千両みかん 単語


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センリョウミカン

1.6千文字の記事

千両みかんとは、古典落語の演である。元々は上方の噺であり、商人の気質、プライドが相し、また市場原理や人の価値観に翻弄される番頭のペーソスが描かれた傑作である。なお、戦後になって東京にも移植されたが、展開が多少異なる。

あらすじ

場の大家若旦那原因不明病気でうなされた。高名な医者に診てもらうと気から来るものだと言うので、それで、旦那は番頭に、息子の悩みを聞き出すようにお願いする。番頭が聞き出すと、どうやらみかんを食べたい一心で病気になったのだと言う。番頭は何をばかげたことと大笑いし、安請け合いしてしまうが、旦那が一言

「今はのさなかじゃ、どこにみかんがあるのじゃ?」

それを聞いてはっとする番頭だが、今更ありませんでしたと告げたショックで息を引き取ったらどうする、お前殺しで磔になると旦那に脅され、慌てて番頭はに繰り出し、あちこち八屋を当たることになった。

ところが、みかんなどあるはずなく、頭がおかしい人だの冷やかしだの思われ、やけっぱちになった末、屋に迷い込んでしまう。ついでに磔について尋ねてみると、あまりに生々しい語りに気を失ってしまう。だが、人は「それなら満の物(果物のこと)市場に行きなさい」と告げる。

満に一件だけ、年中みかんを売っている問屋があるというのだ。藁にも縋る思いで番頭はその店を訪ねると、「ございます」と一言。安堵する番頭だが、今年のは格別暑く、蔵のみかんは全部腐っていた。それを聞いてまた番頭は気を失ってしまうが、よほどみかんが欲しい客だと、今度は人が自らみかんを探してみることにした。すると、たった1個だけもぎたてのように綺麗みかんが残っていたのだ。

番頭が大喜びすると、人がその事情を尋ねる。それを聞いて「それならば是非持って行きなさい、お代はいりません」と告げてくれるが、自分も名の知れた大家の番頭だけに、変に片意地をり「金に糸目は付けない」と譲らない。

すると、人は態度を改め「それなら千両いただきます」と告げた。それには番頭も何を馬鹿げたことをと反論するが、人にも言い分があった。「毎年、年中いつに対してもみかんを売るために腐るのを覚悟みかんを囲っている。もし1個でも腐らずに残れば、それに仕入れたみかん分の値を付けさせてもらう、商いをする以上損はできない」と告げるのだ。

お互い商人同士、その理由ももだと、番頭は磔も覚悟でしおしおと屋敷に戻る。だが、それを旦那は聞くなり「息子の命が助かるなら、千両など安い、く買ってきなさい」と告げるのだ。そして、千両箱一つと引き換えに、みかんを1個持ってきて、若旦那に渡す。

若旦那は大喜びで徐にみかんの皮を剥いて、一袋ずつ噛み締める。そして残った3袋を番頭に渡し、「お父さんとお母さんと、そして番頭が食べておくれ」と告げてくれた。若旦那の心遣いに胸を打たれる番頭だが、いざ部屋を出てに返ると、なぜこんなみかん1個ごときに大金を払ったのかと訝しくなる。

…自分は若い頃に丁稚奉公に入り、そしてようやく来年、のれん分けしてもらえるのだ。だが、それで分けてくれるお金といえばせいぜい高くて50両ぐらい…垂らし人生20年で得た金が50両…でもこのみかんは、3袋で300両…。

そしてとうとう番頭は、みかん3袋だけ持って逐電してしまった。

江戸落語バージョン

江戸落語としての千両みかんは、色々展開が異なるが、一番の違いは最初から千両の値が付いていることである。また、味にうるさい客のために上物のみかんしか囲ってないという、最初から付加価値が付いている点も異なる。

また、サゲの展開もニュアンスが異なり、上方は己の値打ちを上げるために着してしまうのに対し、江戸落語ではせっかく転がり込んだ資産思い込み、そのまま出来心で着している。

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