衝撃波(英: shock wave)とは、流体(空気等)の圧力が非常に急激に変化するような面である。
概要
流体の圧力を急激に増加させるような波を「圧縮波」と呼ぶが、衝撃波というのは大雑把に言えば圧縮波のうち、その圧力変動が急激で不連続(徐々に圧力があがっていくのではではなく、低圧状態からいきなり高圧になる)なものを言う。
音も圧力の波だが圧力変動が微小なため、衝撃波とは区別される。また圧力変動が微小ではなくとも圧力変動が十分に緩やかな圧縮波は衝撃波とは区別される。
衝撃波の説明のため、空気中を衝撃波が通過するような状況を考える。衝撃波が気体を通過するということは、気体が衝撃波を通過するということでもある。気体が衝撃波を通過すると急激かつ断熱的に圧縮され密度(単位体積あたりの質量)と温度が上昇する(これを断熱圧縮と言う)。十分に緩やかに断熱圧縮された気体は十分に緩やかに断熱膨張させることによって圧力、密度、温度が元の状態に戻る。このような断熱圧縮や断熱膨張を断熱可逆過程もしくは準静的断熱過程と言うが、衝撃波により断熱圧縮された気体は断熱膨張だけでは元の状態に戻すことができない。
これはエントロピーと言われる不可逆性の指標が断熱可逆過程では一定に保たれるのに対し、衝撃波による断熱圧縮では増大するためである。緩やかな圧力波では圧力波内部での摩擦や熱伝導の影響が無視できるのに対し、衝撃波による大きな速度変化や温度勾配(空間的な温度変化の急激さ)は衝撃波の内部で摩擦や熱伝導といった不可逆的な変化を発生させ、その結果エントロピーが増加する。
気体のエントロピー変化は、変化の前後の圧力の比率、密度の比率、温度の比率のうちいずれか2つがわかれば計算することができる。また衝撃波前後の密度比と圧力比の関係を表すランキンユゴニオ方程式という数式があり、衝撃波通過前後の圧力比から密度比を計算できる。そこでランキンユゴニオ方程式を満たすような圧力比と密度比をエントロピーの計算式に代入すると、必ずエントロピーは増大する。逆に言えば衝撃波を逆再生したような波(不連続的に膨張する波)はエントロピーが減少することを意味するが、断熱された物体のエントロピーが減少することは起こらないため、この事実は衝撃波を逆再生したような波つまり膨張衝撃波は実現不可能なことを表している。
また衝撃波の速度は衝撃波前後の圧力比が大きいほど、また衝撃波が通る気体の温度が高いほど大きい。
十分に微弱な衝撃波は音速と同じ速度で進行する。
衝撃波の形成
衝撃波の形成原因として典型的なのが「圧縮波が重なる」ことであり、有名な例では戦闘機等が超音速で飛行する時である。
戦闘機が飛行することによって戦闘機前面は圧力が大きくなるが、この変化は圧縮波として音速で伝わっていく。戦闘機が音速未満の時は移動により発生した圧縮波は時間の経過とともに戦闘機から離れていくが、超音速飛行する戦闘機の前面に発生した圧縮波のうち戦闘機の進行方向に伝わるものは、圧縮波の進行に戦闘機が追いつきそこで新たな圧縮波が発生するため、圧縮波が重なり続けた状態になり、これが衝撃波になる。
爆弾が爆発すると爆発地点の周囲の空気を圧縮し次々に圧縮波を発生させるが、空気が圧縮されると断熱圧縮により温度があがり、温度があがると圧縮波の進行速度が速くなる。その結果、圧縮波を圧縮波が追いかけるとき後続の圧縮波のほうが進行速度が速いため手前の圧縮波に追いつくことになり、衝撃波を発生させる。
弊害
特に強力なものでは騒音・難聴というレベルではなく
近隣の窓ガラスが割れたり、車の防犯アラームが作動するほどの威力がある。
爆薬の起爆、戦車など強力な火砲の発射、超音速で低空飛行する戦闘機など。
瞬間的であっても多大な圧力や振動が襲うため
特に衝撃波に晒される機械や部位においては強度設計等が必要となったり
土嚢や防壁といった物理的な防護で周囲への被害軽減を図る必要がある。
水中においては音や衝撃波が効率的に伝搬するため、爆発物によるダメージが甚大となる。
水中への手榴弾投下や、ダイナマイト漁などが良い例。(銃弾などは水の抵抗で急停止してしまう)
人体では鼓膜や目が特に衝撃波に弱く、内臓では肺や腸等の空気を含んだ臓器が衝撃波のダメージを受けやすい。
爆弾が爆発し三次元的に広がる衝撃波の強さ(圧力比)は爆心地からの距離の3乗に反比例し減衰するが、地形によっては衝撃波が重なり局所的に強くなることがある。
フィクションにおける衝撃波
- 単純な火力・攻撃力、戦力差の描写
- 広範囲攻撃、攻撃範囲の広さといった描写
- 周囲への人的・物理的な二次的被害
- 覚醒・状態変化による表現
- 爆発などの被害・緊急・異常状態の描写
…など、表現技法として幅広い。
技を放った後、衝撃波により地面が破壊される描写やキャラクターが吹っ飛ぶ等の描写でその技(必殺技)の威力を表現する事がある。
関連動画
関連静画
関連リンク
関連項目
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