昭和は遠くになりにけりとは、ノスタルジーである。
平成中期から後期にかけて昭和の時代をかざった有名人の訃報が流れたり、同じように昭和のイメージとなっていた事物が終了したり、中止になったりするたびによく囁かれたフレーズ。便宜上平成と書いたが、令和の現在でも使われることがある。「なりにけり」とは古語的な表現の一つで、「なり」「けり」という過去をしめす動詞と助動詞のあいだに「に」という完了形をつけた連語表現とされ、叙情的な手法として使われやすい。
元ネタは1931年(昭和6年)に句集『長子』に寄せられた中村草田男の「降る雪や 明治は遠くに なりにけり」という俳句。意味合いとしては雪に対して(少年時代を過ごした)明治時代であるかのように一瞬思ってしまったが、ふと現実に返って明治は遠くなってしまったという感慨を表している。
なおこの俳句には剽窃疑惑があがっていたことがあったが、パクられたとする句[1]は1934年(昭和9年)作製であったことが明らかになったことから、現在は晴れている。
明治時代は周知の通り1912年を以て終わりを迎え、大正時代を挟んで昭和となったわけだが、20年ほどで懐古したわけである。20年といえば生まれた子どもが大学生に、小学生なら社会人となる期間であるからそれも当然であるといえよう。
それからしばらくは明治は遠くになりにけりのフレーズが使われるように成っていったのだが、1989年に昭和が終わると今度は過去の時代となった昭和が対象になるようになった。戦争への道、日中・太平洋戦争、戦後復興、高度経済成長という激動の時代を遂げた長い元号の昭和が明治になりかわって懐かしまれるようになったわけである。明治維新や日清日露戦争という近代国家として地歩を固めた明治と同じくらい、日本人にはそれだけ昭和が強くインパクトに残った元号だったわけである。
なお、字余りになってしまうからなのか、印象が薄いせいなのかわからないが、大正は遠くになりにけりとはあまり使われない。
今や平成も終わって時間が経過し、令和の時代では今度は平成も遠くになりにけりという言葉もちらほらXやnoteなどネット界隈では聞こえるように成った。しかし、昭和の時代を生きた人々がまだ多数生存している以上(2022年時点の人口統計では昭和生まれは8000万人強おり、日本人の7割を占めている)、まだ当分はこの言葉が使われるであろう。
一方の元ネタである明治の方は、末年の1912年生としても110歳を超えており、俳句のように懐かしめるほど長く過ごした人はほぼ鬼籍に入ってしまっている。こうなるといよいよ懐古ではなく、本格的な教科書や古文書などで見るだけの『歴史』となったといえるだろう。ちなみに男性の(国内の)明治生まれは2024年3月31日を以て全員死亡したことが発表されている。
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最終更新:2025/12/05(金) 21:00
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