反実仮想とは、思考実験の一つである。
概要
自然科学と異なり、社会科学では対照実験を行うことができない。「Aを行った(Aだった)場合」と「Aを行わなかった(Aではなかった)場合」との結果の違いは推測に頼るしかない。あくまでもこの推測は不確実であるため、論争の火種となりやすい。特に論争になりやすいのが戦争の勝敗や大きな政治・経済・社会的決定である。
- 日本が戦争に負けていなかったら経済発展はできなかっただろう。
- 原爆が落とされなかったらもっと多くの人が死んだはずだ。
- 小選挙区制に変わってなかったら政権交代も起きなかっただろうに。
- ブッシュが2000年の大統領選挙で当選していなかったらイラク戦争は起きなかったはずだ。
歴史において「もしも」は禁物だとされているが、物事の因果関係を推論する社会科学においては何らかの反実仮想は不可欠である。対照実験ほどの精度はないものの、当時の状況の精査によってある程度の推論を行うことも可能である。もちろん不確実性を受容し、「どうなっていたかわからない」とすることのほうが、アカデミックな観点からは、より誠実なのかもしれない。
一つの出来事に対する不確実な推論を補完するため、似たような事例を援用して、疑似比較(疑似対照実験)を行うことが推奨されている。
ただし反実仮想が推論に有効でありうるのはその直後の出来事に対してである。10年後、100年後には波及効果によって予測不可能なほど歴史が変わっているに違いない。反実仮想は長期的な影響を推論するには不適切である。
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