残念機長とは、KLM4805便の機長の俗称である。1977年3月27日にスペインのテネリフェ島で発生したテネリフェ空港ジャンボ機衝突事故において、片方の事故機であったKLM機の機長だったのが彼である。
本名はヤーコブ・フェルトハイゼン・ファン・ザンテン(Jacob Veldhuyzen van Zanten)。名前のザンテンを捩ってザンネンとしたのがこの俗称である。
この日のテネリフェ島の空港には多くの旅客機が着陸していた。近隣の空港が爆弾騒ぎで閉鎖されており、本来そこを目的地としていた旅客便がダイバートで押しかけていたのだ。アムステルダムから来たKLM(オランダ航空)4805便とロサンゼルス発のニューヨーク経由で来たPANAM(パンアメリカン航空)1736便もまた共にそんな便の一つであったが、規模の小さかったテネリフェ島の空港への着陸機はエプロンに収まらず一本しかない細い平行誘導路にまであふれていた。
その後本来の目的地であった近隣空港が再開。KLM機とPANAM機も離陸準備を行い、まずはKLM機が先に立つことになったが、滑走路を移動中に霧が発生し視界が急激に悪化してしまった。
KLM機に続いてPANAM機も滑走路移動を始めたが、途中で誘導路への脱出を求められる。その誘導路は急カーブ過ぎたので次の誘導路で脱出することにした。その後KLM機への離陸指示が聞こえたのでまだ滑走路にいることを報告、折り返し管制から脱出時に報告するよう求められたので応じたが、
その直後PANAM機クルーの視界にはこちらに向かってくるKLM機のライト、そして機そのものが入ってきた。
「何だアイツ……あのバカ来やがった!!」
回避しようとするも間に合わず、2機は衝突した。
テネリフェ島で燃料を補給したKLM機は目的地空港へ急いで離陸する (急いでいた理由は後述) ため滑走路を移動するが、滑走路端で転回後ザンテン機長は管制の許可なく勝手にエンジンスロットルを上げた。
(以下の会話は『メーデー!:航空機事故の真実と真相』の該当回からの抜粋。)
Co(副操縦士):「待ってください、管制承認がまだです。」
Za(ザンテン機長):「んああ、分かってる。……(管制に)聞いてみろ。」
Co:「離陸準備完了、管制承認を願います。」 (この時点で衝突1分前)
ATC(管制):「パパビーコンに向かい、上昇して、高度90(,00フィート)を維持せよ。離陸後は右旋回。」
Za:「よし!!」
Za:「行くぞ!推力確認。」
Co:「高度90、右旋回、離陸体制(=離陸滑走を始めた)。」 (この時点でザンテン機長は前進を開始してしまっていた。)
ここで管制側は「離陸準備が整った(だけ)」と受け取り、両者間に認識差が生じた。
PANAM(パンナム機):「"まだ滑走路を走行中、クリッパー1736。"」
(ここで輻輳が発生し、両者の""の間をKLM機は聞き取れなかった。)
ATC:「パパ(P)アルファ(A)1736、滑走路退出を、報告ください。」
(KLM側は既に離陸滑走を開始していたが、無線に気付いたのは機関士だけだった。)
Za:「何だって?」
Za:「出ただろ。」
KLM機のザンテン機長が苛立ちと通信エラーによりPANAM機が滑走路上に居ないと思い込み、正式な管制許可なしに離陸を強行したことが事故の最後の一押しとなった。そしてこの直後、燃料補給で重くなった機体は尾部をアスファルトに擦りながら離陸しようとするも間に合わず、PANAM機に覆いかぶさるように激突した。
ニコニコ動画や「メーデー!」視聴者の間では、クルーのミスが原因である事故において参考例として挙げられる事が多い。
ただし、留意しておきたいのはザンテンが大学病院でいうなら学部長クラスのスターパイロットであるということ。人間である以上、たとえ優秀な人物であっても失敗する時は失敗するという事実を再確認させられる事となったのがテネリフェの事故であり、これを契機にCRM(→当該項目)が叫ばれるようになった。また、事故に至るまでの過程には他にも
などがあり、事故から得た教訓を活かすという意味で、特定個人のみを叩くのは間違った行為であるということも注記しておく。実際航空管制におけるカジュアル単語の使用もこの事故を機に禁止された。
この衝突事故ではKLM側のザンテン機長含む乗客乗員248名全員とPANAM機側の乗客乗員335名(/396名)の計583名が死亡した史上最悪の航空事故であり、「テネリフェの悲劇」と呼ばれ知名度も高い。ただし「メーデー!」本編でこの事故を扱ったのは比較的新しく(2016年放送のシーズン14・第3話)、「衝撃の瞬間」で先に取り上げられていた。その頃から彼に対するこの俗称は定着していた。
またザンテン機長に限らず、素質に問題が有り事故を起こした機長のことも彼に因みこう呼ぶことが有る。
掲示板
185 ななしのよっしん
2025/03/28(金) 13:30:28 ID: 6PaXI/23/Y
名前が弄りやすいのでザンネン機長呼ばわりはされるけど、
諸々の不適切や、通信の技術的問題等積み重なっての結果だからな…。
でもクルー間の権力勾配に問題があったとしても、
個人の資質として進言に耳を傾けるザンネンじゃない人だったなら、
多分に事故には至らず重大インシデント止まりだった。
やっぱザンテンのザンネン呼ばわりはザントウだわごめんなさい。
186 ななしのよっしん
2025/08/02(土) 12:36:47 ID: 3gAwPjzgJV
管制官は管制承認を出す時以外「離陸(take off)」を言ってはならない
例えば「離陸(take off)の準備はできているか?」と管制官から尋ねられたとき、パイロットが通信を上手く聞き取れず、しかも「離陸」の語だけ聞き取れてしまったせいで「離陸して良いんだな」と判断してしまうリスクがあるから
この事故でも管制官が管制承認を出していないのに「take off」の語を使ってしまったせいでパイロット側に誤解を生じさせる一因を作ってしまったという
187 ななしのよっしん
2025/08/20(水) 14:27:46 ID: CX8dUbRgxs
>>186
前後が逆よ
この事件を受けてそのルールができたんだよ
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最終更新:2025/12/10(水) 18:00
最終更新:2025/12/10(水) 18:00
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