鉛(なまり)は、原子番号82の金属元素である。古くから広範囲で使われてきた重金属で、用途は広いものの、その毒性から近年は忌避される物質でもある。
概要
一般的な金属と言われながらも、現代においてなかなかお目にかかれない金属である。原因はよく知られるその毒性で、鉛の器でワインを飲んでた古代ローマ人が鉛中毒で倒れまくった話など、その事例は古今東西を問わない。ただし、毒性が知られるようになったのは比較的近世であり、それまでは現代以上に大量に使われてきたものである。
今でも鉛の需要は高く、金属単体としても化合物としてもまだまだあちこちで活躍している。その毒性から嫌われ、徐々に他の材料に置き換わりつつあるものの、それでも代替品がないものもある。またコストの面でも鉛は優れているため、環境に配慮する余裕のない後進国などでは今でも鉛を含む塗料やガソリンが使われており、今後もその需要が減ることはないだろう。
主な用途
- おもり - 鉛の重さを利用したもの。身近なものでは、釣りに使われる錘(シンカー)なども鉛製のものが多い。
- 銃弾 - 柔らかくて重い鉛は、銃弾の弾頭としてもうってつけである。忌避されるはずの毒性も殺傷力になる優れ物。回収しにくい散弾(ショットガンの弾など)が環境問題になったりしている。
- 放射線防壁 - 比重の大きさから鉛は放射線を通しにくく、そのため放射性物質を格納する容器や、放射線に対する隔壁などにも鉛が使われている。また、X線を取り扱う放射線科の医師は、放射線使用時に鉛の入ったエプロンを必ず着用している。
- はんだ - はんだ付けで使われる「はんだ」は、鉛と錫の合金である。これも環境や人体への影響から鉛以外の材料が模索されているものだが、使いやすさとコストで鉛はんだにとって代われるものは未だに出来ていない。
- 蓄電池 - 自動車などに搭載される蓄電池(バッテリー)の電極としても、鉛はよく使われている。使い古した鉛蓄電池は劇物なので普通には捨てられないが、カー用品店などで回収してもらえる。
- クリスタルガラス - 鉛を添加したガラスは美しさを増し、食器や家具の高級材料として扱われている。バカラなどのブランド品のほか、日本の伝統工芸「江戸切子」でもクリスタルが使われている。
- 顔料 - 鉛の化合物、特に炭酸鉛は白色の顔料として古くから使われてきた。主に塗料や絵の具、陶磁器の釉薬、顔に塗るおしろいなどもこれが材料であった。毒性から徐々に使用量が減っているが、現在でも主に塗料として、限定的な用途ながら使われ続けている。
- ガソリンの添加剤 - かつてはガソリンのオクタン価を向上させるために、鉛化合物の添加剤が広く使用されていた。排気ガスに鉛を混ぜていたという、今考えると恐ろしい話である。その後、日本など先進国では規制されて使われなくなったが、後進国などでは今でも広く使われている。
- その他 - 今でこそ使われなくなったが、昔は他の金属同様に、食器や水道管などの用途にも使われていた。最もアレだったのが、甘味料として鉛化合物が使われていたことであろう。先述のローマ人もそうだが、ベートーベンの患った難聴もこの鉛糖が原因と言われている。
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