居合わせるということはよくある。
スリルサスペンス
本格ミステリは特に事件発生から解決までの間の捜シーンが退屈になりがちだが(例:エラリー・クイーン)、クローズド・サークルで連続殺人というシチュエーションでは、逃げられない状況下で次々と死者が出ていくこと、同じ閉鎖環境内にいるかが間違いなく犯人であることによる疑心暗鬼などがスリルサスペンスを高め、ハラハラドキドキの面さで読者を惹き付けやすい。

クローズド・サークルの分類

クローズド・サークルは、「なぜその場所がクローズド・サークルの状態になったか」の原因で、おおよそ三種類に分類することができる。

犯人の意志によるクローズド・サークル

クローズド・サークルの状況を作ることが、殺人犯自身の意志によるものである場合。を落としたり、パンクさせたり、モーターボートを故障させたりするなどして、犯人自身が関係者を現場に閉じこめてしまうパターンのもの。

現場をクローズド・サークルにすること自体を計画に組み込んだ計画殺人ということになるため、「犯人にとって現場をクローズド・サークルにすることにどんなメリットがあるのか」ということが問われやすい。ターゲットを一箇所に集めて殺しやすくするため、という程度では「一箇所に集めて警させるより、1人ずつで襲撃した方がいいのでは?」というツッコミを入れられがちなので(そのツッコミにも「中で1人ずつ殺す方がリスク難易度が高い」という反論はある)、どんな合理的な理由を考案するか、作者の腕の見せ所である。

自然災害などの不可抗力によるクローズド・サークル

崖崩れ一のがふさがってしまった、突然で連絡が来られなくなったなど、犯人の意志とは関係にクローズド・サークルが成立してしまったパターンのもの。

この場合、状況が善されれば救助が訪れ、警察が介入してくることになるが、前述の通りクローズド・サークルの状況では容疑者がごく少数に限定されるため、警察に疑われることは避けがたく、犯人にとっては非常に不利になる。このため、犯人には「なぜ普通よりも不利になるクローズド・サークルの状況でわざわざ事件を起こしたのか」という理由が問われることになる。

犯人以外の人物の意志によるクローズド・サークル

宗教的な理由で関係者が現場から離れられない、政治的な理由で警察を呼べないなど、犯人外の人物の意志によってクローズド・サークルになってしまう状況。この場合、物理的な意味ではクローズド・サークルでもなんでもない(逃げようと思えば逃げられるし、外部と連絡を取ろうと思えば取れる)のに、関係者には心理的に現場に囚われているという状況であることが多い。

このパターンの場合、犯人がそうなることを織り込み済みだったか否かが問題になる。織り込み済みだった場合は、その状況で事件を起こすことの必然性が問われる。犯人にとってもクローズド・サークルになったことが想定外だった場合は、犯人想定外の状況にどう対処するか、名探偵がそれを見抜けるかという頭戦のようなシチュエーションになることもある。

密室との違い

クローズド・サークルは密室と混同・混用されることがあり、クローズド・サークルの状況をして「密室」と呼ぶことがある。たとえば走行中の列車内で殺人が起きた場合に、走行中の列車内を「走る密室」と形容するとか。しかし、ミステリーサブジャンルとしての「クローズド・サークルもの」と「密室もの」は異なる概念である。

ミステリーにおいて「密室」とは、基本的には閉ざされた部屋のことをし、「密室もの」とはふつう「密室殺人もの」のことである。確かにクローズド・サークルを「密室」と呼ぶのは表現・形容としては間違ってはいないのだが、誤解を招く表現になりがちなので留意されたい。

じゃあ「クローズド・サークル」と「密室もの」は具体的にどう区別すべきかというと、

  • クローズド・サークル:被害者犯人名探偵など関係者全員が密室の内側にいる状況
  • 密室もの:関係者のうち、犯人など密室の内側にいなければならない人物がいない状況

というのが正確なところだろう。クローズド・サークルの場合は「犯人か(フーダニット)」、密室ものの場合は「どうやって密室に出入りしたか(ハウダニット)」が中心的なになる(ここを意図的にズラして驚かせる作例もあるが、話がややこしくなるので触れない)。

大百科に記事のあるクローズド・サークルの作品

ほか、『金田一少年の事件簿』『名探偵コナン』などのエピソードにも、クローズド・サークルを舞台にしたものは多い(前者は特にクローズド・サークルの事件の割合が高い)。

関連項目

脚注

  1. *ついでに言えば、アガサ・クリスティの某有名作品より20年以上く同種のトリックを使用しており、そのトリックものの元祖でもあるかもしれない。
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