人権(ジンケン)とは、オンラインゲームやTCGなどにおいて、所持していることが前提となるようなキャラクターや武器、カードのことを指す。
同様の意味を持つ言葉に『環境(キャラ)』や『トップメタ』などがあるが、その中でもかなり強い意味合いを持ち、『持っていないとはじまらない』くらいの意味を込めていることが多い。
概要
元来の人権(Human Rights)の意味は人間が持つ権利を指し、特に『自然権としての人権』『人間が生まれながらに持っている人間らしく生きるための権利』などを指す。そして人権がないという状態(より正確に言えば『人権を「認められていない」状態』)は、人として生き、生活することを認められていない状態となる。
ネットミームにおいての人権はそこから派生して、『特定のキャラクターや武器、カードがなければマトモにゲームをプレイすることが出来ない』を意味することになる。例えば、
といえば、デュエル・マスターズにおいて《天災 デドダム》というカードを持っていないと(対人戦で勝利を期待できるような)デッキが組めない、という意味合いの発言となる。
特にランダム性アイテム提供方式(ガチャ)を有するソーシャルゲームアプリではプレイヤーごとに所有するキャラクターやアイテムなど(以下「資産」と表記)が異なることが当たり前であり、バランスブレイカーになり得るような資産を持っているかどうかで有利不利の差が大きく付く。これが対戦ゲームとなると特定の資産を持つプレイヤーがそうでないプレイヤーに対し有意に勝率が高いということが起き得る。こういったケースでは、「そのアイテムを持っていないとゲームを快適にプレイすることが困難」「対人戦でそのキャラクターを使用せずに勝ち抜くことは困難」となるため、そういった資産を指して『人権(あるいは人権キャラ、人権装備など)』と呼ぶ。
また、資産以外にも「経歴(重要なイベントを開催している時期にゲームをしていたかどうか)」、「環境(使用端末、通信速度、遊べる時間帯など)」、「リアルマネー(課金額に応じて便利機能が解放され、無課金者との間に絶対的な差が付いてしまうゲームもある)」など、人権剥奪の理由は多岐に渡る。人権の無い者は攻略情報を探そうにも、「人権キャラをどう活用するか」という方向でのアドバイスしか見つからず参考に出来なかったりする。その結果、プレイ意欲が削がれて引退してしまったりアンチに転向したりする者も多い。
ここからさらに派生して、そのキャラクター以外の弱いキャラクター、あるいはそのキャラクターを所有していないプレイヤーへの煽りとして『人権がない』と表現されることがある。
元来は「人としての権利」といった非常に重い意味を持つ言葉であるが、これをあえてゲーム内キャラ・カードといったカジュアルなものに用いることで、「文面から受ける印象と実際の内容の落差によるおかしさ」が見出されてきたと考えられる。
非ゲーム用語としての「人権」
上記のミームが広まるにつれ、オンラインゲームやTCG以外の界隈でも徐々に転用が見られるようになった。「当然与えられるべきものが与えられていない状態」のことを「人権がない」と表現するようになったのである。例えば以下のような用例。
ここまでくるとかなりきな臭い表現になってしまう。あくまでゲーム内の物に用いられているからユーモラスな表現として扱われてきたものが、人に対して用いた場合は本来の用法での「人権」に意味が近くなってしまい、ミームとしての範疇を超えてしまっているのがわかるだろう。
それでも、自虐的に用いる場合はそこまで問題になることはなかったが、SNSが発展していくごとに特定の素養がなければ承認されない、といった意味での人権(社会的承認)の認識が広まりつつある。
プロゲーマーによる炎上騒動
2022年2月15日、対戦格闘ゲーム『鉄拳』のプロプレイヤーだったたぬかな氏が、自身のMildomにおける配信のなかで、男性に対し、『身長170cm以下の男性は人権がない』といった内容の発言を行った。たぬかな氏は日本国内で女性で2番目にプロプレイヤーとなった、いわゆる注目度の高い人物であり、そういった立場の人間が「身体的特徴を理由に差別をしている」というのは当然批判の対象となった。翌2月16日にはチームから謝罪が発表され、更にその翌日2月17日には所属チーム「CYCLOPS athlete gaming」の運営元企業ブロードメディアeスポーツが選手契約を解除すると発表した。
これらのことは、『たぬかな』の記事に詳しい。
本人はあくまでネットミームとしての『人権』を発言したものと当初は主張していたが、このようにゲーム界隈から一歩離れたところにおいては意味が全く異なる「通じない」言葉であり、特に他者に対して使えば『人権』が持つ本来の意味でしか受容されない。本来の意味として捉えた場合、上記発言は差別的なものとしか受け取れないのである。(彼女が本当に差別的思想を持っていたのかどうかは不明。)
ネットミームにはこのように「あえて強い表現を用いることで生まれる落差」がユーモラスであるとして広まる傾向がある。時と場合を十分に考慮しなければ思わぬ反発を招くことになる。TPOを十分に把握して使うようにしたい。もしTPOを把握できないのであれば使うべきではないだろう。
関連リンク
- 人気女性プロゲーマー炎上の不適切発言「人権ない」、じつはゲーム用語(スラング)(篠原修司) - 個人 - Yahoo!ニュース
- たぬかな 鉄拳 - ゲームのライブ配信&実況ならMildom(ミルダム)
- 問題となった配信。
- CYCLOPS、「鉄拳」プロ たぬかな選手の不適切発言を謝罪 - GAME Watch
関連項目
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